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第十九話 成田剣

元来聖騎士として召喚された者は

魂の強さ=ソウルパワーが元々のマーラの住民の3倍になると言う。


心の強さを自覚した俺は、

数々のアヤカシを屠るのではなく、浄化していく。


あんなに重かった三鈷剣が今は軽い。


「これが自覚の力か」


俺は三鈷剣を念を込めて振ると、波動を出せるようになっていた。


波動スラッシュ。俺はそう名付ける事にした。


ある時、俺達パーティは野営地を探して峠を歩いていた。


すると、暗がりの先に灯りが見えた。


お!冒険者か。

シメた!俺達も近くにテントを張って野営をしよう。


そう思った矢先、どうやら違う事に気づいた。


「盗賊団だ・・・」

しかも只の盗賊団ではない。


貴族の身分を持ちながら盗賊や略奪行為を行う騎士盗賊団である。


「通り過ぎよう・・・」

そう思った矢先、俺は怒りに震えた。


何かが弾けた気がした。


それは母娘と思われる遺骸(いがい)が裸のまま息絶えていた。


恐らく乱暴され殺されたのであろう。


奴等は、下卑(げび)た笑いを浮かべながら酒を(あお)っていた。


母娘の苦痛や無念さが伝わる。


側の木には父親であろう男が縛り付けられて沢山の矢を受け(はりつけ)となっている。


そして近くには馬車の荷台が荒らされ放置されていた。


俺の身体からソウルパワーのオーラが揺らめく。


近くにいるローゼやピーニですら息を呑んでいる。


今、話しかけるな。

今話しかけられたら俺は、俺は・・・。


この世界に来て初めての心の底から込み上げる怒り。


奴等も一人で近づく俺に気付く。


「お?なんだ?アイツは」

「こっちに近づいてくるぞ」


俺の身体からソウルパワーを宿したオーラが(きら)めく。


ゆらゆらと青白い炎を上げて、その青白い炎はやがて真っ赤な炎として吹き上がる。


「こら?てめー。何様だぁ〜?」

賊の一人が俺に近寄る。


賊が俺に触れると、奴は

「あ、いやだ!あれ?!いやだぁぁ」といいながら叫ぶ。


奴は手の先から炎に包まれ燃え出した。


ボボボボッッ!  


俺のオーラが物質化し奴を火達磨(ひだるま)にする


「何だ!」

「臭え!燃えてる!」


野党がザワツく。  


俺は三鈷剣を抜くと軽く剣を振るう。


シュパッ!


剣先から波動の月輪(スラッシュ)が野党の首を切断していく。


ブシュー!!


(あたま)を失った、その胴はフラフラしながら、やがて地面に倒れていく。


「な、何だ?!」

「アイツは何だ?!」


俺は無意識に不動明王呪言を唱える。


ノウマクサーマンダー

バーザラダンセンダー

マーカロシャーナー

ソワタヤウンタラターカンマン


外道め。しかし俺は怒りで我を忘れることは無かった。怒りに支配され、化身の術を使えばその力に呑み込まれていく事も薄々気付いていたからだ。


怒りを感じているが、心は冷静だった。


俺は怒りを感じていると、どこか俯瞰(ふかん)して物事を見つめていた。


その時、三鈷剣に変化が生じた。


みるみると巨大化していく三鈷剣。


こ、これは!


青白きオーラを放ちながら、

怒りを具現化した三鈷剣は、

巨大な斬馬刀(ざんばとう)と化していくのだった。


『そう。それがナリタケンだ。』

この世界に飛ばされて久しぶりに聴く懐かしくも癒される頼もしい声。


ハ、ハサン・・。

大魔王と邪神を封印した英雄王ハサンの声。


三鈷剣は斬馬刀=成田剣(なりたけん)へ姿を変化する。


こ、これは。

自分でも自身の力に驚愕していた。

化身の術を使わずとも、片手で斬馬刀と化した成田剣を振り回せるのだ。


『そうだ。それこそ荒御魂の力だ』。

心のなかでハサンの声が聞こえてきた。


荒御魂(あらみたま)のオーラを(まと)いし成田剣に野党が叶うはずもない。




「お頭!!」

「お頭!大変です!

へ、変な野郎が」


その瞬間、モヒカンヘッドの賊の首半分が千切れ飛ぶ。


「くそ。どうなってやがる」


お頭と呼ばれたガタイのいい黒ひげのハゲ頭のいかにも脳筋の野党が吠えている。


こいつが賊の頭か。


「バカが。俺が只の盗賊だと思ったら大間違いよ。この俺の棍棒術(こんぼうじゅつ)を見て生きて帰れた奴はいねぇ!


くらえ!泰山流狐棍棍たいざんりゅうきつねこんこん!!あら?」


奴の棍棒術は俺の成田剣の敵では無かった。


棍棒ごと、いや奴の手首ごと

俺の成田剣は切り落とした。


ボトッ。


千切れた手首と棍棒の音が静かな夜半に響いた。

そして遠くで狼の遠吠えの声が聞こえる。


「ぎ、ギャー!!」


奴はまだ自分の惨状を飲み込めていないようだった。


「た、助けてくれ。い、命だけは」


下手な命乞いだ。

典型的な雑魚キャラの末路だ。


俺はお決まりのセリフを敢えて口にする。


「お前は命乞いする者を何人殺したのか?」と。


詫びよ、悔いよ 

トホカミエミタメ。

トホカミエミタメ。


俺は渾身の力を込めて

奴を袈裟斬りに斬って捨てる。


「ギャーーーー!!!パピヨン!!」


頭は断末魔を上げて果てた。


そして頭の遺骸は光を浴びて天へ上る。


頭だけではない。

切り捨てた野党たちの遺骸もまた、

浄化し天へ昇華していく。


トホカミエミタメ

トホカミエミタメ


争いの無い世界はどこにも無いのか。


まだまだ俺達の旅は終わらない。

邪神を復活させる大魔司教ガリウスの一味を滅ぼさなくては。


続きは次回








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