第十五話 ラビトン鍋
チュンチュン
コケコッコー!
あー素敵な朝だ。
しかし、その爽やかな様相とは反して
俺の心は憂鬱だった。
宿代だけじゃなく壁の修理代も払わなければならないなんて。
普通聖騎士って援助金やら助成金やらで軍資金は事欠かないんじゃないの?
あれ?
ローゼは起きてこない。
ん?あれ?
あーー!
ピーニが裸で横で寝てる。
こらー!
何か着ろ!!
ピンコ立ちしながら仁王立ち。
俺は仁王ではなく不動明王だ!
いやいや、そんなんじゃなく
朝から気が重い。
今日は村に唯一あるギルドで小金を稼ごう。
それとレベル上げだ。
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「うーん頭痛い。」
やっとローゼが起きてきた。
呑気なもんだ。
ピーニの姿を見て驚いていたが、
事情を話すと強い味方ね!と受け入れてくれた。
今日の朝飯は自炊である。
ラビトンの肉が未だ残っていた。
宿屋の主人から水菜と、豆腐、この地で取れるヤビツ豆から発酵させたヤビツ味噌と醤油を買う。
ヤビツの付近は農作物が豊富で、
ヤビツ味噌やヤビツ醤油は別名カントン味噌とかカントン醤油と言われてるくらい有名みたい。
宿屋の外にある炊事場を借りて
メルファイヤで鍋に火を点ける。
パチパチ・・・
「え!雄一化身しなくても魔法使えるようなったの?すっごいじゃん!」
ピーニは褒めてくれる。
あ、まじ?褒めてくれる。
嬉しいなー。
ムスッとしてるローゼ。
「あのさー。メルファイヤなんて低位中の低位魔法なの。コツさえ掴めば其の辺の子供でも使えるのよ。そんなドヤ顔しないでくれる!」
なんかピーニが来てからローゼはイライラしてるみたい。
妬いてるのかな?
んな訳ないか。
今更思い返した訳だが、
異世界にいると現代社会より若々しくなるみたいだ。
気持ちの問題かなと思ったが、どうやらそうではないらしい。
異世界マーラとは魂の世界なのだと言う。
我々の人間界が3次元だとしたら、天界の5次元との間、4次元=夢の世界見たいな感じらしい。
厳密には違うみたいだけど分かりやすくいうとそんな感じ。
だから現実世界の俺より魂の世界である分、若々しくいられるとピーニから聞いた。
グツグツ・・・
グツグツ・・・
ラビトン汁が出来た。
これに刻みネギとショウガを入れる。
「さあ、食べて!」
本当はナルトとみりんが欲しかったが、まあしょうがない。
生姜はあったけどね(笑)。
美味しい!
うまーい!
ん?ちょっと野生を感じるわね!
だがそれでいい!
ローゼとピーニも喜んでくれたようだ。
さあ!食べたらレベル上げに挑みますか。
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この辺にある村々で唯一のギルド。
依頼は少ないな。
冒険者登録は初めてだったので説明を受ける。
ランクはFランクからSランクまであり、
当然我々はFランク。
封印の魔女と呼ばれたローゼは言わずもがなA級ランク以上と思われるが、
俺はレベル10にも満たない弱小冒険者だ。
現実世界ではいかにハサンの実に助けられていたか痛感した。
「ハサン様で良いですか?
英雄と同じ名前なんですね(笑)。」
若干鼻で笑われてる感を受けて嫌な気持ちになりながら受けた依頼は
「ラビトンを10匹捕まえる」
である。
これは簡単そうだ!
俺達は異常発生していると言われているラビトンの巣がある山に向かう。
続く




