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36.レベル8盗む

 『盗む』のスキルのレベルが8になった瞬間、赤く光る空間……盗むの当たり判定が広くなったように感じた。

 以前、精霊に潜在能力を引き出してもらった際にも広がったのだが、今回はそれに比べると微小なものではあるのだが。

 あれ?案外レベル8って大したことない?……と思っていたが、間違いだった。


 しばらく周囲を観察していたところ、不思議な点が見つかったのだ。

 そう、なぜか装備にも赤く光る空間が見える。つまりこれは範囲が広がったのではなくて……。


「……装備から盗める……?」


 ……そんな『盗む』なんて俺の知る範囲じゃ聞いたことがない。

 聞いたことがないけど、実際に目の前に……現実に起きているんだから、それは認めないといけない。

 とりあえず、スキルの効果を確かめたいところだが……。


「おう、ゴウ。あの指揮官がゴウのおかげで町を無傷で守れたから、祝勝会を開いてくれるそうだぞ。オレは肉が食いたいな」

「ほう……ワシはいい酒が飲めれば嬉しいところじゃが……」

「いいね、オレもクズハと一緒に飲むか」


 ……そういえば、成長していないだけとはいえクズハさんの容姿でお酒を飲んでも大丈夫なんだろうか。

 などと考えていると頭を小突かれる。クズハさんは心まで読めるのか?


「ほれ、主役がおらんと締まらんじゃろう。行くぞ、ゴウ」

「……ええ、では行きましょうか」


 『盗む』の新しい効果も気になるが、今は祝勝会を楽しもう。

 ……俺は美味しい肉とジュースがあればいいなと思っている。




**********




「ゴウさん、今回はお疲れ様でした」

「オボロさん。といっても最後に美味しい所だけ持っていく感じでしたが……」

「いえ、ゴウさんがいなければマウントゴーレムを止めることはできなかったでしょう。それにしても、あのレベルの魔法までお使いになるとは……」


 あのレベル?マジックアローのことだろうか。


「ええと、それはマジックアローのことですか?」

「……マジックアロー??????」


 オボロさんが驚きのあまり目が点になっている。

 ……そりゃそうだよなあ、普通のマジックアローってあんなにデカくないし。


「ふふふ、ゴウさんもご冗談がお上手ですね。マジックアローと聞こえましたが、実際は別の魔法でしょう?」

「いえ、ただのマジックアローですが……」

「ただの?????????」


 俺、酔ってて変な事言ってると思われてる?未成年だからお酒なんて飲めないんだけど。

 オボロさんは納得がいかないのか、その後も何度か同じ質問をしてきたのだが……答えはいつも同じだ。


「……まあ、冒険者ですし隠しておきたいものもありますよね」


 という結論にオボロさんは達したのだった。




「そういえば刀の方はどうなんですか?」


 マウントゴーレムに斬りかかったため、刃こぼれが起きてしまったオボロさんの刀。

 この先も使うなら修理、もしくは新しい刀を作る必要があると思うので、気になっていた。


「ええ……この刀も業物なんですが、まさか全く歯が立たない相手がいるとは……」


 オボロさんが鞘から刀を少しだけ覗かせる。

 やはり刃こぼれのせいで刀がボロボロだ。


「もしよろしければ、鍛冶師を紹介しましょうか?このダガーを作った人……というかドワーフなんですけど」

「その……地面を抉ったダガーを!?」


 そういえばこの威力を間近で見ていたなオボロさん。


「おそらくそのダガーはランクSはあると思うのですが……作れる人がいらっしゃるのですか?」

「ええ、東の森で鍛冶をやっています。以前はAランクの装備を作っていた人なのですが、本気で打てばSランクもできるようになったんです」

「……そのような情報を頂いても、拙者にはお返しするものが……」

「いえ、俺たちはこれから先、更に西に旅に出ます。この町を不在にするので、もしよければオボロさんの力で守って頂ければなと思いまして……」

「……分かりました、お受け致しましょう」


 よし、これで安心して西へ向かえるな。オボロさんが武器を打ってもらって帰ってくるまでは、俺たちで町を守っておこう。


「俺の名前を出せば分かってもらえると思います。そのドワーフの族長に渡したいものがあるので、よければ後日宿に寄って頂けませんか?」

「分かりました、それでは明日お伺いしましょう」


 オボロさんは深くお辞儀をして、自分の宿泊している宿へと向かっていった。

 ……さて、俺もそろそろ帰ろうかな。




**********




 翌日。

 お約束のようにクズハさんとアネットは二日酔いだ。

 まあ、今日は新しい『盗む』の効果の検証だし、のんびりするとしよう。


「おっと、ドワーフの族長へのお土産を用意しないと」


 俺は余っていた体力の丸薬と運の丸薬、各種能力上昇(バフ)アイテムを魔法の袋に入れ、オボロさんへと渡す準備をする。

 鍛冶は長丁場と思うし、体力はあっても困らないだろう。運は……まあ高い方がいいのかなというぐらいだけど。

 その後、宿屋を訪れてくれたオボロさんに魔法の袋を渡して、少しだけ町に出ることにした。


 そして武器屋と防具屋で適当な装備と、ついでに食料を買って宿に戻る。


「さて、と。検証を始めますか」




**********




 検証の結果、以下の事が分かった。


 ・ドロップ、レアドロップは盗めない。そりゃ武器防具を壊してもアイテム出ないし……

 ・盗める回数はモンスターなどから盗む時と同様に二回まで

 ・特殊効果の付いたものは、スキルを盗む時と同様に特殊効果を盗める

 ・ステータスやレベル、特殊効果はモンスターと同様に5分経過で元に戻る


「なるほど、ドロップ関係以外は他の盗むと同じなんだな」


 あとは相手が装備している場合の挙動も知っておきたいが……今まではステータスを盗んだら相手のステータスが0になっていたから、本体から盗んだら装備を含めてのステータスを盗んでいると考えるのが妥当か。

 となると、相手本体の守備力が30、防具の守備力が70で100の場合、防具から守備力を盗んだら相手のステータスは30になる。

 直接相手から盗む方が強いように思えるが、盗める回数が増えるということは戦闘の幅が広がるな。

 装備からステータスを盗み、本体からはレベルやスキル、魔法を盗めば相手の弱体化とこちらの強化ができるわけだ。


「それに……」


 大量の武器や防具を持ち歩けば、ノーリスクで俺のステータスを強化できる。

 実質ステータスが底上げされたようなものだ。


「よし、クズハさんに相談してもっと入る魔法の袋を作ってもらおう」


 ……でも、クズハさんたちまだ二日酔いでダウンしてそうだけど。


「ちょっと様子を見に行くかな……」


 俺は装備を片付けると、クズハさんたちの部屋に向かったのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 装備のステータスを盗むって、どこまで成長できんだ【盗む】は [気になる点] そろそろ勇者視点での閑話とかも欲しいですね [一言] 14話くらいの頃から見てます、頑張ってください!
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