3話
狼集団の子狼の治療を終えての翌朝。
うん、すがすがしい朝である。
いい事をした後は偽善行為と言われようが気持ちのいいもんであるなぁ。
って俺のキャラ設定が不安だな。
そもそも、わざわざ、自分にキャラ設定いるかね?
他に人間さんいないし、この森から抜け出せるとは思わんしな。
この隠れ里でひっそり一人でのんびりと生きるしかない?
娯楽もないから退屈で食べる、寝るしか思いつかんな。
とりあえず、タネがあったから、小屋の後ろの物置らへんを耕して植えてみるかねぇ。
そうと決まれば、早速朝日を浴びながらの労働をしようじゃないか。
ドア開けると、あらビックリ。
不可視の壁の前に新しい鮮度の抜群のゴブリンさんの死体が3つもあるではないですか。
ふと、森を見ると昨日の狼さん達がいた。
昨日のお礼のつもりだろうか?
残寝ながら、俺はゴブリンを食べれるような人間じゃないのよ?
どう見てもお腹壊しそうだよ?
しかし、困った。
お礼を無下にすわけにいかんし、とりあえず、拠点の敷地内に運び込む。
こういう時は、
「カモン、拠点さん!」
拠点のメニューに確か、素材の納品ってあったよな~、おっやぱりゴブリンを納品できるぞ。
早速、納品をポチっとな。
するとゴブリンの死体は地面にずぶずぶと沈み込んでいった。
なんでやねん、もっと納品の仕方考えようや!
沈むってなんか死体をを埋めてるみたいやん!
ちょっと気持ち悪いわ!
一応、軽くクワで掘り返してみるも何もないので、これが拠点の納品なのだろう。
何気に拠点さんに食われてるようなイメージもするけど。
こちらをうかがっていた、狼さん達もそれを見届けると、居なくなって森の中に帰って行った。
これでもいいんだ、狼さん達、お土産を地面に沈める俺って結構失礼なことをしていると思うんだけどな。
さて、ゴブリンを拠点に納品しえたことで、拠点能力はどうなるのかな。
まずは確認をしなければ。
んー、門番ゴブリン兵士が追加された。
でも門番でもゴブリン兵士を追加したろで、狼さん達の餌になる未来しか見えないぞ。
でも、強さは先ほどの3体の強さを合わせる事が可能なようだ。
確かに1匹の強さより、3体分の方が強いだろうが、これは保留だな。
ゴブリンがそこまで強くなるにはまだまだ素体が必要だろう。
頭も悪そうだし。
狼さん達の方が脅威度は高い。
今の所有効な関係を築けていると思うし。
せっかく、仲良くなりかけてるのにゴブリン兵士とかと一緒にいたら印象悪くなりそうだしね。
とりあえず、当初の目標のタネを植える為にクワで、小屋の裏側を耕して、タネを植える。
何が育つのかな?
井戸から水を汲んでジョウロから水を上げる。
どうか、食べれる物がなりますように。
今日はこれでやる事が無くなった。
朝から作業をしても軽く耕して、タネを植えて水を上げるだけの単純作業なのですぐに終わった。
家庭菜園みたいなもだんだしね。
さて、朝飯もまだだし、料理でもしますかね。
料理は昨日と同じ、野菜炒めとバケット。
味付けはもちろん塩のみ。
調味料がもう少しほしいところだな。
にわかに外が騒がしいと思ったら、朝食の匂いに誘われたのか、どこからともなくゴブリンさん達がまた集まってきていらっしゃる。
ここで、狼さん達による虐殺があったのを知らない個体たちなのかな?
また、ほっとけば、狼さん達たちが狩りに来るだろう。
少し騒がしいが、放置だな。
いや、待てよ。
昨日はスキルの精神耐性を得たからレベルって概念も有るのかもしれない。
なんたってここは異世界なのだ。
色んな異世界があるのだから、レベルが有ったり、スキルを上げるしかなかったりあるだろうけど、少なくとも魔法の概念はある。
だって、ファイアーもどきが俺でも発現したんだし。
何とかレベルを確認できるような事は無いだろうか?
やはりモンスターを倒して経験値を稼ぐべきかな?
現状で、ゴブリン達を遠距離から攻撃する方法が無いのが悩ましい。
武器になりそうな物といえば、包丁、クワ、草刈り鎌、薪割斧。
どれも近接武器にしかならん。
うーん、奇襲で喉元ズバッとかできたら倒せるかもん知れんがそんな器用な事ができるはずもなく。
現実的にゴブリンさん達は目の前に居るわけで、無理だな。
狼さん達早くカモン!今日の餌も集まってますよ!
祈りが通じたのか、早速狼さん達の集団が接近。
ご都合主義バンザイ!
昨日の黒い大きな狼リーダーもいるので同じ群れだな。
今日も今日とて狼リーダーの巧みな連携による攻撃で難なくゴブリン達を狩る狼さん達の集団。
安定してますな。
ものの数分で食事タイムが始まりました。
何故か、また、俺の前にもゴブリンの死体を置いてくれる狼さん達の集団。
これは、お互い共存関係にあるのかな?
このあと死体は綺麗に拠点さんの下に沈み込んでもらいました。
よく見ると、何体彼のゴブリンの死体を持ち帰るようだ。
きっと巣に居る子狼に上げるのだろう。
さて、今更だが狼さん達の集団の食事の後はゴブリン達の血や肉片や骨などが散乱している状態。
もっと、綺麗に食べなよ。
まあ、勝手にこちらが共生関係だと思っているので、掃除ぐらいはするけどさ。
精神耐性がついたおかげで、何とか拠点の中に哀れなゴブリン達の破片を掃除完了。
「拠点さんカモン!」
やはりというか、ゴブリン達の一部でも納品可能なようだ。
ずぶずぶと沈み込んでいくゴブリン達の一部。
南無。
相変わらずできる事は、拠点の門番ゴブリン兵士のみ。
狼さん達と仲が悪くなりたくないので、ゴブリン兵士は封印だな。
いざという時は使うけど。
さてさて、今日もやる事が無くなったね。
イベントがそろそろ起きてもいいんだよ?
見知らぬ綺麗な女冒険者が迷い込んでうちの拠点にたどり着くとかさ。
そんな事を考えていると草むらがガサゴソと揺れているではありませんか!
フラグ回収できるのかな?
出てきたのは、大きなクマのモンスター。
お前は呼んでない。
お前じゃない。
俺がフラグを立てたのは綺麗な女性の冒険者なんだよ!
クマモンスター、きっと名前もビッグベアーとか安直な名前だろ。
「グオオオッ」
雄たけび上げてあげて、こちらに向かってきた。
あまりの恐怖に硬直してしまったが、不可視の壁でしっかりガードされた。
怖えよ!マジでビビったよ!
拠点の不可視の壁が無かった確実に死んでたよ!
グルルルルっと鳴いてるクマモンスター。
さっき、狼さん達は食事を終えて帰ったばかり。
助けは来ないだろうし、明らかに強そう。
いくら狼さん達が集団で立ち向かったとしてもケガはするだろうし、下手したら死ぬ個体も出るかもしれない。
ここは何とかお帰り願わねば。
しかしこんなやつがいるなら、森のどこかに居る狼さん達も危険なはず。
どうにかできないか?
ゴブリン兵士はきっと瞬殺されるだろうから意味が無い。
俺に戦える力があるのかも未知数。
何より戦うという命のやり取りなんかした事がない。
そんな俺がいきなりこんなモンスターに勝てるだろうか?
勝てるビジョンが見つからない。
ここからどうするよ?
こんな時こそ冒険者来てください、マジで。
よし、決めた。
いい方法なんか分からんが、思いついた事はやってみよう。
俺は一旦拠点の小屋に入り準備を始める。
念入りに慎重に俺は自分の持てる限りの事をした。
準備に入る事数十分、ついにできた!
これは奴にも効くだろう。
俺は自身を持ってクマモンスターに近づいた。
不可視の壁が奴の侵入を防いでいるとは言え、やはり緊張する。
奴もこちらを見て、興奮しているようだ。
さあ、勝負だ。
俺は不可視の壁ギリギリまで近づき、予定したものを置いて、さっと退いた。
奴は俺の用意したものに飛びついた。
良し!まずは作戦の第1関門突破だ!
なんてことは無い、奴は俺の渾身の手料理を食べている。
モンスターだが生き物である以上、お腹が空くのは当たり前!そして腹がすくから得物を狙い食べるのだ!
よって、腹が満腹になると襲われることは無い!
・・・はずだよね?
「うーん、お前、野生のモンスターとしてすぐに人間の出した食べ物を食べるっていいのか?それでもモンスターとしての矜持はないのか?」
俺が喋りかけると、ちらっとこちらを見てすぐにまたガツガツ食べ始める。
奴は食べ終わると、綺麗に大皿というか大鍋をペロペロと名残惜しそうになめている。
そして、こちらをじっと見てそのまま横になって寝始めた。
って、そこで寝るんかい!
野生モンスターとしてどうなのよ、その行動は!?
せめて、自分のねぐらに帰れよ!
グーグーと寝息をたてながらクマのモンスターはその場寝たのであった。
どうしよ?この状況・・・
拠点
ゴブリン兵士『封印中』
主人公
精神耐性