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第十話 瞬天せよ

『あの子を助けて』

大召喚士と言われた故セシアの声が聞こえる。


ローゼは召喚士の末裔まつえい

この辺りのアヤカシなんか魔法で蹴散らす事は造作もないだろう。


いや、嫌な予感がする。


セシアの魂の声を信じてローゼの後を追う。



洞窟を抜け、森に入る。 

ローゼの気配を辿り、奥へと進んでいく。


果たしてローゼのいる方向はこちらで良いのか?


不思議と三鈷剣は鈍色にびいろかから翡翠ひすいの色に変り、不思議とローゼの方向を示すかのように切っ先が右へ左へ勝手に向いていく。



森が一時的に開けた。

かつて村でもあったのだろうか?


家らしき建物の後に木や葉が覆い茂っている。


その開けた広場の真ん中にウルフィー(狼型のアヤカシ)の群れに対峙たいじしているローゼの姿があった。


見るとローゼは肩口から血を流しており、衣服も破れ一部がはだけている。


辺りには数十頭のウルフィーの死体が転がっている。


「ローゼが一人でやったのか」


しかしローゼは息も絶え絶えである。


『瞬天せよ!雄一!』

セシアは俺の名前を呼んだ。


忘れていた自分の元の名前だ。


俺は三鈷剣を構え、無意識に唱える。


ノウマクサーマンだー

ヴァーサラダーセンダー

マーカロシャーナー

ソワタヤウンタラターカンマン!


舜天!不動明王!!!


俺の初めての、

自分の意志による化身=瞬天であった。


※※※※※※※※※※※※※※※※※


不覚だった。ローゼ迂闊うかつな行動だと後悔した。


浮かれていたのだ。


外界を肌で感じたいなんて軽装で外に出てしまった。


大体外にはアヤカシが蔓延はびこっていたのは分かっていた筈だ。


召喚士としての武器である杖まで置いてきてしまった。


杖無しでは召喚獣を出す事も出来ない。


ウルフィーの群れの一匹がローゼに襲いかかる。


ローゼは炎魔法エンフレイヤでウルフィーを焼く。


キャウーン!!

断末魔だんまつまを挙げながらウルフィーは炭と化していく。

 

肉の焼ける音と臭い。

ウルフィーは怯んで立ち去るかと思いきや、包囲を囲んでジリジリと間合いを詰めていく。

 

「こうなったらファージ徹底的にやるわよ!力を貸して」


炎のジンファージと盟約を結んだローゼは印を結び大魔法である炎のファイヤストームを唱える。


炎の柱が次々にウルフィーに襲いかかる。


ギャヒン!

キャウーン!

クゥーン!

ワオン!


炎に巻かれて涙を流しながら焼かれていくウルフィー。

 

しかしウルフィーはまだ諦めない。


大量のオドを消費した為、

身体が動かない・・・。


キャッ!


一匹のウルフィーがローゼに襲いかかる。


ヒラリとかわしたつもりが、鋭い爪が肩口に当り血が吹き出る。


交わしきれない。


生き残ったウルフィー達が間合いを再び詰めてきた。


死ぬ。


その刹那。前方からまばゆい光が突っ込んできた!


一瞬ハサンを名乗るあの男と思ったが、光が収まると化身した不動明王がウルフィー目掛けて剣を振るう。


覚醒した三鈷剣はウルフィーを横一閃凄まじい剣撃と波動による斬撃はウルフィーを薙ぎ倒すだけで収まらず、周囲の木々も切り落とした。


「一瞬!!」

そしてこれが伝説の波動スラッシュなのかと息を呑んだ。

 

歴史の転換点に私はいる。 

率直に思った。


この凄まじい光一閃の斬撃の光景に

生き残った数匹のウルフィーも、流石に形勢不利と感じたのかキャンキャン言いながら森の奥へと消えた。


そして化身の解けたアイツ(雄一)は、また崩れ落ちるように裸のまま倒れたのである。


続く


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