ナナミのタマ奪還作戦!
おじいさんはタマを奪い返そうと手を伸ばしかけたが、タマがナナミの腕の中でゴロゴロと喉を鳴らし始めると、その手がピタリと止まった。
「……タマ、まさか、おめぇ……ナナミンのこと気に入ったんか?」
おばあさんはクワを地面に突き立て、キッとナナミを睨んだ。
「ナナミ、さっきはーい言ったべ!それでタマになんかしたら承知しねぇど!」
ナナミはクスクスと笑いながら、タマを軽く持ち上げた。
「家族ならもっと大事にしなきゃ。おじいさん、筋トレばっかりしてる暇があったら、タマちゃんの毛並み整えてあげなきゃダメじゃん♡」
おじいさんの顔が赤くなり、口ごもりながらも反論した。
「お、おら、ちゃんと毛づくろいしとるわい!」
ナナミがタマの背中の少し絡まった毛を指差すと、おじいさんは一瞬固まり、それからバツが悪そうに視線を逸らした。
「そ、そ、それは……タマが外で遊んできたからだべ!」
おばあさんは腕を組んでため息をつく。
「おじい、ナナミに言われとる場合じゃねぇぞ。おめぇ、タマより筋肉ばっかり可愛がってんじゃねぇか。」
その時、タマが突然ナナミの腕の中からスルリと抜け出し、ヒョイとおばあさんの足元に駆け寄った。おばあさんはしゃがんでタマを抱き上げ、優しく撫でると、タマは満足げに「ニャア」と一声。
ナナミは唇を尖らせた。
「タマちゃん、ツンデレなのね…。でも諦めないわよ!」
おばあさんはクワを肩に担ぎ直し、にやりと笑った。
「諦めろや、ナナミ。おめぇにタマもおじいも渡さねぇど。」
ナナミは一歩前に出て、挑戦的な目でおばあさんを見つめた。
「なら、勝負する?どっちがタマちゃんを幸せにできるか♡」
おじいさんはその提案に目を丸くした。
「なんだって!?タマを巡って勝負だぁ?」
おばあさんはしばらく考え込んだ後、クワをギシギシと鳴らしながら頷いた。
「いいべ。タマがどっちを選ぶか、試してみっぺ!」
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数日後、村の広場
村人たちが集まり、タマを巡る「大決戦」が開かれることになった。おばちゃんたちやスナックのママも集まり、広場はちょっとしたお祭り騒ぎ。
「タマのための勝負だなんて、ナナミもおばあも気合い入ってるな!」
「どっちが勝っても、タマのやつが一番迷惑してんじゃねぇか?ほら、あの顔!」
タマが遠くから冷めた目で見ている。
「それにしても、おじいさんもまんざらでもなさそうだべ!」
村人たちはざわめきながら見守る中、ナナミとおばあさんはタマの前に並んだ。
ナナミはピカピカの高級キャットフードと、おしゃれな猫用おもちゃを取り出し、タマの前に差し出した。
「タマちゃん、こっちに来たら、毎日ごちそうとおしゃれな首輪つけてあげる♡スナックで看板猫としてモデルデビューだってできるのよ!」
一方、おばあさんは手作りの魚の干物と、ふわふわの座布団をタマの前に置いた。
「タマ、こっちに来たら、毎日おらが撫でてやっから。ここが一番落ち着くだろ?」
村人たちは固唾を飲んで見守る中、タマは一瞬ナナミの高級キャットフードに鼻を近づけたが……次の瞬間、くるっと向きを変えて、おばあさんの膝の上に飛び乗った。
「ニャア!」
おばあさんは満足げにタマを撫でながら、勝ち誇ったようにナナミを見つめた。
「ほらな、タマは、ここが一番好きなんだべ!」
ナナミはがっくりと肩を落としながらも、すぐに笑顔を取り戻して言った。
「まぁ、今回は譲ってあげる。でも、また来るから覚悟しておいてね♡」
おじいさんは大きく笑いながらナナミの肩を叩いた。
「おめぇ、ほんとにしつこいな。でも、まぁ、また来てもいいぞ。タマもおらも待ってるからな!」
おばあさんはその言葉に眉をひそめたが、タマを撫でながら微笑んだ。
「おじい、タマもいいけど、おらのことも忘れんなや。」
「んだんだ、おばあ、おめぇが一番だべ!」
ナナミはその様子を見て、ふと空を見上げた。
「ふふ、やっぱりこの村、油断できないわね。でも、それが面白いの。またタマに会いに来るから、待っててね♡」
こうして、ナナミのタマ争奪戦は一時休戦となったが、村の人々の心には、しっかりとナナミの存在が刻み込まれていた。