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26.魔力制御

 フェアリーのレアドロップ、マジックアローの魔導書で魔法が使えるようになった。

 今後の戦力にするため、クズハさんの指導で練習をしているのだが……。


「ふむ……威力は確かに一級品じゃ。じゃが、常に全力じゃと魔力がすぐに尽きてしまうぞ」


 そう、魔法はドリアードから岩石(ストーン)を盗んで一回使ったことがあるのだが、その時も同じように威力を制御できていなかった。

 まあ、そもそもが魔法職ではないので魔力の扱いに長けているわけではないんだけど……。

 隠蔽の魔法がかかった指輪に魔力を注ぐ時も、常に全力で注いでいたし。


 それでも制御できるようになれば心強い。なんせ、今は蚊を一匹殺すのにミサイルを撃ち込むような威力だからだ。

 北の洞窟に向かうのは、魔力を制御できるようになってからだな。ダンジョンを崩すわけにもいかないし。


「あっ、ゴウさん、お疲れ様です」


 あれ、この声は……。


「ああ、ティア。来てたのか」

「はい、クズハさんから拠点を教えてもらったので……これ、不思議な枝で育った木の果実です」

「わざわざありがとう、今日のデザートにさせてもらうよ」


 そういえば不思議な枝、この拠点の周辺にも植えればダンジョンで役立つアイテムも増えるな。

 丸薬は流石に生らないだろうけど……木に丸薬が生っているシュールな光景を思い浮かべてちょっと笑いそうになってしまう。


「ゴウさんも魔法を使われるようになったんですね」

「ああ、でも魔力の制御に苦戦しててね……」

「……ゴウさんの能力、相変わらず規格外ですね……」


 俺が魔法を撃った先を見て、ティアが呟く。地面がだいぶ抉れてるもんな……。


「私も最初は苦労しましたけど、魔力とお友達になる感じで付き合うとすんなりと協力してくれるようになりました」

「お友達、か……」


 ……そうだな、確かに俺は一方的に命令してたな。もし魔力にも意志みたいなものがあるなら、反発されてもしょうがないか。

 意識して魔力を使ってみよう。


「ありがとうティア、もう少しがんばってみるよ」

「はい!それでは私は町で働いてる子たちの方に行ってきます」

「うん、気を付けて」


 俺はティアを見送ると、再び魔力制御の練習を始めた。




**********




「ほう、なかなかサマになっておるではないか」


 一時間後、なんとか魔力を制御できるようになってきた。

 魔力の流れに逆らわず、それを少し放出するような感覚。

 指先に集中することで魔力の流れを感じ取り、指先から少量の魔力を切り離して放つ感じにすれば威力が抑えられた。


「あとはこれを無意識でできるようになるまで修練すれば、晴れて一線級の魔法職と肩を並べられるぞ」


 一線級の魔法職かあ……あれ?俺盗賊でしたよね?


 ……とりあえず、あとは戦闘中でも慌てず制御できるように実践あるのみかな。




**********




 翌日、俺は北のダンジョンへとやってきた。

 クズハさんとアネットは、アネットの服や食料品の買い出しに行っている。

 アネットもだいぶ人間の生活に慣れてきたらしく、最近では料理まで始めた。

 これが結構美味しくて、クズハさんも「ワシもうかうかしておれんのう」と言うぐらいだ。

 俺もこっちに来て自炊はしてたけど、アネットほどうまくはできない。


 ……さて、ダンジョンに潜ってみようか。

 流石に難易度が高いだけあって、冒険者の姿はまばらだ。

 これなら分岐点で人のいない方にいけば目立たず探索できるだろう。

 よし、俺もがんばりますか!




**********




 第一階層に出現するのは宝箱に擬態するミミック。

 この階層にはたくさんの宝箱が置かれているらしく、宝箱目当てに第一階層だけを探索する冒険者もいるほどだ。

 中身はランダムで入っていて、中にはハイマジックポーションなどのレアドロップ品もあるみたいだ。

 宝箱は開けて中身を取ると消滅し、翌日に別の場所で復活する。どういう構造なんだ……。


 ちなみにミミック自体はかなりの難敵で、口を開けていないと物理攻撃がほとんど通らず、火属性の魔法以外も通りにくいほど箱が固い。

 宝箱を開けた瞬間に襲い掛かってくるので、開錠には細心の注意を払わないと先制攻撃されてしまうのがオチだ。

 なおミミックかどうか確かめるために普通の宝箱に遠距離攻撃を当ててしまうと、中身が破損してしまうなどの問題があるため、攻撃はご法度になっている。

 鑑定魔法が使えればミミックかどうか判別できるため、サポート専門の雇われ術師もいるとか。


 ……まあ、俺には関係のないことなんだけど。

 なぜなら赤く光る空間が出ていれば、盗める=ミミックが確定なわけでして。

 出ていなければ普通の宝箱だから開ければいい。


 ということで、俺は開けた瞬間に襲い掛かって来る性質を逆手にとり、開錠するかどうか迷うフリをしてミミックからノーマルドロップとレアドロップを盗み出し、やっぱりやーめたとその場を立ち去ることを繰り返した。

 ノーマルドロップはプレゼント箱という、中からランダムにアイテムが手に入る箱だ。

 宝箱に擬態したモンスターが箱をドロップするのはちょっと面白い。

 運がいいと丸薬も入っているため、取引される量も多い。


 そしてレアドロップは……なんと運の丸薬!

 ここで守備、魔力、素早さに続いて四種類目のステータスアップアイテムが手に入るとは。

 本当に欲しい力や体力は出てこないあたり、物欲センサーでも働いてるんですかね。


 さておき、今の運は184だからここでカンストまで上げて、三種類カンストの時と同様に限界突破が可能かどうか調べておきたい。

 マジックアローの魔導書のおかげで魔法も使えるようになったので、もし限界突破できるなら魔力にしたい。

 ……それにしても盗賊ってなんだろうね。もう転職できても良くない?




**********




「さて、運の丸薬が五十個貯まったし、カンストまで上げておきたいな」


 ミミック稼ぎを始めて三日後、ようやく丸薬がカンストできるまでの個数が貯まった。

 他の冒険者もいるためミミックは狩られやすく、なかなか盗めなかったからだ。


 ちなみにプレゼント箱は出てくるアイテムに運が絡むと予想されるので、カンストさせてから開けることにしている。

 こちらも同じく五十個貯まっている。


「それじゃあ使っていくか……」




「よし、次でカンストだな」


 運の丸薬を使い始めて二十三個目、運が254まで上がった。

 この次でカンストだ。果たして限界突破できるかどうか……。

 俺は運の丸薬を食べた。すると……。


【4つのステータスが限界に達しました。限界を突破するステータスを選んでください】


 来た!そして選べるのは『魔力』『守備力』『運』だ。既に限界突破している素早さは対象外のようだ。

 もしかすると限界突破した後にまた限界まで上げたら更に上げられるのかもしれないが……それは魔力で検証できるだろう。

 俺は躊躇いなく『魔力』を選択した。


「明日からは北のダンジョンか、それとも西のダンジョンのアルラウネか森でドリアードから魔力の丸薬を盗むか……」


 俺は少しだけ在庫のあった魔力の丸薬を使いながら、ステータスの上限がどこまで上がるかワクワクしていたのだった。

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