表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/10

第7話:仲間の犠牲

翔平は、ナタリアとの対峙の後、中央管理区画への道を再び進み始めた。

シグマの指示で彼が向かう先は、「データの交差点」と呼ばれる場所だった。

そこはプログラム世界の中で特に混沌としたエリアであり、次のキーコードが隠されている可能性が高いとされていた。


「ここがデータの交差点か…」

翔平の目の前には、幾重にも重なったデータのラインが交差し、絶えず動き続ける光の迷路が広がっていた。

地面も空もなく、すべてが宙に浮かぶ無重力の空間で構成されている。

その光景に、翔平は思わず息を呑んだ。


「これは、どうやって進めばいいんだ」


「お前のブレスレットに刻まれたキーコードが、この空間を進むための道筋を示してくれるはずだ」


シグマの言葉に、翔平はブレスレットを見つめた。

すると、青白い光が脈動し、目の前のデータラインに一筋の道が浮かび上がった。


「これが道標か。行くしかないな」

翔平は覚悟を決め、その道筋をたどり始めた。

だが、その背後に新たな影が忍び寄っていることに、まだ気づいていなかった。


道を進むにつれ、データのラインが徐々に不安定になり始めた。

足元が突然消えかけることもあり、翔平は何度もバランスを崩しそうになる。


「気をつけろ。空間の安定性が低下している。

これは、他の勢力が干渉している可能性が高い」


シグマの警告が響いた直後、遠くから爆発音が聞こえた。

翔平が振り返ると、データのラインが次々と崩壊し、追いかけるようにして闇が広がっていた。


「何だ、あれは…」

その闇の中から現れたのは、アセンブラーの一団だった。

彼らは黒い装備を身につけ、データ化された武器を手にしている。

その中心に立つのは、ナタリアではなく、新たな敵のリーダーと思しき男だった。


「天城翔平、ここでお前の旅を終わらせてもらう」

男の冷たい声が響き渡る。


翔平は剣を構え、身構えた。

「またアセンブラーかよ。いい加減にしてくれ!」


だが、敵の数は多く、彼一人で全てを相手にするのは困難だった。

アセンブラーの兵士たちは次々とデータ化された弾丸を放ち、翔平を追い詰めていく。


「くそっ、このままじゃ…」


その時、シグマが鋭い声で言った。


「防御に徹するな。進め。お前が止まれば、キーコードを手に入れるチャンスはなくなる」


「だけど、この数を突破するなんて無理だ!」


翔平の声が焦りに満ちる中、遠くから別の声が聞こえた。


「翔平、下がってろ!」


その声と共に現れたのは、横浜エリアで出会ったアーサーだった。

彼は手にした武器で敵の攻撃を弾き返しながら、翔平の横に立った。


「アーサー! なんでここに…」

「お前を助けに来たに決まってるだろう」


アーサーは微笑みながら言った。

だが、その目には決意の色が強く宿っていた。


二人でアセンブラーの兵士たちに立ち向かったものの、その数の多さは圧倒的だった。

翔平は次々と攻撃を繰り出すが、敵の攻撃を全て防ぎきることはできず、次第に追い詰められていった。


「翔平、聞け。俺が奴らを引きつける間に、次のキーコードを手に入れるんだ」


「何を言ってるんだ! そんなの無茶だ!」


「無茶でもやらなきゃ、俺たちには未来がない」


アーサーはそう言い残し、一人で敵の大群の中に飛び込んだ。

彼の姿が敵の攻撃に飲み込まれていくのを見ながら、翔平は叫んだ。


「アーサー! 戻ってこい!」


だが、その声は届かず、アーサーの姿は徐々に見えなくなった。


翔平は必死に涙をこらえながら、ブレスレットが示す道筋を追った。

その先に浮かんでいたのは、輝くキーコードの球体だった。

彼は手を伸ばし、それをブレスレットに吸収させた。


「これで…これでいいんだよな」

胸の中に空虚感を抱えながらも、翔平は再び進む決意を固めた。

アーサーの犠牲を無駄にしないためにも、彼は歩みを止めるわけにはいかなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ