おじい、夜の蝶に引っかかる
「おじい、これなんだべ?」
おばあさんが、おじいさんの上着のポケットから引っ張り出したのは、一枚の怪しいメモ。そこには、見慣れない女性の名前と電話番号が書かれていた。
「んだ…それは…知り合いの知り合いだっちゃ…」
おじいさんは額に汗を浮かべながら必死に言い訳するが、おばあさんの眉毛はピクリとも動かない。
「知り合いの知り合いだど?この前も『ただの知り合い』って言ってたべ!二回も同じ手は食わねぇど!」
おばあさんの怒声が家中に響き渡り、飼い猫のタマは押入れに飛び込む。おじいさんは冷や汗をかきながら、どう言い訳しようかと必死に頭をひねる。
…その時、おばあさんの目がもう一枚の紙切れを捕らえた。
「…なんだべ、これ?」
おばあさんは怪しい手つきで、おじいさんのポケットからピンク色の名刺を引き抜いた。そこには、妖艶な文字で**「ナナミン♡」**と書かれていた。
おじいさんの顔色が一瞬で青ざめる。
「んだ…ただの飲み屋の姉ちゃんだっちゃ…」
おばあさんの眉毛がピクリと跳ね上がる。
「ただの飲み屋だぁ?このシミだらけのシャツ着て、何をカッコつけてんだべや!おめぇ、ボディビルダーやってんのもモテるためが!?」
おばあさんの怒声が家中に響き渡り、隣の家の犬まで遠吠えする。おじいさんは頭をかきながら、「筋肉はおらの友達だ」と嘆くも、おばあさんの怒りの矛先は止まらない。
---
翌朝には、この騒動は村中の噂話に。
「聞いだが?おじいさん、浮気しったらしいべ!」
「なんてこった、あの人がそんたことすっどは思わねがった!」
井戸端会議はおばあさんの味方一色。おじいさんが商店に行けば、冷たい視線とともに「浮気防止お守り」を手渡される始末。
「おじいさん、都会の女に遺産狙われてんじゃね?」
「若い時の稼ぎ、言いふらしてたからなぁ!」
村人たちは面白がりながらも、おじいさんの将来を案じる(フリをする)。
一方、都会からやってきたナナミは、ちゃっかり村に滞在し、おじいさんに甘い言葉をささやき続ける。
「おじいさんの優しさに、惹かれちゃったの♡」
おばあさんは腕をまくり上げ、ナナミの前にズカズカと歩み寄った。
「なに言ってんだ、このタヌキ目!おじいのどこがいいんだべ?」
「お金…じゃなくて、優しさです♡」
「わらわすな!この前、うちの畑の大根盗んだの見てんだど!」
---
しかし、このナナミ、ただの夜の蝶ではなかった。なんと、都会に彼氏がいたのだ!
数日後、ナナミの彼氏が村に突如現れる。
「まさか…ナナミの浮気相手が、じいさんだなんて!」
彼氏は目を見開き、信じられないとばかりに叫んだ。
おじいさんも目を丸くし、『お、おめ、誰だべ?ナナミの弟が?いや、息子か?』と訳のわからないことを口走る。
彼氏はナナミを睨みつけた後、ふとおじいさんに視線を戻して呟いた。
「もしかして…じいさん、ナナミに騙されてるんじゃねぇのか?」
おじいさんは顔を真っ赤にして叫ぶ。
「そんなごとねぇべ!ナナミンは優しい子だちゃ!」
しかし、村人たちもざわざわとし始める。
「おじいさん、本当に大丈夫か?ナナミって都会の子だべ?」
「遺産目当てじゃねぇのか?」
ナナミはニコッと笑いながらも、彼氏の方を見て平然と言い放つ。
「騙してなんかないもん。ただ…おじいさんの筋肉が特別なだけ♡」
彼氏はショックを受け、頭を抱え込んだ。
「まじかよ…じいさん、本気で信じてるのか…?」
---
ナナミは、彼氏とおじいさんに挟まれてさすがにおとなしくなる。村の寄り合いではナナミの二股が暴露され、村人たちも大激怒。
「おめ、何人のじいさん騙してきたんだべ!」
「おじいさんの遺産を食い物にしようとしたんだろ!」
「ナナミ、こりゃいかんべ!この村じゃ、もう生きてけねぇぞ!」
ナナミはふてくされたようにほっぺを膨らませ、最後に一言。
「もぉー、みんなが勝手に私に夢中になるんだもん!でも、おじいさんの筋肉だけは特別♡」
そう言い残して、ナナミは去っていった。彼氏も呆然としたままナナミの後を追う。
---
静寂が戻った村で、おじいさんはおばあさんに頭を下げる。
「すまねぇ、おら、調子に乗ってたべ…。」
おばあさんはため息をつきながらも、ニヤリと笑う。
「次は浮気なんて小せぇことすんなよ。浮気しても、ちゃんと年金くれよ。」
おじいさんはニコッと笑って答えた。
「おら、次はお前だけにこの大胸筋見せっから…ほれ、触ってみろ!」
おばあさんは肩をすくめながらも、頬を赤くして小さく呟いた。『…しょうがねぇな、この筋肉バカ』