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第六話 ゴッサンとの別れ

俺は封印の洞窟を探して歩き回る。


ゴッサンの家から森に入り、

暫く歩き回るが、

その洞窟は痕跡こんせきすら見つからなかった。


来る日も来る日も、 

足を棒にして探したが、

あの日の洞窟は見つける事は叶わなかった。


誰だよ。

願えば現れるって言ったのは。


『そうだよ。願うんだよ、祈るんだよ。トホカミエミタメと』


又だ!あの声だ。 

透き通る優しいあの声だ。


どこか落ち着くお前は!

いや、あなたは誰だ!


俺は雪がしんしんと降り積もる誰もいる筈の無い針葉樹の森の向こうへ叫ぶ。


「そして俺は誰なんだ!

何故ここにいるんだ!」


応答はない。

ただ静寂だけが、そして森の木々の鳴る音と風の音だけが聞こえるだけだった、


気が狂いそうだった。

自分が何者かも分からない。


みず知らずの世界に飛ばされて、

雪の森の中を知らない女と、

怪しい剣を探して歩いている。


相変わらず防寒着としては心許もとないジャケットだったがゴッサンが獣の皮で作った防寒着とカンジキを作ってくれたので雪の中でも幾分動けるようになっていた。


ゴッサンがある夜マシカ(鹿型のアヤカシ)とドテチンの肉に大根や、じゃが芋、にんじんを煮込んだ鍋を振る舞ってくれた。


う、うまい。

この世界にも大根や人参あるんだ。

それにマシカの肉が柔らかい。


臭みも無くて、鹿肉のそれだ。


「ほれ。呑め」

ゴッサンが仕込んだ密造酒どぶろくだ。この地方の小麦のような穀物で作ったマロー酒という酒らしい。


き、きっつー!

でも合うな、鍋と。


「なんで、こんなに優しくしてくれるんですか?」

俺は聞いたことがある。


するとゴッサンはアヤカシに殺された息子がいると打ち明けてくれた。


2人っきりでこの地に住んでいた。

ある日、狼型のアヤカシであるウルフィーが群れで、この小屋を襲撃したのだと。


奮戦したゴッサンだったが、息子はウルフィーに連れ去られたのだと。


今から6年前の話だという。


生きていれば13歳の頃だという。

年は離れているが、息子と重なったのだと。


返す言葉も無く、黙々と鍋をつつく。

マロー酒が胃袋にむ。

これが2人で過ごす最後の夜となった。


「ありがとう、ゴッサン。もう行くよ」

俺は一宿一飯どころか永らく世話になったゴッサンに礼を言う。


ああ寂しくなるなと、

そっと肩を叩いて送り出してくれた。


少し悲しげな男の顔だった。

良い人だな、ほんと。


それから何日も歩いた。

木の洞を見つけたり、

廃墟の壁の影に風雪や寒さに耐えながら、

洞窟を探す。


何度も歩いた。

途中ウルフィー等のアヤカシに襲われながらも、命からがら逃げた。


この極寒の中、生き延びたのは、

メルファイヤという火球低位魔法を修得したからだ。


ゴッサンは魔法使いや、精霊使いは契約を行なって初めて魔法を使うことが許されるのに家の手伝いで魔法を修得するとは驚きだと感心していた。


そして、あの声だ。

何者なんだ。

そして、俺をどこに導こうとしているのか。



【ステータス】

名前:ハサン

職業:無職

レベル:7

体力:55

MP:8

攻撃力:11

防御力:5

ちから:6

強さ:4

運:1000

賢さ:3

スタミナ:5

魔法:メルファイヤ

特技:感謝力

武器:ゴッサンの手斧


    ◆◆◆

トホカミエミタメ・・・

呪文や魔法の類なのか。


トホカミエミタメ。

俺は無意識に、その言葉を唱える。


トホカミエミタメ。

聞いたことのある響き。


どこか遠い世界で昔から知っている言葉と感じた。



辺りが前のように雪が激しく降り出す。

数センチ先が見えなくなる吹雪になるまで、そう長くはかからなかった。


ゴーッゴーッ

視界はさえぎられる。

全く前は見えない。


白い壁だ。


やがて吹雪は落ち着きを払うかのように収まり視界が開けていく。


すると、眼の前には

ずっと探していた『あの洞窟』が現れたのだった。


続く

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