第二章 封印の魔女
洞窟の中にある家。
鍾乳洞の中に、木造のアカシアの木で作られた家。
ぼんやりと、仄かに灯るのは、一本の蝋燭ならぬランタン。
ランタンの炎は油ではなく、
目と口がある。
何やら声にならない声でモゴモゴ言っている。
モゴモゴ・・・
モゴモゴ・・・
モゴモゴ言うたびにランタンの炎の精は発火していく。
「頼むから静かに燃えてくれ、ファージ」
ファージと言う名の炎の精は、憤慨する。
憤慨しながらモゴモゴの口調を弱める。
モゴモゴ・・
モゴ・・
モ・・
火は弱まる。
同時に暗闇が辺りを覆う。
俺は泣き疲れていた。
まさか足を失うとは。
それも、両足だ。
しかも苦痛も切られた記憶も無く、
目覚めたら既に跡形も無く消えていた。
両足首が消えていたのだ。
これは数日前の話。
奴だ。
奴が俺にリンゴの皮を剝きながら話かけてくる。
「少しは落ち着いた?」と。
分かっているよ、こいつは助けてくれたんだ。
青い髪の自称「封印の魔女」と呼ぶローゼと名乗る女は俺を手当し、恐らく足首を切断したのだ。
本当に切らなくてはならなかったのか、
はたまた俺を逃がしたくなかったからなのか。
俺は心の底から女を信じていない。
毎日食事を用意してくれる。
献身的に介護もしてくれる。
だが、ここにいてはいけない。
直感が、そう感じたのだ。
◆◆◆◆◆
この世界はマーラというらしい。
地球でも日本でもないみたいだ。
そして、封印の魔女ローゼは物心ついた時から、ここにいたという。
炎の精と、共に。
何故封印の魔女と自称しているのか?
ある日俺は訪ねたが、彼女は答えなかった。
ローゼが、俺に「何者なのか」と問う。
そう、俺は自分が何者か思い出せない。
彼女は「そう」とだけ頷いて、
それ以上は何も聞かなかった。
そんな日が暫く続いたある日。
「外へ出たい」
そうローゼに話した。
洞窟の家の中では、気が滅入るからだ。
ローゼは「外は雪が降っている」と言って外へ連れ出してくれない。
そして、「その足では無理よ」とだけ言った。
ある夜、俺は身体を引きずりながら
部屋のドアのノブを回す。
すると鍵がかけてあった。
まじか。俺を軟禁してるつもりか。
周囲を見渡しても窓はあるが、開けても岩肌が遮断し外へ出ることは不可避だった。
あいつが、飯を運んでくる。
その時がチャンスだ。
◆◆◆◆◆
俺はドアの開く側とは反対の小さい棚の影に隠れてアイツを待つ。
「朝ご飯よ」
開いた瞬間俺はローゼに飛びかかる。
「俺を外に出すんだ!」
ローゼを羽交い締めにして外へ連れ出すように迫る。
その瞬間俺は飛ばされた。
ドカッ!メキッ!
壁に吹っ飛ばされた。
い、痛え!何が?
炎の精ファージが炎の風で吹き飛ばしたのだ。
燃えないだけ良かったか。
「お前の計画はワタシには筒抜けだったぞ」
忘れてた。ファージがランタンの火としてそこにいたのだ。
「そんなに出たいなら出してあげるわ」
ローゼはそう言った。
「その代わり洞窟のあの剣を抜いて」
続く