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説明回 各社こぞって協力したようでした。

説明セリフ回です。

 ずいぶん遠くなってしまったけれど、あの派手派手しい黄色の超巨大ウミウシの姿を見失う訳もなく。わたしとヘリオスは、先に追って行ったハディスと王都警邏隊から僅かに遅れて、貴族街の家並みの向こうへ見え隠れする後ろ姿を追い始めた。


 わたしたちの後には、馬車に待機していた我が家の護衛が1人付いて来ている。わたしが全速力で走って追い掛けると言ったら、この世の終わりみたいな顔をしてヘリオスに慰められていたけど、誘拐犯の金蔓バンブリア姉弟(きょうだい)が街中を護衛も無しに走り回るわけにはいかないし。


「ハディス様が先に行っちゃったし、鍛錬だと思って一緒にがんばりましょうね」

「はい!死ぬ気で付いて行きます!」


 決死の覚悟の形相で宣言されたけど、わたし鬼教官だと思われてる?これが部活動(ドッジボール)のご令息だったら良い返事がもらえるんだけど、と思っていたらヘリオスに「バンブリア商会(うち)の人間にはお姉さまの()が知れ渡っていますからね」とジト目で言われた。


「そもそも、とんでもない速さで夜空の彼方に浮かぶ小さな大禰宜(ひと)一人を追うのは、難しかったんです。けれど、お姉さまとハディス様だけはその足元に大きな黄色いモノが見えると仰って、実際追うことが容易かったのですから、警邏隊の皆さんと大禰宜(だいねぎ)を追うのは、お着替えをされているお姉さまではなく、ハディス様になるのは必然ですよね。今回お洋服だけで済んだから良かったようなものの、もし錫杖(あれ)がお姉さまにあたっていたかと思うと―――」

「ごめん!ごめんって。気を付けるから走りながらお説教はやめてー。きっと危ない事は、あの黄色い魔力を使う大禰宜を抑えれば治まるはずだから。占術館の禰宜(ねぎ)たちが黄色い水を持ち込んで問題を起こしていた『祈祷師』でもあって、あの大禰宜がボスなんでしょ?」


 さっきまでの騒動を頭の中で整理する。もちろん脚は止めない。


 占い師の女により、禰宜たちが占術官へ大神殿主から拝受した『聖水』を運んでいたことが証言されている。その禰宜の他、神官、巫女と云った占術館で働いていた人たちは、大禰宜ムルキャンの指示で動いていた事実も彼本人の登場で露呈した。大分、問題の大本に近付けている気がする。


「そうですね、多分、あの大禰宜を何とかする事が出来れば、お姉さまだけでなく多くの貴族が救われると思います。水については、僕たちよりも先に王都警邏隊が危機感を抱いて動いていた程なんですから」

「そうなの?」


 聞いたわたしにヘリオスの呆れた視線が突き刺さる。ごめん、夕食の席でそんな話があった気はするんだけど、ドッジボールのあれこれを考えてたら聞き逃したかも。「そんな気はしてましたけど」と呟いてから続けてくれる。


「王都警邏隊の皆さんは、僕たちが王都商業ギルドを通さない商品の売買、同じくギルドの特許権の侵害で占術館の人たちを摘発しようと証拠固めをしていた時、既にヴェンツ伯爵令息や、ラシン伯爵令嬢をはじめとした、複数人の貴族が所持していた高価な『(まじな)いがかった水』について調査を進め、神殿関係者への疑いを強めていたようです」


 朧げな食卓での会話の記憶と、ヘリオスからの話を合わせて情報をまとめてゆく。

 父とヘリオス、そしてハディスは、メルセンツや学友たちが所持していた薄黄色い魔力を帯びた商品の数々について、確固たる証拠を掴むために王都の商品流通を一手に取り仕切る王都商業ギルドの協力を仰ぎ、その品々がギルドを通さずに占術館や小規模神殿で商われていることを突き止めた。まぁ、王都商業ギルドの目を盗む形で売り出されたヒット商品を潰せるとあって、各社こぞって協力したようだったけど。けれど、それとは別口で王都警邏隊が動いていたことによって、今回の占術館検挙がより迅速に進められたってことね。


「あの水は、占術館に頻繁に出入りしていた一部の熱心な貴族のみに、相談の頃合いを見てひっそりと声掛けが行われ、最初は無料で提供されていました。2回目以降は特別な祈祷師から直接、高額な料金を請求される形での取引になったみたいです。効果のほどは、顕著なものがあったのか、中毒性のあるものだったのか、とにかくその『水』を買うために身代(しんだい)を崩す者まで現れていたようで、警邏隊も警戒を強めていました。けれど、普通の人が見ればただの『水』でしかなく、今回の僕たちからの証拠を伴った屋敷捜索のチャンスは渡りに船だったみたいです。そして祈祷師の正体も、まさか禰宜や大禰宜をいきなり取り調べる訳にもいかず手をこまねいていたみたいですが、向こうから現れてさらに暴れてくれたのですから千載一遇の捕縛のチャンスですよね」


 軽やかに並んで駆けながら、にっこりと笑みを向けてくるヘリオス、天使!仕事も出来るし、さすが後継者!背後で護衛の息が随分上がっている気がするけど、まだまだ鍛え方が足りないかなー?


「お姉さま、護衛の彼はむしろ平均的ですよ?お姉さまに連れまわされた僕は随分と……一般的以上に鍛えられたんですからね」


 こちらの考えを見透かしたように、打って変わって胡乱な視線を向けられた。えーと、強い子になれて良かったね?


 走るわたしたちの足元が整えられた石畳に変わり、貴族の住む屋敷や別荘が立ち並ぶ区域へ入って王城を囲む城壁が見え始めた頃、突如として黄色い超巨大ウミウシは、何かに搔き消されるようにその姿を消滅させた。

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