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第三話 三鈷剣

ローゼは言う。


「私はかつて邪神を倒した聖騎士の従者の末裔。代々私達一族は聖騎士が保持していた聖剣『三鈷剣さんこけん』を守ってきた」


ここまで、話すとローゼは

寂しげにこちらを向いた。


「我が家の言い伝えでは、いずれこの地に聖騎士の子孫が現れる。その時再び三鈷剣は引き抜かれる・・・。


そしてアイツは現れた」


アイツ?


ローゼは事の起こりを教えてくれた。


邪神を復活させようと大魔司教ガリウスがこの洞窟に来たと。


そして三鈷剣に呪いをかけた。


この洞窟近辺に永遠の冬を、溶けない凍土を、そして洞窟からローゼを外へ出せないよう空間を曲げた。


三鈷剣は聖騎士の末裔以外の人間が手にするともだえ苦しみ腐り死ぬようガリウスは呪いを呪符したのだと。


当初はガリウスは三鈷剣を破壊しようとしたが叶わず呪いをかけるに留まったとの事だった。


聖騎士?

ガリウス?


邪神? 

魔王。


何かがひっかかる。


いや待てよ、

「ローゼ、お前は俺に剣をぬけ」と

俺に言ったよな。


でも、お前は聖騎士の資格の無い者が剣に触れたら腐って死ぬんだろ?


って事は聖騎士の資格が無いなら、俺は死ぬって事じゃないか!


ローゼは臆さず頷く。

「そうよ」と。


すると、あの声が聞こえた。


『大丈夫。抜いてごらん』。

母のような穏やかな優しい声だった。


いやいや、俺が聖騎士の末裔?

まさか。


ローゼは涙ながらに訴える。


「この洞窟にかけられた呪いもあなたが三鈷剣を抜く事が出来れば解けるわ。

私を解放して。」


待ってくれ。

俺は自分が誰かも分からない。


そしてこの世界の人間でも無い。

完全な迷い人だ。


そんな俺が聖騎士の末裔な・・・


訳無いと言おうとしたが、

いや、これは最初から予定調和である気もした。  


寧ろ俺が抜くべきではないのか。


何か魂から燃える、いやたぎる物を感じたのだ。

 

ローゼが用意してくれた松葉杖を手にし、俺は「三鈷剣へ案内してくれ」

そう自然に口にしていた。


    ◆◆◆

洞窟の最深部に、青白い不思議な輝きを放ちながら、その剣は岩肌に刺さっていた。


アーサー王の伝説にあるような威厳を放ちながら俺は剣に近づく。


一歩、一歩、一歩。


う!!


周囲にはかつて剣を抜こうとした者達であろう白骨がそこらに無造作に、朽ち果て倒れていた。


ん?

妙な違和感に気付く。


どの白骨死体も足首が無いのだ。


まさか!

そう。逃げ出さないようにローゼは

剣を抜こうとした者達の足を切断していたのだった。


ローゼ!!

お前!


ローゼを睨みつける。

まさか意図的に俺の足を!


「だって仕方ないでしょう。

私は三鈷剣と共にこの洞窟に囚われている。私は待ったわ。何年も、何十年も。

この人かもしれない、この人かも、私を解き放つのはこの人かもとずっと待ったの。だからあなたにも抜いてもらう。

逃げ出す事は許さない。

さあ手にかけなさい!その剣を」


ローゼは左手を開き俺の方へ向けている。

恐らく魔法か何かの類なのだろう。


剣を抜かなくても抜くのに失敗してもどちらにせよ死ぬ。


すると、先程までは勇んで抜く気満々だった筈の俺の心は急に疑心にさいなまれた。


あの優しい声もローゼの魔法ではないのか?


最初からグルじゃないのか?!


う、うわぁー!!


俺はくるりと『きびつ』を返してローゼの下へ突進し松葉杖で殴りつける。


「キャー!痛い!」


顔面を殴りつけた、倒れるローゼ。


俺は後ろを振り向かずに、急いで全速力で足が無いまま走る。


魔法でケアされてるとはいえ、

包帯でぐるぐる巻にされてるとはいえ、

足首の骨が地面に当たる度に痛みが走る。


コツ!

コツ!

カツ!コツ!カツ!


後ろから「おのれぇー」と恨みがましい声が聞こえた。


こ、殺される。


突然、炎の閃光が俺の顔の数センチを掠めて前方の岩肌へ炸裂した。


うおっ!ローゼが魔法を放ってきたのだ。


シュボ!

シュボ!


後ろから炎の連弾が迫ってくる。


ヤバイ!ヤバイ!

俺は駆け足で(足首は無いけど)洞窟の入口まで走る。


ヒュッ!

ボボッッ!


ドカッ!


衝撃が背中に来た。


あ、熱!!

俺は吹っ飛ばされて洞窟の外へ放り出された。


顔を上げると洞窟は消えていた。

俺はしんしんと雪が降り続く森の中で

気を失って倒れた。


薄れゆく意識の中であの声を聞きながら

『あなたは運命の人。あの剣を必ず抜くわ・・・』


だ、誰なんだ・・・


続く


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