恋しいけれど…
高校一年のある日…
「あっ」
掃除で後ろに片付けられた机の上で二人で話をしてたら急に君が叫んだ。
教室の横の壁に付けられた時計を指差しながら
「私、今生まれたんだ〜!」
などと言ってきた。
驚いた僕が
「どうゆうこと?」と聞く前に君が
「私ね、9月19日14時12分に生まれたんだよ。
すごいでしょ〜」
って言ってきた。
すごいのか?
「へー、僕はね、徹夜して早朝に生まれたらしいよ。今は朝起きるの苦手なのにね。」
あれから、五年たったある日…
相変わらず朝に弱い僕は寝坊した。
いつもなら、あと、10分っと起きるのを延ばしてくのだが、今日は何の夢を見たかも分からないくらい爆睡してしまった。
9時から授業で今8時55分…
学校までチャリで10分…
遅刻かな〜
新学期始まって2日にしてやっちまった。
とか思いつつチャリをこぐ、難所の踏切が鳴りだすがハゲたジョギングのおっさんと一緒に渡りセーフ
教室の前でちょっと息を整えて静かにドアを開けそのまま流れるように着席。
もう大学3年生、遅刻も手慣れたもんよ!
そっとノートとシャーペンを出し真面目な学生ホールになる。
背の高い先生が
「今日は以上です。」と言うと教室中が騒ぎ出す。
うーんと腕を伸ばし伸びをする。
携帯で時間を確認する。9月19日11時30分っと待ち受けに現れる。
9月19日…
もうそんな日か…
高校一年のあの日から今日までに僕は彼女を好きになり、告白しようかどうか悩んでる間に4年が過ぎ、その間に彼女には彼氏が出来ていた。
それを知ったぼくは初めて吐くほど酒を飲み潰れて道路で寝た。
眩しくて目覚めると同じ場所なのに夜中いたとこと違う感じがした。
昨日はゴチャゴチャと人や物で溢れてたそこはシャッターが閉まり誰もいなく昼間より明るい朝日に照らされこざっぱりしていた。
僕はゆっくりと歩き出しまだ人の少ない下り列車で家へ帰った。
シャワーを浴び洗い立てのワイシャツを着てそのまま彼女のマンションまで向かった。
呼び鈴を押すと
「どうしだの?」と彼女が心配そうに出てきた。
ドアを閉め玄関に立つといきなり
「あなたのことが大好きでした」
と言った。
君の驚いた顔
長い沈黙…
「もう遅いよ…」消えそうな声で君が呟く。
「遅すぎるよ。私、彼氏いるんだよ。」と今度は大きな声で僕のほうを見て叫んだ。
知ってるよ。だけど、けじめ付けに来たんだ。
ただ、思いを伝えに…
僕を睨んだ君の目から涙が溢れ出す。
君が泣いてたらいつも抱きしめてあげてたのに
何にも出来ない
僕にはそんな資格はないんだもの。
泣かしたの僕だし
君にはもうちゃんと抱きしめて慰めてくれるやつがいるんだもん。
だから、僕は
「さようなら」って言ってドアを閉めた。
背中で君の気配を感じながら
大好きだったよ。さようなら。
帰り道はあまり記憶にない。気がついたらうちで寝ていた。
泣いてたのか、頬が濡れていた。
あれから連絡はなにもしない。
ただ、時々ベットの横に貼られた君の写真を見るだけだ。
あんなに好きだったのにだんだん顔が思い出せなくなってくる。
それが嫌で写真を見るが何だか記憶の中の君と違って見える。
今日、見た夢を思い出した。
昔みたいに君と遊ぶ夢
何にも考えずにただただ楽しかった。