第八話 三鈷剣復活の刻
三鈷剣にかけられた大魔司教ガリウスの呪い。
それは、聖騎士の末裔以外が触れた場合、触れた物の肉を腐らせる呪い。
そして、その呪いは洞窟自体の空間を歪ませ、洞窟の入口を物理的に閉ざした。
更に付近は永久凍土と呼ばれる、永遠に続く雪と風が訪れる人間の立ち入りを拒んだ。
あれから、どれくらい時が過ぎただろう。
幾人か迷い人に無理やり剣を抜かせた事もあった。
当然その者達は腐肉と化し溶けた。
いよいよ私は解放される。
しかし、私の眼の前で奴もまた溶け出した!
この男でも駄目なのか。
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あ、溶ける!
俺は思った。
聖騎士の末裔を自負し、ハサンを名乗りながら、ハサンの三鈷剣の呪いに勝てず溶けていくのか!
俺も違うのか!
肉が溶ける。
三鈷剣を掴んだ左腕から煙を上げて肉が溶けていくのが自分で感じる。
『トホカミエミタメよ、呪いを祓うわ』
どこからか声が聞こえた。
これだ!
トホカミエミタメ
トホカミエミタメ
トホカミエミタメ
なんと!溶け出していく左腕がみるみる再生していく。
それだけではない。
みるみる心に内外に不思議なパワーが宿る!
「いける!ここだぁ!!」
俺は右手も三鈷剣を掴んで勢いよく岩盤から引き抜く!!!
ううぉぉぉりゃああ!!!!
ジュキーーン!
三鈷剣を、引き抜くと同時に俺の身体は不動明王へと化身する。
ここからはローゼの後日談となるのだが、俺の記憶はこの先飛んでいる。
不動明王となった俺は三鈷剣を翳した。
三鈷剣から夥しい光が迸り異空間へと歪んだ洞窟の入口は正規の場所へと戻り、
そして永久に溶けない雪と氷の世界を払い春の訪れを呼んだのである。
そして、化身が解かれた俺は力尽きて倒れたのであった。
続く