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前世待ち続けた女、今世待ち人来たり  作者: 一 穂(いちもんじ すい)
7/11

余談:坂本李菜から見た神楽しえりその2

余談はこれで終わりで明日から本編です。

 高校は李菜の両親が有名な進学校への入学を希望していたため、サザランド高等学校を希望した。サザ高は学力によって学費免除があり、しえりも受けられると思ったからだ。案の定、押しに弱いしえりは李菜の声に応えて、サザ高を受験し、見事特待生学費免除を手にしていた。


 入学式では、入学試験の成績が1番の人が拒否した答辞をしえりが読むことになっていた。答辞拒否で話題の成績トップの人はしえりの後ろの席の人だったが、5月までは1度も学校に来なかった。

 4月の終わり、転校生が来ると話題になった。なんでも、私服の学生らしき人を見た人がいたり、たまたま職員室で聞いた人がいたりと噂が広がった。その転校生がイケメンということまで。

 5月の1番最初の週の今日、嫌がるしえりを押し切り、李菜は早めに登校する約束を取り付けた。

 執事を急がせ、メイドを急がせ、運転手も安全運転第一に急がせ、待ち合わせ場所に着いたが普段なら李菜より早く来ているしえりは、待ち合わせ場所のセンキュ駅で待てども待てども来ない。もしかして寝坊してしまったのかもと思い、電話をすればまだ家だと言うでは無いか。強引すぎたかと反省しながら1人で登校すれば、ちょうど転校生らしき人を見た。噂通りイケメンで赤銅色の(見る人によっては錆色に見える)無造作に梳かした髪の毛と綺麗な二重瞼、キリッとした切れ長の目に光を反射する茶色の瞳はどこか不自然さを感じさせながらもイケメンだった。何よりその体はガッシリとしており、身長は190cmあるかと言うほど高く、サザ高で有名なイケメン王子とは違うタイプの美丈夫だった。


 そういえば電車で乗っている時にスマコで見た、ルヴァルアにどことなく似てるかも、とふと思ったのはその色合いのせいかもしれない。


 そのことをライネ(メッセージアプリ)でしえりに送ったけど、既読はつかなかった。今頃電車に飛び乗っているか、スマコを家に忘れたか。後者の可能性が高い。


 案の定先生にこっぴどく叱られたしえりはしょんぼりしながら席に着いていた。

 絶対後ろに座ってる転校生に気づいてない。

 しえりは驚くだろうな。無意識なんだろうけど、李菜は気づいていた。しえりがルヴァルア英雄記を気にしていることを。だからこそ、教えたかった。後ろのイケメン、似てない?って。


 だが李菜の思惑通りには行かず、転校生を見たしえりは寧ろガッカリしていた。


 今はもうお話でしか語り継がれていないルヴァルアはどんな人物なのか、李菜には想像でしか分からないのも無理はない。

 期待させてしまったのは自分だと自覚がある李菜は罪悪感が湧いてきた。挽回しようとお昼は奢ってもらう約束をしていたのもあって、しえりの気持ちを盛り上げるため、2人で楽しめる調理スペースを借りた。しえりが料理を作っている姿を見ながら話題を振る。


「そういえば、先日の地震凄かったよね!あんまりにも揺れるものだから、部屋の本が大量に散らばったよ…」

「地震のせいで大事なグッズも転がったんじゃないの?」

 李菜はアイドルオタクである。それも重度の。毎回のライブにはいつも連れ出される。最近の推しは風間君だと公言している。顔は好みではないがイケメンだった。やっぱり面食いだと呆れを通り越して苦笑いを浮かべる。


「いや、グッズは命。地震で倒れないよう最近の耐震性能を取り入れた棚に入れているから大丈夫!」

「そんなところでお嬢様発揮しないでよ…」

「おほほほほほ!」

 なんてことを話しているうちに一通り料理は出来上がっていた。李菜はキッチンから料理をテーブルに運び互いの席に置く。しえりが席に座ったのを見ていただきます、と言って食べた。しえりの料理は相変わらず美味しかった。美味しいと言うとしえりは嬉しそうに笑っていたから、いつも通りに楽しんでくれたと思う。


 スマコは家に置いてきたらしい。ランチを食べ終わったあとあたふたしていて、やっぱりしえりはどこか抜けてるなと思う。と同時にスマコに依存していないしえりには尊敬するわ、と笑った。アイドルオタク発揮アイテムスマコを片時も離せない李菜には無理な芸当だからだ。そんな李菜を見てしえりも李菜は無理そうと笑って言った。





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