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自己犠牲ヤロウは、また誰かを曇らせる  作者: こんなの好きでしょう?
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第壱話



 【神の鉄槌(ジャッチメント)


 世界で最も悪名名高い大犯罪組織である。


 この地球、この世界では異能力という魔法や魔術・精霊の行使に加え様々な力を有する者達が存在している。多種多様な力を持つ人類であったが、国だけではなく世界各国を巻き込む犯罪組織が誕生したのだ。


 それが、【神の鉄槌(ジャッチメント)】。


 構成員は不明とされているが、その幹部は12名存在している。そしてその幹部の頂点に立つ者が【神の鉄槌(ジャッチメント)】のボスだ。


 彼等は恐ろしく強い。


 幹部一人で国一つ落とせる程に、だ。


 その強者が集ったその組織は他の犯罪組織から畏怖され、更には数多の権力者が恐れる存在。世界各国が、その【神の鉄槌(ジャッチメント)】を滅ぼそうとしている。


 

 《【道化(フール)】、任務だ》



 その【神の鉄槌(ジャッチメント)】の幹部の一人、【道化(フール)】と呼ばれた日本人は反応する。


 日本であれば何処にでも居そうな、黒髪黒目の中肉中背。年齢は10代後半で若々しい。しかし、その腰に携える刀と腰に隠した銃は単なる平凡ではない事はわかるだろう。


 【道化(フール)】と呼ばれた日本人少年は、この異空間のような。しかし閉鎖的な空間から何処からともなく声が聞こえてくるこの状況には慣れている様子だ。



 《場所は、“日本”。そこで、【精霊】に選ばれた者がいるらしい。その者を監視せよ》


 「…………【精霊】に?何故、【精霊】に選ばれただけ(・・)で監視する必要があるのですか」


 《単なる【精霊】なら切り捨てればいい。が、その【精霊】はかつて“大英雄”が従えた【大精霊】である可能性が高い。仮に【大精霊】であるならば、捕獲だ。或いは、それが叶わぬならば始末しろ》


 「【大精霊】と一線交えろ、ですか。それだけならボクよりも適任者がいる筈では。【狂乱(マドネス)】辺りなら喜びそうですけど」


 《適材適所だ。彼奴は辛抱が足らん。【大精霊】と確信すれば、確実に我を忘れて暴れまわる可能性が極めて高い。どうしてもと言うのであれば【道化(フール)】、お前が【狂乱(マドネス)】の手綱を持つのならば構わんが》


 「―――――――いえ、結構です。お断りをします」


 《ならばいい。【狂乱(アレ)】の扱いは難しいからな。では――――メインは【大精霊】に選ばれ、従う者の監視。暫くは日本で仕事をしてもらう。なぁに、お前を選んだのは何も出身国だからではない。お前の元婚約者(・・・・)と共に居る様だ》


 「へぇ、なるほど」


 《気にならんか》


 「いえ全く」


 《そうか。ならば早々に準備し、日本へ向え》



 その言葉を最後に、その異空間は歪み始める。歪んだ空間は天地全てが崩壊していく。崩れ行く空間はテレビの砂嵐の様になり、そのまま電源がプツンッと切れてしまう。


 

 「(まさか、日本に戻るとは)」



 【道化(フール)】こと、【小岩(こいわ)歩人(あゆひと)】は念話(・・)から覚める。


 彼が居るのはある国の廃墟となったホテルのスイートルーム。しかしスイートルームとは言え広くはあるが、年数も経っており老朽化している。



 「明日ですね」



 歩人は少し憂鬱であった。


 日本では、【小岩(こいわ)歩人(あゆひと)】―――――――【道化(フール)】は、国際指名手配である。何かしら一悶着はあるだろう。


 14歳の時、日本の大貴族の一角(・・・・・・)を裏切り、その当主を暗殺しようと失敗した。しかし、当時の彼はその年齢には考えられない程の強者。数多の手練を負傷させ、そしてその当時日本最強と称されていた男の片腕を斬り落とした。


 その男は今でも健在であり、現役ではあるものの未だに隻腕になっても尚最強の座を君臨している。



 「……………連絡しないといけませんね」



 白シャツにジーパンな歩人はベッドの横に置いていた紙にボールペンで何やら暗号の様なものを描くと、何処からともなく複雑な紋様が刻まれた札を飛ばすと一匹の竹の管が現れる。


 その竹管の筒が空いている箇所から、ひょっこりと白いオコジョが顔を出す。


 

 「何時も思うけど、“管狐”で合ってるんですか?」


 「きゅ、きゅーっ!?」



 いや、私にそう言われましても勝手に人間がそう呼んでるだけですし………と困った鳴き声を出すイタチだけど“管狐”。歩人は、まあいっかと細かいこと考えるのを止めてその紙に書いた暗号を“管狐”に渡す。



 「頼みますよ」


 「きゅっ!」



 承知っ!と一鳴きすると、ドロンと忍者の様に消え去ってしまう。無事に管狐が向かったことを確認すると、割れた窓の隙間から見える蒼天の青空を眺めながら思う。



 「和食、食べたいな」




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 日本の首都“京都”。


 そこは数多の異能力者の登録と確認などを行う【異能省事務局総本部】。


 各都道府県ごとに異能省が存在している中で、首都である京都では規模は大きく更には各支部を統括する。そしてその総局長である眼帯の男は書類の仕事を行っていたのだが、その横に突如管狐が現れたのだ。



 「きゅきゅっ!」


 「コイツは―――――――」



 その管狐には心当たりがあった。


 管狐は咥えていた手紙を総局長の元に置くとそのままドロンと消え去ってしまう。


 総局長は特に慌てた様子もなく、本来ならば“式神”や“召喚獣”・“使い魔”が現れるとこの領域では警告音などが反応する筈だが、それを掻い潜るその者の実力に感心していた。


 そして、その手紙を開けて中身を確認する。


 暗号であったが、それを解読すると―――――。



 【あした日本に行きますね★】


  

 「…………………まじか」

  


 そしてその日、日本の各支部に緊急通達に加え緊急会議を政府と共に行われるのであった。


 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





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