誰よりも優しいといわれた妹を持つ、極悪な姉です。真実は誰よりも性格が悪い妹と、小心者の姉なのです。そんな私は大切なものを盗られ続け、最後は婚約者まで盗られて…。気が弱い私も堪忍袋の緒が切れて
「お姉さまの目ってこわーい」
「……イリス」
「睨んでる~」
私はただ三白眼と言われる白目が多いでした。
黒目がちな妹とは全く違いました。
男であるお父様はこの目で得をしていましたが、私は得をしたことなどありません。
「睨んでません」
「こわい~おかあさま助けて」
「また妹をいじめてるの、レリア、最悪ねあなた」
自分によく似たかわいい妹を溺愛する母、家族に無関心な父を持った姉です。
どうしても私の目が気に入らないと、政略結婚であった母は私を嫌います。
「…いじめていません」
「まあ母をにらむの!」
「……」
私は父が申し訳程度に送ってくる贈り物すら妹にとられました。
どうしても私が睨んでいると言い張り、周りにも吹聴します。
私は極悪な性格の姉と言われていました。
ただ臆病なだけでした。唯一の趣味の料理や家庭菜園作りも庶民みたいと馬鹿にされました。
二人が婚約者候補になり、妹が選ばれるはずが私が選ばれ、妹が激怒し…。しかし覆るわけもなく私は王宮に向かいました。
「目つきが悪い極悪な女のほうとはな…私は性格が悪い女は好かない、政略結婚だから、お前等愛せない」
私は殿下にこう宣言され、離宮でずっと一人でした。
少しちらっと見ただけでも怖いと使用人が恐れるのです。
父の場合は威厳を保つのにいいですが、女の私では睨まれている、性格が悪い女という評判になりました。
「レリア・リース、妹をいじめ、母をいじめた罪により、お前と婚約破棄し、辺境追放とする!」
私は数か月後、殿下に宣言され、殿下の横には妹がおりました。
使用人いじめの罪とやらも追加され、実家に帰され…母が私を歓迎するはずもなく、私は家を追い出されました。
妹と母が仕組んだことだったのです。
「……愛想が悪いって罪なのですかね」
「もともとそういう顔だからって諦めるより、少しでも愛想よくしたほうが世の中はうまく渡れるけど、無理することはないよ、嬉しくもないのに笑うのも辛いし」
唯一の味方だった従兄のレオンのところに行ったのですが、従兄は両親がおらず、下宿して魔法を学んでいる身なので悪いなと思います。
レオンも目つきが悪いですが、にこにこと笑っているので、お父様ほど怖いとは思いません。
「確かお料理が得意だったよね? 下宿の下の食堂でお手伝いがほしいっていってたからよかったら」
「ええそうですわね」
無一文で放り出されたので、お金を稼がないと、私は下の食堂で調理を担当することになりました。
ずっと子供のころからしてきたので手際がいいとほめられました。
デザートを出したいと女将さんが言っていたので、果物を使ったクッキーやお茶、ジュースなどを提案してみましたら、それが大当たり、食堂はいつも大忙しです。若い女性がかなり増えました。
実は庭師の手伝いをしながら、自分で家庭菜園などもしていたので…。ごはんもろくに食べさせてもらってなかったのです……。
ドレスなどは外に出るときはさすがに世間体が悪いからと用意してもらえましたが……。
貴族の娘は少食だからいいでしょうと言われ、いつもお腹すかせてましたしね。
「…愛想が悪いと聞いていたけど、そんなこともないね」
女将さんに頼まれ、ウエイトレスの真似事などもしてみましたが、愛想が悪いとか睨んでいるといわれることもなくこなせました。
やはりあの環境が私の表情を暗くしていたようです。
魔法教師の職を得た従兄のレオンとつきあうようになり、食堂も任され、別で支店も出しました。
そのころ、王妃となった妹の浪費のせいで、税金が上がり、皆から不満が漏れるようになり…。
暴動が起きて、王妃と王が処刑され、私はそんな二人の遺体を見て、こうなってしまたら愛想が悪いとか、顔が醜い等はなんの意味もないですわねとわらったのでした。
……王妃の浪費の噂を流したのは実は私です。
食堂はみなの社交の場ですから、噂を流すなんて簡単でした。
もうすぐしたらお父様の噂も流してみましょうかね……。お父様がしていた横領のことなどをね。お母様も無事ではすみませんわね。
私はにこりと笑い、「王妃様の首が落とされた、王の首も落とされた」と子供たちの歌うわらべ歌を歌ったのでありました。
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