ルヴァルアの遺産発掘ニュース
前世の未練など忘れて幸せに暮らしたい!なんて思っていた翌日、サザランド高等学校登校前にテレビでニュースを観ていた。手には箸を持ち、朝食の味噌汁ご飯、焼き鮭をテーブルに並べ食べながら。
___次のニュースです。
あの有名な英雄記のヒーローである、ルヴァルアの遺産がガンシュ県イツカン市にある山奥の洞窟内から発見されたとの情報です。先日の巨大な地震の影響で隆起した洞窟の調査員が発見しました。遺産は丁寧に保護されており、中身は想い人への熱烈なラブレター数百枚と今まで探しても見つからなかったルヴァルアが使用していたとされる剣です。正規の入口には大昔存在していたという陽力を用いた札が数枚貼られており、入念に隠されていたものと思われます。また、誰かを埋葬した墓のようなものもあり、専門家が現在詳しいことを調査中との事です。
な、なんだって!?
大ニュースじゃないか!もしかしたらルヴァルアの事が分かるかもしれない。
いやいやいや、前世のことは忘れると決意したばかりだ。意見をころころ変えるなど、あってはならない。
トゥルルルー、トゥルルルー
スマコ(スマートコールの略)がなる。画面には李菜と表示されている。
「もしもし?」
「ちょっと!いつになったら待ち合わせ場所に来る訳!?
約束の時間を15分も過ぎてるんだけど!これ以上遅くなるなら遅刻するわよ!!」
テレビを見るとそこには8時きっかりの表記が。家から近くのセンキュ駅までは歩いて10分かかる。電車が来るまでだいたい3分かそこら。そこから電車でサザランド高等学校(通称、サザ高)の最寄り駅まで15分。最寄り駅からサザ高までは早くても10分はかかる。8時30分までは間に合わない可能性が高い。
電話をスピーカーにしてながら準備に取り掛かった。
ご飯をかきこみ流しに出す。
「ごめん!先行ってて」
これは遅刻確定だが、李菜まで巻き込む訳にはいかない。
鞄に昨日やった今日の授業の予習ノートを入れる。鞄を玄関に置き、流しの食器洗いに取り掛かる。
「今日は転校生が来るから早く行こうって約束してたのにぃ…」
「本当にごめん!この埋め合わせはお昼奢る」
「仕方ないなぁ。急いできなよ!」
ブチッという音とともにスピーカーにしてキッチンに置いていた電話が切れる。相変わらず忙しない。最後の食器をゆすぎ終わり、食洗機に入れた後手を拭く。
急いで玄関まで行きカバンを持ち、靴を履いた。家を出る前にきちんと家の中の確認。
テレビは電話しながら消したし、朝食の食器も洗った。電気も消したし、あとは鍵を閉めるだけ。玄関の靴箱の上からキーケースを持ち、ドアに鍵をかける。しっかり閉まっているのを確認し、カバンを肩にかけて走り出す。家はマンションの5階だが、エレベーターは最上階である20階と15階に止まっているのを確認し、階段を駆け下りる。エントランスでコンシェルジュに小さく一礼し、駅までの道を走る。そのお陰か、駅には5分で着くことが出来た。改札を抜けるとタイミング良く来た電車に乗る。いつもより遅い時間ではあるが、出勤中の社会人らしき人と近くの高校の制服を着た学生が数人いた。
次の駅で降りる人が多かったのか普段は混雑して座れないのだが、座席に座ることができた。
ぼーとしていると電話で李菜が言っていたことを思い出した。
李菜は幼稚園からの親友だ。緩やかなカーブを描く自前の茶髪にパッチリ二重瞼と長い睫毛、大きい瞳、その肌は程よく焼けており、頬は何もせずともピンク。身長167cmのスレンダー美人である。昔から可愛かったが、さらに磨きがかかっている。性格は顔に似合わずサバサバとしており、ハキハキものを言う。でも、自分の懐に入れた人には優しく慈悲深い。面食いなのが玉に瑕だ。
今日早く行こうとしていたのも、その面食いが問題だった。
先週から転校生が来ると話題になっていたが、なんでもその転校生がイケメンだと学校中で噂になっていた。しえり自身、イケメンが嫌いだとは言わないが、態々見に行くほどでもないと思っている。
その件の転校生が今日から登校するという話を聞きつけた李菜が早く行って先に見てみようと言い出したのが、そもそもの原因だ。
それが無くてもいつもより遅くはなったのだが…。
電車がサザ高の最寄り駅に着いた途端また全力疾走をしたのだが遅刻は免れず、朝から体育科のゴリマッチョ先生に説教された。
災難である。