第十三話 タンカード
「あんたさー!何が俺に付いてこいよなのよ!化身しなきゃ何も出来ないじゃない!」
エールの入ったタンカード(お酒の入れ物)をガンッと勢いよく叩きつけローゼは俺にツバを吐きかけながら怒鳴られる。
タンカードはカントン国の鎧の騎士を象った年季が入っていて、そこそこ重い物だ。
しかし、テンションの上がったローゼはエールが入ったままのソレを上下に振り回して喚き散らす。
よく溢れないよなーと感心しながらローゼを見つめる俺。
なんで俺は酒場でローゼに絡まれるているのかというと、この村まで辿り着くまでに一悶着あったからだ。
ここは封印の洞窟から一番近い村ヤビツ。
マシカ(鹿型のアヤカシ)や、ドテチン(イノシシ型のアヤカシ)、ラビトン(ウサギ型のアヤカシ)などを狩猟し、農耕で生計を立てている。
封印の洞窟からまあまあ歩いた。
三日三晩歩き続けた。
そんなに体力に自信の無い俺は先ずバテる。
近くにコンビニがある現代社会で慣れている現代人には歩くというのが先ず試練なのである。
「また休憩?この調子だと次の村まで何日かかるのよ」
ローゼは呆れた調子で発破をかける。
そして道中はアヤカシに何度も襲われる。
最初に襲ってきたのは大サソリである。
俺は三鈷剣を振りかざし、奴に目掛けて剣を振るうが、その剣は堅い甲羅に弾かれる。
「か、堅っ!!」
怯んだ矢先、毒の尻尾が俺を襲う。
「雄一!!」
「う、うぎゃ!!」
背中から貫かれて宙に吊るされ、
そして巨大なハサミで俺は・・・・
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私の眼の前で、雄一が大サソリの鋭い毒の尾に背中から貫かれた。
勢いよく血が吹き出す。
そして大サソリは悠々と宙に吊るして巨大なハサミで切り裂こうとしている。
ゾワ・・
鳥肌が立つ。は、早く助けないと。
殲滅呪文の印を結ぼうとした矢先、
ジョキーン!!!
雄一の胴は2つに分かれた。
臓物が散らばり、大サソリはその遺骸を貪るように喰らっている。
「キャーー!」
あまりの悍ましさに吐き気を催す。
し、死んだ。
ハサンが雄一が死んだ。
このままでは私が殺られる。
「殲滅呪文アシカゴリー!」
殲滅の光が大サソリを一瞬のうちに消し去った。
あ、ハサン・・
雄一・・・。
泣き崩れる私に霊体のセシアが現れる。
そしてこう言い放つ。
「召喚士が死ななければ聖騎士は死なない。唱えなさい。三鈷剣に『トホカミエミタメ』を」。
トホカミエミタメ?
そ、そうなの?
生き返るの?
一部欠損してますけど??
私はヨロヨロと三鈷剣に近づくと、
トホカミエミタメ
トホカミエミタメ
トホカミエミタメ
と唱える。
すると眩い光が辺りに立ち込め、
肉片が徐々に復活し、千切れた胴体もくっついた。
「あ、生き返った!いやー!一時はどうなるのかと思ったよ」
ヘラヘラ笑う雄一に思いっきり杖で怒突く。
「何だよ!痛えーなー!」
何なの!こいつは。
てんで役に立たない。
しかも大サソリだけではなく、
ブンブーという蚊型のアヤカシにも同様に殺された。
ブンブーは人間くらいの大きさの蚊である。しかも吸血するので住民からは恐れられている。
あの雄一は、性懲りもなく三鈷剣で向かっていき、簡単に捕まりベアハッグのような態勢で頭から吸血された。
ゴクゴク!!
チューチュー!!
目をグリングリンさせて雄一の脳髄に口の吸血針をぶっ刺し脳みそごと飲んでいる。
「オェー!!!」
また私は吐いた。
いい加減にしてくれ。
何が聖騎士か。
私は炎熱魔法でブンブーを灰にした。
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俺は記憶に無いのだが、2、3回アヤカシに殺されてるらしい。
その都度ローゼが助けてくれたみたいたが復活するとは云え、俺が無様に殺されるのは見たくないとの事だった。
「分かったよ。レベルを上げるよ。ここいらのアヤカシを倒してレベルを上げる。
それなら異論は無いよな。」
俺はエールを飲み干してローゼにアヤカシ狩りを提案した。
あ、そうだ。
マシカの香草焼きとゴロリの煮込み、
羊肉とラビトンの梅肉炒めを頬張る。
「ちょっとー。我がパーティの予算は無いんだからね。こんなアホみたいに豪遊するのは今日が最後よ」
俺は夢中になって柔らかいゴロリ(イモムシのアヤカシ)の肉を噛みちぎりながら頷いた。
続く




