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007 打算的でも勝てばヨシ

「アマリリス様!」

「ああ、いけません!」

「だれかー、だれかー!」


 人払いをし、湯船に沈む私を見つけた侍女たちが叫んだ。

 私が王太子殿下から夜会にて、ひどい仕打ちを受けたとの連絡はすでに入っているようだった。


 わらわらと集まった侍女たちは私が湯船で自殺でもしているのかと思ったのか、自分たちの服が濡れることすら気にせず私を引き上げた。


「ど、どうしたの? みんな、そんなに慌てて」

「どうしたの、ではありません。そのようなことをなさるだなんて……」

「お可哀想なアマリリス様……。皆がついておりますから、どうぞお気を確かに」

「そうです。死を選ぶなどいけません!」


 死を選ぶって、さすがに飛躍しすぎてないかしら。

 たかだか婚約者に不当な扱いをうけただけで、そこまでは誰も思わないと思うんだけど。


「陛下に、陛下に抗議いたしましょう。みんなアマリリス様の味方ですから!」

「そうです。そうしましょう」

「このままではアマリリス様が可哀そうすぎます」

「みんな……」


 頭からずぶ濡れの私を囲み、侍女たちが涙を流した。

 本当にごめん……。

 今さら、あいつに触られたのが気持ち悪すぎて、頭から全部綺麗に消毒したかったなんて言えない。


 でもある意味、これは好機ね。

 少なくとも、ココにいる侍女たちは私に好意的だ。

 いや。むしろあの場にいた貴族たちも表立っては無理だろうけど、きっと私に同情するだろう。


 何せ婚約を発表する場においての、殿下の横暴。

 そしてそれに耐え兼ね、泣きながら会場を飛び出す婚約者。


 うんうん。

 我ながらまったく考えなしだったけど、これはいい感じじゃないかな。


 味方は多い方がいい。

 なにせ私の身分は所詮、侯爵令嬢でしかないし、あっちは王太子なんだもの。


 前世だって結婚に失敗したんだから、今回もだなんてごめんよ。

 グズ男なんて、こっちからお断り。

 

「ありがとう、みんな。私……私……」


 ずぶ濡れなのをいいことに、泣くマネをしてみた。

 濡れてるって便利ね。


「殿下はあれだけの貴族令嬢と親しくされるのならば、なぜ私などお選びになったのかしら……」

「それは……きっとアマリリス様が聡明でいらっしゃって、王妃になりえるからと思ったのではないですか?」

「たしかに。アマリリス様ほど教養があり、優れた人間などこの国にはいませんもの」

「そうかしら……。別に私でなどなくたって……」


 別に私だって、初めから優秀な人間ではない。

 あくまでお妃教育を頑張った結果、良くなっただけのこと。


 ただきっと、アイツは私が元妻だから選んだって感じなのよね。


 でもこの世界でハーレムがしたいのならば、別に私なんて必要なくない?

 むしろ邪魔だと思うのだけど。

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