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エピローグ.それから

**********(勇斗視点)


 僕たちが異世界から自分たちの世界に帰ってきて数年が経った。

 女神さまの計らいかこちらの世界では時間が経過していなくて、ちょうど召喚された状態そのまま戻ってきた感じだ。


 女神さまの言う通り、経験値やスキルはそのままだったため、僕たちの能力は他の人に比べて圧倒的になっていた。

 僕には多くのスポーツ団体からスカウトが来たものの、僕の力は異世界の能力だからと思い全て辞退し、普通に就職してその後は独立、会社を設立することになる。

 異世界で僕の持っていたスキル『神々の加護』はこちらでも健在で、社員全員にステータス二倍のバフがかかることになり、瞬く間に会社は急成長を遂げることに。


 賢美(さとみ)は魔法と『無詠唱』のスキルを持ち帰ったので、マジシャンとして活動する傍ら、その力を使って正義の味方をやっているらしい。

 『私、正義の味方に憧れてたんだよね!』と堂々と言われたのは彼女らしいなと思う。


 (ひじり)は回復魔法を持ち帰ったので、元々憧れていた看護師になり人々を助けている。

 彼女の勤める病院では不思議な力が働いているのか、どんな患者でも助かると噂になっている。

 それでも聖の名前が出ることはないので、あくまで裏方として患者さんに向き合っているのだろう。


 そして、豪は――。




**********(ゴウ視点)




「へくしゅっ!」

「なんじゃ、また噂でもされておるのかのう」


 日の当たる縁側で俺の隣に座り、お茶をすすっていたクズハさんが笑う。

 まあ、噂される心当たりはあり過ぎるから苦笑いを返すしかない。


「そうじゃのう……ワシという正室がおりながら、他の女子(おなご)に手を出しておるからのう……」

「ぶふぉっ!?」


 俺がお茶を口に含んだ瞬間そんなことを言うものだから、思わずお茶を噴き出してしまう。

 一応この世界は一夫多妻制が認められているし、クズハさんにも了承を得ている。


「まあ、ワシが認めた者だけじゃからの。そこはちゃんとしておる」

「そりゃあそうでしょうよ……」

「……しかし良かったのか? お主は元の世界に帰らなくても……」


 俺が女神様に願ったこと、それは『クズハさんの呪いを解いて欲しい』というものだった。

 幼馴染の三人はもちろん、クズハさんやアネットも驚いて俺の方を見たっけ。

 『馬鹿者! もう戻れなる機会がないかも知れぬのだぞ!?』とクズハさんにも怒られたし。


「ええ、何度も言ってる通り俺はこっちの世界が好きですし、まだまだ旅をして色々な人を助けたいと思いました。それに、クズハさんにもらった恩はまだまだ返せていませんでしたし」


 俺はたぶんクズハさんがいなければこのスキルで世界を救えなかっただろうし、勇斗たちも死んでしまっていただろう。それどころか、このスキルを誰かに利用されていたかもしれないし、どこかで野垂れ死んでいたとも考えられる。

 ……本当は、あの時の心から笑ったクズハさんの笑顔がもう一度、いやもっとたくさん見たかったというのがあるが、それは気恥ずかしすぎて言い出せないでいる。


「……願いを叶えるのを保留して、ワシの呪いを解く方法を見つけた後に戻るという手もあったのではないか?」

「確かにそれもあったかもしれませんね。でも、向こうにはクズハさんはいませんし」

「……やれやれ、面と向かって恥ずかしいことを堂々と言うでない。……照れるではないか」


 クズハさんが少しだけ顔を紅潮させる。

 元の姿に戻ってからというもの、クズハさんの表情が豊かになったように感じられる。


「おっ、いたいた。おーい、ゴウとクズハ、今日はエルフの森でパーティーがあるってよ!」


 アネットの声が聞こえる。

 今、俺とクズハさんはエルフの森近くに家を建てて暮らしている。アネットは森を抜けた先の村で他のワーウルフたちと暮らしていて、今や美人たちが住む家として名物になっているのだとか。

 アネットも何度もアプローチをかけられているが『オレはゴウ以外にゃ靡かねーよ』と言っている。ちなみに俺の側室の一人だ。


「ティアも久しぶりに会えるとかで張り切っておめかししてたぜ?」

「くふふ……ゴウよ、お主もそろそろ覚悟を決めたらどうじゃ?」


 クズハさんと結婚し、アネットを側室に迎えたあとにそれを知ったティアは『私も側室になりますっ!』と駄々をこねたらしい。いや、長の娘が側室はまずいでしょう、とずっと断り続けていたがティアも頑固なもので『ゴウさん以外の人とは結婚しませんっ!』と長に言い放ったらしい。

 これに長も折れてしまったのか、今度はティアからだけでなく、長からも『ティアを側室に迎えて欲しい』と言われるようになってしまった。


「でも、やっぱり長の一人娘が側室というのは……」

「何を言っておる。世間では隠されてはいるが、魔王を倒したのは他ならぬお主じゃぞ? 本来なら一国の王も王女をお主に嫁がせようとするぐらいの快挙なんじゃぞ?」


 一応、世間では勇者が魔王を倒して女神様を解放、役目を終えて元の世界に戻ったとされている。

 俺については特に触れられてはいないが、ティアやオボロさんなどには薄々気づかれているようだ。

 ……ちなみに、過去の召喚において一部を追放し、結果的に転移者を見殺しにした国の上層部たちは天罰を受けたとかなんとか。


「まあすぐにとは言わん。パーティーでおめかししたティアを見て気が変わるかもしれんしのう」

「そうだな。滅茶苦茶気合入れてたしそうなる可能性もあるか」

「なんかパーティーに行くのが怖くなってきたんですけど!?」


 俺の発言にクズハさんとアネットが苦笑する。


 ……こんな穏やかな日々がこれからもずっと続いてくれれば、と澄み切った青空を見上げながら思ったのだった。

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