ぽやぽやしてるって何?
「ユヒロって本当にぽやぽやしてるよね」
「……ぽやぽやって何?」
「そういうとこだよ」
そう言って笑うチハルの言葉が、私にはよく意味がわからなかった。チハルは仲の良い友達だけど、わからないことを言われることが多い。
天然だとかボケてるとか、言われることが本当によくあるけど、自分ではボケてるつもりなんてない。笑いを狙っているわけでもなんでもないのに、笑われる意味がわからない。
「ユヒロはマイペースなのよね」
母親はそんなことを言う。それもまた、よくわからない。
「ユヒロちゃんっておっとりしててかわいいね」
クラスメイトのアヤセくんにそう言われた。かわいいというのは褒め言葉かもしれないが、私はそれをバカにされたように感じてしまった。おっとりしているつもりなんてないから。
私はテキパキとやることをやっているつもりなのに、おっとりしていると言われてしまった。それがどうしようもなく、悲しかった。でも、きっと、私が自覚できていないだけで、私は周りからそう見えているんだ。そう思うと、やるせない。
普通になりたいと思った。周りのみんなが普通にできていることを、普通にできるようになりたい。どうして私は普通のことができないんだろう?
でも、そう思っても、できるようにはなれなかった。
私は私のできることを、私のできるペースでやるしかないのかな。そう思えば少しは楽になれるかと思ったけど、できる限りのことを全力でやり続けるのは、とても疲れた。
私には何ができるんだろう、それがわからなくて苦しかった。
適度に手を抜くとか、気を緩めるとか、そういうことがとても難しい。やるなら全部をできる限りと思ってしまう。普通の人って、どうしてるんだ?
「ユヒロ先輩はがんばりすぎですよ。もう少し、周りに頼ってもいいんじゃないですか?」
後輩のヤマノくんが言ってくれた。でも、周りに頼るってどうすればいいんだろう? 周りの迷惑になるんじゃないかと怖くて、一人で抱え込んでしまう。
そんなだから、今日も一人で、私は居酒屋でお酒を飲んでいる。おつまみはピーマンの肉詰め。お酒は緑茶ハイ。これが私の定番。
ピーマンの肉詰めは昔からなんだか好きなんだけど、一人暮らしを始めてから、家で自分で作ったことはない。手間がかかりすぎると思うから。冷凍のものを買ってみたこともあるけど、冷凍のものはなんだか求めてる味と違った。
たどり着いたのが居酒屋。別にお酒は特別に好きなわけではないんだけど、せっかく居酒屋に来てるんだからお酒も飲むか、と飲んでいる。お酒を飲めないわけではないけど、特別に好きでもない。でも、ピーマンの肉詰めを手軽に食べられるから居酒屋に来ている。
私は多分、結婚なんてできなくて、一人で生きていくのかな。ピーマンの肉詰めを食べながら、そんなことを考える。別にそれを不幸だとは思わないから、それでいい。いや、結婚とか恋愛とかに憧れる気持ちもある。でも、自分がちゃんと恋愛とか結婚とかできる自信がない。
緑茶ハイをグイっと飲んで、一息つく。小さいことでも、幸せを感じられる瞬間を積み重ねていけたら、それでいいのかなと思う。
今日もピーマンの肉詰めがおいしい。
明日は、かわいいお洋服でも買いに行こうかな。書店に行ってマンガや小説を探してもいい。家でアニメを見るか、映画を見に行くのもいいかも。
色々なことを積み重ねて、私の人生が出来ていく。誰がなんと言おうと、私の人生は私のものなんだから、私が大事にしてあげないといけない。私は私を大事にしよう。
〈了〉




