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012 約束は慎重に

 この世界の人間も見る目がないわね。

 人生二回目じゃなかったら、とっくに私だって恋に落ちてたわ。


 それくらいこの人の笑顔は、カッコイイ。

 しかもスマートな優しさも素敵だし。


「まったく殿下も見る目がなさすぎだな。君のような女性といられたら、退屈などしないだろうに」

「どうですかね……。あの方は下半身だけで生きているようですし。お一人では満足出来ないのではないかしら」

「ああ……それは言えてるな」

「次の国王があの方になるなど、悪夢でしかないですわね」


 稀代の好色王とか言われちゃうんじゃないかしら。

 ああ、この国の恥でしかないわね。

 やだやだ。

 この件が片付いたら国外とかに行けないかなぁ。


 どうせ殿下の元婚約者として、嫁ぎ先もなさそうだし。

 せっかく異世界に来たのだから、自由にこの世界の散策してもみたい。

 魔法とか使えたら最高なんだけど、そういう才能はなさそうなのよね。

 

「さすがに、この度のことは陛下にも考えてもらわねばならないと思っている」

「だとすれば、ありがたいです。協力してはいただけないでしょうか?」

「手紙にも書いてあったな」


「はい。どうしてもこの婚約を白紙にして、なおかつあの方にはご自身の素行を認め、直していただきたいのです。もちろん、この国のためにも」

「手はあるのか?」

「……そうですね。現場を押さえるのが一番なのですが、私一人がおさえて騒いだところで、弱いと思うのです」


 あいつのことだもの。

 もみ消すに決まってるわ。


 だからそうはさせないためにも、この方の力が必要なのよ。

 しっかりとした高い身分を持った男性が、ね。


「そうだな……んー。たとえば、だ。それに協力するとして俺に何か利はあるのかい?」

「あー。確かにそうですねぇ」


 そこまでは考えてなかったわ。

 だけどそうよね。

 まさか公爵という立場の人にタダで協力しろというのも、虫が良すぎるわよね。


 でもお金というほど、私は何も持ってはいないし。

 差し上げれるモノがないのよね。


「……では、何か一つお願いごとを聞くというのはどうでしょうか?」

「お願いごと?」

「そうです。公爵様ほどのお方ならば、お金などは必要ないでしょう? ですから、私が出来る何かを公爵様に決めていただきたいのです」

「それは何でもいいのか?」

「……ええ」


 この方なら、あんまり無理難題は言わなさそうだし。

 背に腹はかえられぬからね。

 ここは仕方ないわ。


「そうか……それはいいな。では、その願いごとは考えておくとしよう」

「それならば交渉成立ということで良いですね、公爵様」

「ああ、構わない。そしてこれからはクロードと呼んでくれ、アマリリス嬢」

「はい。クロード様」


 私はソファーから立ち上がり、クロードと握手をした。

 その手は大きく、そして温かく、安心出来るものだった。

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