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十七話 浄化の心

ラビトンの捕獲なんて楽な物だった。

元来、俺は現実世界では強敵のユニゴリーや、カサブランカとも闘っている。


ユニゴリーとは大魔司教の配下でゴリラ型のアヤカシである。


カサブランカも同様、蜥蜴(トカゲ)型のアヤカシであり、いずれも猛者達であった。


それらの強敵に比べれば、ラビトンは言ってもウサギである。


(あの強敵達との闘いはハサンの実やハサンの助言、不動明王の化身の力のお陰ではあるが・・・)


お酒に浸したニンジンを巣の周りに置く。

すると、ラビトンは酔っ払って自然に巣穴から出てくるのだ。


何故かは分からない。

ウサギの穴はモグラ同様入り組んでいるのだが、酒に酔うと酸素が足らなくなるのか、習性として地上に出てくるのだ。


更に、その人参を食べたラビトンの糞を嗅いだアヤカシも酔っぱらい地上に出てくる。


そこを生け捕りにするのだ。


しかし元はアヤカシは人間とも言われている。

アヤカシに襲われた人間はアヤカシになり、アヤカシもアヤカシとして子を増やす。


元来、ハサンが邪神を倒した時にマーラからアヤカシが消えたと聞いている。


でも、何故ここまでアヤカシが跋扈(ばっこ)しているのか?


邪神が復活したのも、もしかしたら何か深い理由があるのではないか。


俺はうっすらとそう感じるのである。


※※※※※※※※※※※※※※※※※


無事に依頼をこなした俺は、ギルドから初報酬を貰う。


今日の報酬は40ギル。

何とか宿代くらいは稼げた。


しかし、これでは酒場の壁代の足しにもならない。


今日のところはゆっくり休んで

明日は付近の魔物(あやかし)を狩りながらレベルを上げよう。


心の強さをオーラパワーと言うのだが、矢張レベル上げは必要みたいだ。


地道な鍛錬や継続する力は、どんな場面でも生きるって事だな。 


俺は三鈷剣を毎朝素振りするのも心がけた。


翌朝、起きて朝食を済ませた後は、アヤカシ退治だ。


アヤカシがいる場合、マスタードの臭いがする。

この臭いが強ければ強いほど、敵は近くそしてその強さも臭いの強さで大体分かるのだ。


森に入り、マスタード臭を感じる。


いる!アヤカシだ。

何のアヤカシだ。


緊張で手汗をかく。

いざとなればローゼやピーニもいる。

そして俺には化身の術がある。


三鈷剣に手を取りジリジリと間を詰める。


マシカだ!

鹿型の魔獣。



マシカ肉はクセが無く脂も乗って美味しい。


しかし実際に食材としてのソレと、アヤカシとして向き合うマシカは全然違う物だった。


(当たり前だよな)


デカい角!マシカは直ぐに俺達の気配に気付く。


逃げられるか?


俺は三鈷剣を抜き飛び出そうとした、その矢先!


意に反してマシカから襲いかかってきた。


奴は躊躇(ちゅうちょ)なく角を突き立て出会い頭襲いかかる!


危ない!


三鈷剣を斜めにして直撃を交わすも、俺は吹っ飛ばされる。


「加勢しようか?」

ローゼがニヤニヤしながら杖を振り回している。


くそ!

死んでも奴の助力は乞わない。


不動明王の時に使えた緊縛術(きんばくじゅつ)あれさえ使えれば!!


『使えるよ』

え?!この声は?!


マーラに来てから久方ぶりの安らぐ声。


ハサンだ。

鏑木凝流(かぶらぎ しこる)の声。


あの人の大丈夫は心に()む。


俺は印を組み、不動明王緊縛術を唱える。


『ノウマクサーマンダー、

ヴァーサラダーセンダー、

ソワタヤウンタラターカンマン!

不動明王緊縛術!!』


ギャン!


マシカは天を睨みながら、動きが止まる。


そうアヤカシは、ただ斬り倒すだけではダメなのだ。


必ず浄化とセットになっている。


祓う、浄化し天に送ること。

魂を天に還す事が聖騎士の使命なのである。


俺は三鈷剣を、抜き一刀両断頭部を斬り落とすのであった。


ヒュン!


(いなな)き雄のマシカは果てる。


でもこれだけではダメだ。


並の冒険者や、マーラの一般の人々がアヤカシに手を焼いてる原因はアヤカシは、倒す事が出来ても祓えなければ【アヤカシは復活する】のである。


トホカミエミタメ、

トホカミエミタメ、

トホカミエミタメ・・・


三鈷剣は霊剣。斬るだけでも浄化の効果がある。


そして『トホカミエミタメ』は場を祓い清める効果もあるのだ。


俺はやっとマーラでの、闘いを掴み始めていた。


続く



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