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016 今度こそピッタリな来世を願う

 前世においても、今回においても、だ。

 私の関係ないとこで勝手にやるなら泣く権利もあるだろうけど、本当に泣きたいのはこっちなのよ。

 無駄にした時間をなんだと思ってるの。


 ただ、一番の悪いヤツはこいつなんだけどね。


 だけどそれを大声で叫ばないだけ、マシだと思って欲しい。

 同情はしないけど、盛大に自分たちのしでかしたことに対するツケを払う形になったせめてもの情けだから。


「お前のせいだ! お前のせいで全部台無しだ!」


 この期に及んで、まだ何か言ってるわ。


 一人喚き散らす馬鹿男を、皆が白い目で見ていた。

 誰がどう見ても、もう言い逃れは出来ない。

 それに私のせいだとわめいたところで、誰も私のせいなどと思わないでしょう。


 本当に馬鹿な人。

 一度で懲りれば良かったのに。


「自分が蒔いた種ではないのですか? こんな許されないことをして、陛下も今後のコトをお考えになるでしょう」


 クロードが強い目で、殿下を見下していた。

 

「うるさい! うるさい! おれは王位継承権、第一位なんだぞ! この国で二番目に偉い存在なんだぞ! お前たちなんておれから見れば、虫けらも同然なんだ! そのおれに意見なんてするんじゃない」


 ほぼ裸のまま叫ぶ姿は、哀れね。

 裸の王様も顔負けだわ。


「それが本心ですか?」

「何が悪いんだ! おれは何も悪くない。絶対に悪くなんてない!」


 あーあ。口を開けば開くほど、周りに敵を作ってるのが分からないのかしら。


 確かにこの人はこの国で二番目に偉い存在だったのかもしれない。

 だけどその下につく人がいなければ、地位なんてなんの意味もなさないのよ。


 それに一番上の人が、どうして自分のことを見限らないと思うのかしら。

 前回だって十分、痛い目にあったっていうのに。


「自覚がないというのは困ったものですね。だがアマリリス嬢を傷つけた罪は償ってもらうからな」

「うるさい、うるさい、うるさい、うるさい!」


 おうおう。

 もうすでに語彙力なくなってるじゃない。


 癇癪(かんしゃく)を起こした子どものようね。

 なまじ大の大人だから、一ミリの可愛げもないけど。


 促されるように裸のまま退場させられる殿下は、私に最後のあがきと掴みかかる。


 しかし私はその暴挙に動じることなく、そっと耳元で囁いた。


「まったくさ。アホ過ぎるでしょう、あんた。せっかく生まれ変わったっていうのに、同じことを繰り返すだなんて馬鹿の極みね。死んでも治らないってまさにこのことだわ。でもね、今回はこっちが上手だったみたいで残念ね」

「お、お前……」

「もう私はあんたのモノじゃないんだから、()()とか馴れ馴れしく呼ばないでくれる? 迷惑なんだけど」


「いつから、いつから記憶が……」

「ああ、とっくに戻ってるわよ? だからさ、せっかくだし前回分も含めて盛大に仕返ししてあげたの。前回死ぬ時に、次は勝手にハーレムでもしておけなんて願ったから、こんなことになちゃったのね。ごーめーんーね?」


 そう。もしかしたら今回は、私のせいも一ミリはあるかもしれない。

 だからちゃんと今度は願ってあげる。


「だからちゃんと、今度はマトモに願ってあげるわ。来世も今世も去勢されてしまえ」

「お、おおおお、お前ぇぇぇぇぇぇ!」


 掴みかかった私からクロードが乱暴に引きはがす。


 その勢いで殿下は盛大に転んだ。

 私はただ抱えられたクロードの胸の隙間から殿下を見下ろし、一際意地悪にほほ笑んだ。

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