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第54話 銀灰のコート

 結論から言えば、ミシェルは無事に試験を合格できた。

 難易度としては、プロの魔導技師でも気を抜けば失敗してしまうほど困難なものだったが、ミシェルは人並外れた集中力と、今まで培った技術によって突破してみせたのだ。


 感性は乾いておらず。

 冷めているどころか熱意溢れているけれども。

 確かに、ミシェルはロスティアから『弟子にしてもいい』と言質を取る程度には、実力を見せつけることに成功したのだ。

 これは、大翔の進言によってロスティアが気まぐれを起こしていることを差し引いても、十分な偉業である。

 何故ならば、いくら気まぐれを起こしていたとしても、ロスティアは『下手くそ』を弟子にするほど面倒見のいい性格をしていないのだから。

 かくして、大翔は正式にミシェルの兄弟子として振る舞わなくてはならなくなってしまったのだった。



「兄貴っ! 兄貴っ! 魔結石のカッティングだったら、私も手伝えるぜ!?」


 ロスティアの地下工房。

 弟子二人に対して割り当てられた作業部屋に、目をキラキラと輝かせたミシェルが居た。

 いつものメイド服姿ではなく、新調した作業着を着こなして。けれども、獣の耳だけは興奮を隠しきれないと言った様子でぴくぴくと動き続けている。


「……テンションが高すぎる妹弟子には任せられません」


 そんなミシェルへ、大翔は呆れたように溜息を吐いた。

 服装はミシェルと同じく作業着。手元には、鮮血のように鮮やかな宝石があり、それを工具で成形している作業中だったらしい。


「ミシェル。弟子になれて嬉しいのはわかるけど、もうちょっと落ち着こう? 具体的に言うなら、俺に構わず自分の作業に集中しなさい」

「でも、兄貴! 兄貴は私の恩人だぜ!? この昂る感情のまま、何もせずになんて居られないぜ!」

「はぁ。恩人も何も、君があの人の弟子になれたのは、紛れもなく君の実力だよ。俺が協力したのも、契約を成就するためだったし……そもそも、恩人というのなら、君だって俺の命の恩人じゃないか」


 ハイテンションのままに慕ってくるミシェルを宥めつつ、大翔は柔らかく微笑んだ。

 その微笑みには、ミシェルに対する確かな感謝の気持ちが込められている。


「だって、君との契約がなければ、今頃俺は死んでいたからね」

「そりゃあ、そうかもだけど……というか、胴体が千切れ飛ぶぐらいの致命傷なんて、どんな死闘だったんだ?」

「いやぁ、銀狼に噛みつかれちゃってさ」

「さらっと言っているが、相当なことだからな? でも、納得したぜ。どうりで吸血鬼の特性を強くした状態でも、中々回復しなかったわけだ」

「…………お互い、よく生きていたね?」

「無茶な戦いに、無茶な契約。今思えば、馬鹿をやったよなぁ。でも、後悔はしていない。兄貴もそうだろ?」

「まぁね」

「だったら…………うん、お互い様だ」


 大翔の笑みに対して、ミシェルもまた笑顔を返す。

 ただし、今までのハイテンションな笑みではなく、きちんと冷静になった上での笑顔だ。冷静になった上で、後悔なんてないと吹っ切れている者だけが作れる笑顔だ。


「つーことで、兄貴。兄弟子としてリスペクトしつつも、私はアンタを追い越すことを目標に頑張っていくから、これからよろしくな?」

「技術的にはミシェルの方が上だと思うし、そもそも俺はこの後、しばらく封印都市には戻って来ないと思うけど……ああ、よろしく!」

「ははは、事情はわかっているけど、この野郎!」


 言葉を交わす大翔とミシェルの間にはもう、余計な遠慮も気遣いもない。

 兄弟子と妹弟子という関係性は存在するものの、契約が正しく履行された二人は今、紛れもなく対等に笑い合えていた。


「まぁ、とはいっても師匠が作品を仕上げてくれるまでは暇なんだけど」

「師匠のオーダーメイドとかずる過ぎる、私も欲しい」

「元々こういう契約だったからね。君も何か頼みたいなら、相応の対価を積むといいよ」

「兄貴のケースを考えると、到底無理としか思えないんだが…………なんかロスティア様――師匠、物凄く気合を入れて作っているのか、三日ぐらい地下から戻って来ないし」

「弟子の俺たちでも立ち入り禁止の場所が増えて来たよね、地下工房。こちらとしては、完成度に期待できそうで嬉しいけどさ」

「ばっか! 師匠が作る作品は全部傑作だ!」

「はいはい」


 ロスティアの作品についてのミシェルの語りを聞き流しつつ、大翔は手元の作業へと戻る。

 ほとんど暇つぶしのための修練であり、習作としての魔道具制作であるが、手元に向けられた視線は真剣そのもの。

 相変わらず、感性としては乾いて冷めているが、それでも大翔は思い知っていた。

 超一流の作品が全て消え去った後でも、単なる『嗜み』として身に着けた作品が身を救うこともあることを。


「さぁて、やれるところまでやってみようか」


 だからこそ、大翔は無意味かもしれない行為へと時間を費やす。

 いつか、無意味ではなくなる時のために、少しでも微力を積み重ね続けるのだ。



●●●



 ロスティアは契約通り、冬の毛皮を用いた魔法装備の制作に取り掛かっていた。


「任せろ。今の私なら、生涯最高の傑作を生み出せるだろう」


 自信満々にそう告げたロスティアだったが、それ以降、大翔はろくに顔を合わせていない。地下の工房に閉じこもり、ろくに食事も睡眠も取らずに作業を続けているためだ。

 最初の三日間はまだ、『あの人でも熱中することあるんだな』と気楽な感想だった。

 けれども現在、ロスティアと一週間も顔も会わせず、意思確認もできない状況にある。そうなると流石に心配せざるを得ない。


 作業音は途絶えることなく、継続的に工房から響いている。

 ただ、食事はいくら差し入れても口に入れようとしない。

 ろくに水分すら取ろうとしない。

 体を心配した言葉も全て無視して、ロスティアは作業に没頭していたのだ。


「勇者様、私たちは魔力を吸収して生存可能な種族だから、問題ないと思うわ。それに、ロスティアは昔から、一つの物事に集中するとあんな感じだったから」


 姉であるリーンがそう太鼓判を押してくれなければ、大翔は作業部屋に押し入って、無理やりにでも休息を取らせてだろう。

 それほどまでの集中力であり、過剰とも呼べる意欲だった。

 乾いていて、冷めていることが魔導技師には肝心。

 そのように語っていたロスティアとは思えないほどの、破滅的な熱意。しかし、大翔はむしろ、その熱意によって普段の信念が生み出されたのだと納得した。


「なるほど。確かに、スイッチがかかると、いつもこんな風に行動してしまうんだったら、明らかに体に悪い作業スタイルだ。いつか、うっかり死んでも不思議じゃない……だから、師匠は長く続けるために、『乾いて、冷めている』ことを選んだのか」


 誰よりも感情に左右されやすい天才肌であるからこそ、誰よりも感情を排した信念を抱く。

 それが、不可能に挑んだ魔導技師。

 ロスティアという偉大なる挑戦者だった。



「――というわけで。師匠の方はまだ時間がかかりそうなので、今のうちに、今後の予定に関して話し合っていきたいと思います」


 ロスティアの屋敷の中庭。

 大翔たちはそこに集まり、今後の対策会議を開いていた。

 今更、大翔たちはロスティアの腕を疑っていない。故に、『実用に耐えうる一品』を生み出せるという前提で、予定を立てていくことにしたのである。

 そのために必要なのは、情報の整理だ。


「まず、今回の戦いについて、敵対者の存在を俺は認識したわけだけど……それに関して、シラノとソル。詳しい説明をお願いできるかな?」

『《了解しました。では、私から推測を語りましょう》』


 情報の整理、その一。

 敵対者の存在に関して。


『《今回、我々を襲撃した敵対者ですが、目的は恐らく『世界の終焉』。つまり、私たちの世界を滅ぼすことですね》』

「何のために?」

『《さて、そこまではわかりません。ただ、私は奴が、朝比奈久遠という本来の勇者を退場させたのではないかと疑っています。それを実行できるだけの『陰謀遂行能力』があると仮定しても良いでしょう……現に、私が警戒していても、まるで奴の奇襲が防げなかったわけですし》』


 シラノの推測では、敵対者は陰謀に特化した存在である。

 千里眼の異能を潜り抜け、致命的な瞬間で大翔たちを襲撃。見事に、追い詰めて見せたその手腕は、本来の勇者である朝比奈久遠を追い込むに足るものだと、シラノは考えていた。


「それに関しては仕方がないと思うよ、シラノ。あいつは『超越存在の一部と同化』している。君が使う千里眼では観測できない。その上、粗製とはいえ、権能の一端を振るう眷属を作り出す力を持っているんだ。能力の相性が悪すぎる」


 ソルが戦って入手した情報によれば、敵対者は超越存在の化身に近い力を持っている。規格外の怪物と呼んでも過言ではない、そんな存在だった。

 灰色の巨人を無理やり復活させたのも、敵対者が持つ権能に由来しているのだろう。


「後、『陰謀遂行能力』に関しては多分、未来予測……いや、未来確定能力も持っていたかもしれない。あのタイミングの良さはそう考えるべきだろうね」

『《私の上位互換ですか?》』

「いや、どちらかといえばもっと大雑把で、未来に特化した能力じゃないかな? ただ……いや、今はいいか」

「うん?」


 ソルから向けられた意味深な視線に、大翔は首を傾げる。

 本人に自覚はない。

 故に、この情報整理の段階ではまだ、大翔が持つ『特異性』に関して掘り下げることは不可能だった。

 絶好のタイミングでの狙撃を失敗した敵対者。そのミスをソルが訝しく思うだけに留まる。


「なんにせよ、あいつが恐ろしく厄介な相手であることに変わりはない。僕が限界まで余裕を削って、『大本の超越存在と同じ世界』に存在していないと自我崩壊するぐらいには追い詰めたけど、油断は禁物だからね?」

「さらりと偉業を成し遂げているよね、この最強勇者」

『《雇ってよかったと思える瞬間ですよね、本当に》』


 そして現状、敵対者は行動不能の状態である。

 回復は可能かもしれないが、絶好の奇襲を失敗してしまった上で、更に何かを企む余力を取り戻すのには、年単位での時間が必要だとソルは推測していた。

 経験上、権能を使い過ぎた場合、それぐらいのインターバルを置かなければ危険であると、理解していたがからこその推測だった。


「じゃあ、とりあえずは対策を考えながらも、優先度は低めに設定しておく感じで」

「異議なし」

『《同じく》』


 従って、情報整理の結果、敵対者への追撃よりも『攻略』を進めることを優先することになった。藪蛇を出しに行くよりも、堅実に前に進むことを選択したのである。


「次は、リザルド。今回の戦いで成長した要素について俺から説明するね。まぁ、主に元々一人だけレベルが低かった、俺の成長報告みたいなものなんだけど」

『《自虐している暇があったら、さっさと報告してください》』

「はい、すみません」


 情報整理、その二。

 成長した大翔の能力について。


「まず、ロスティアとの協力関係により、俺は常に最高のアーティファクトで装備を固めることができる状態になった。特に、『アマテラス』という指輪で聖火の力を更に引き出せるようになったのは大きい。今回、銀狼との死闘に勝利できたのも、ほとんどこのおかげだと思う」

『《世界最強クラスとの戦いなんて無茶、装備の性能だけで為せるわけではありませんが……ともあれ、『アマテラス』の助力が大きかったのは事実です。確か、眷属召喚も可能になったんでしたっけ?》』


 ロスティアが作り上げたアーティファクトによる、飛躍的な全能力の向上。

 権能である聖火の扱い、その習熟。

 聖火に影響を受けたアーティファクトの亡霊が変化し、眷属として従属したこと。

 そのどれもが、大翔にとっては大きな成長要素だ。

 特に、英雄クラスの眷属を召喚可能になったことにより、単独での戦闘能力を得たことは革新的な変化と呼んでも過言ではない。


「イフ、という炎の騎士だよね? 僕があの塔で戦った真紅の騎士の妹さんっていう説明は聞いていたけど?」

『《私としては、なんかいきなり大翔のことをマスターと呼ぶ美少女が現れて、とても驚いたのですが?》』


 なお、眷属の素性に関しては既に、大翔によって説明済みである。

 眷属本人としては、オルゴールの精霊で通したかったのだが、仲間たちに説明する上で必要になったため、渋々大翔に己の素性を明かしていたのだった。


「……あー、詳しい説明は本人に聞いてね? ということで、イフ」

『――――私を呼んだわね、マスター』


 大翔の呼び声に応えるのは、聖火によって形成された、炎の眷属。

 イフと名付けられた、炎を纏う騎士。

 それが今回、大翔を手助けしたキーパーソンである。

 しかし今、大翔から召喚された時、イフの姿は以前に見せた『戦闘形態』ではない。炎の塊としてではなく、普通の人間としての肉体を携えて召喚に応じている。姿形も、全身鎧の騎士姿ではなく、Tシャツ短パンの私服スタイルだった。


「あー、あー、ごほん。うん、きちんと受肉成功したみたいね。というわけで、初めまして二人とも。私はイフ。マスターであるヒロトに忠誠を誓う、亡霊騎士よ」


 オレンジ色の髪を持つ美少女として、完全に受肉しているイフの姿に、まず驚いたのか大翔だった。そう、召喚した張本人が、イフがそんなことできるとはまるで聞いていなかったのである。


「あ、あの、イフ? イフさん? そんなことできたの? というか、え? 聖火にそんな力があったの?」

「ええ、可能だったわ。一時的な仮初めの肉体に過ぎないけれどね? でも、マスターとの逢瀬を楽しむぐらいの時間は保てるわよ?」

『《……大翔?》』

「すみません、イフさん。相棒からの視線が痛いので、冗談はそこまでにしてください」


 シラノの滅多にない低い声に、露骨に怯える大翔。その様子を眺めて、満足げに微笑むイフ。どうやら、主従関係はあれども騎士道精神からは程遠い性格の持ち主らしい。


「ふむ。一時的とはいえ、受肉可能ということは、もしかしたら君は成長できるのかもしれないね、イフ」

「――――本当なの?」


 ただ、忠誠心自体はとても強いものだった。

 何故ならば、ソルが興味深そうに呟いた言葉を聞き逃さず、即座に訊き返したのだから。


「可能性は十分にあるよ。少なくとも、生前をトレースするだけの亡霊では無いみたいだからさ。技術だけなら成長は可能。その他の要素に関しては、鍛えてみないとわからないな」

「それは、私を鍛えてくれるというお言葉で良いのかしら?」

「逆に訊くけど、君の兄を滅ぼした僕に鍛えられてもいいの?」


 そして、試すように意地悪く問いかけるソルへ、イフは躊躇いなく答えたのだから。


「むしろ、望むところよ。紛れもなく世界最強だった私の兄を倒せるほどの剣士。そんな貴方が鍛えてくれるのなら、私がマスターを守れる可能性も上がるでしょう?」


 淀みのないイフの答え。

 それは大翔に対する、揺るぎない忠誠の表れだった。

 例え、その在り方が騎士道精神からは程遠いものでも、紛れもなくイフは大翔を守護する存在である。

 そう確信できたからこそ、ソルは微笑んで答える。


「いいだろう。君には、大翔と一緒に地獄を見せてあげよう」

「ふふふっ、それは楽しみね! そうでしょう、マスター?」

「あれ? いつの間にか、俺の修行がランクアップする予定が立てられている……いや、いいけどさ! 必要だからやるけどさ!」


 信頼し合う主と従者。

 そんな視線を交わし合う大翔とソルに、シラノは『《むぅ》』と露骨に拗ねた声を漏らす。


『《ごほん! えー、大翔。修行もいいですが、話を先に進めましょう。成長といえば、私と大翔の『異能貸与』が可能になったのも、大きな成長ですよね?》』


 シラノは自らの不機嫌を自覚しつつも、努めて平静に話題を切り出した。

 そのおかげか、ソルとイフが『おやおや』と和やかな表情を作る中、大翔だけは真剣な顔つきで話題に応じる。


「確かに、それはとても大きい成長だと思う。戦闘中とか、シラノのアドバイスを聞く余裕がない時、変則的でもああいう戦い方はありじゃないかな?」

『《ふふふっ、そうでしょう、そうでしょう。大翔はもう十分に成長しましたからね。私の異能を貸与するぐらいには、信頼に値する勇者なのです》』

「あはは、ありがとう、シラノ。ただ、異能に関しては本来の持ち主ではない所為か、大分使用範囲が狭まるみたいだけど」

『《その分、私が観測できない部分を見通せるようになるので問題ありません。使い分ければいいのですよ》』


 シラノによる異能貸与。

 千里眼の効果を、一時的に大翔が扱えるようになるという、深い同期。

 それは確かに、シラノが持つ千里眼の死角と、大翔の能力に合わない存在の格を補う合うものだった。

 大翔が観測できない部分をシラノが観測し、シラノが観測できない格上は大翔が観測する。

 このコンビネーションがあったからこそ、敵対者の狙撃を大翔が防ぐことができたのだ。


『《まぁ、副作用としてちょっとアレな部分もある技術ですが! 頭が『ぱぁん』とならなかったので問題ない範囲です!》』

「シラノさん、後で副作用に関して詳しくお話しましょう」


 とはいえ、まだまだ試作的な技術。

 大翔とシラノによる練習により、習熟を重ねることは必要だろう。


「さて、俺の成長報告に関しては大体こんな感じかな? うん、我ながら大分成長したものだよね…………でも、俺自身の戦闘能力はまだ低いという」

「僕が守るよ」

「私も守るわ」

『《私が導きましょう》』

「……うん、皆ありがとう」


 複雑な大翔の笑みにより、成長報告は終わった。

 情報整理もあらかた終わり、後はこの先の『攻略ルート』について説明を始めよう、といったところで、シラノはふと違和感を抱く。


『《……ふむ?》』


 それはほんの些細な違和感だった。

 何かを忘れているような。空に浮かぶ太陽の存在を忘れているような。あまりにも大きすぎるからこそ変化に気づけていないような違和感。

 だが、それをシラノが言葉にすることは無かった。



「――――でぇきたぞぉおおおおおおおおおおおおおっ!!!」



 何故ならば、その違和感が消し飛ぶほどの勢いで、屋敷の玄関が蹴り破られたのだから。


「ふはははは! あーっはははは! ひゃはははは! 天才だぁ! 私は天才だぁ!」


 血走った目と、目元の濃い隈は睡眠不足の証拠。

 漂ってくる臭いは、薬品と体臭が混じり合って、思わずむせ返るほど。

 しかし、歓喜の声を上げるロスティア――――その右手に携えた『完成品』を見た瞬間、その場に居る誰もが言葉を失った。


「私は! ついに人智を超越したぁ!!」


 発狂したかの如きロスティアの言葉。

 しかし、それは大言壮語にはならない。何故ならば、正しいからだ。ロスティアはまさしく人智を超越し、超越存在に抗うための一品を生み出したのだ。


 雪と灰が入り混じったような色を纏うアーティファクト。

 ――――『銀灰のコート』を。

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