そこに居る
Ⅰ 13月25日 -そこに居る-
いつからそこに居たのか、誕生の瞬間に気づかなかった。
ずっとそこに居るから、どう退治するのかも分からない。
それは自分を焦らせ、攻撃的にし、臆病にし、疑念を生み、怒り続ける核となる。
このやっかいな15センチほどのレイジと呼ばれる”神”を自分は腹に飼っている。
外から見たら分からないが自身は居るのを知っている。
凄まじい怒りや殺意が、真夏のアスファルトに浮かぶ陽炎のように手の平にふわりと現れないか。
その神は自分の人格の重要な位置を占め、ふとした時に自覚する。
ほら、居るよ。怒りたいだろう。周りにいるその理不尽をさぞ殴り殺したいだろうねえ。
ちょっと嫌いなアイツの眼に親指を入れてえぐりだし、手のひらを踏みつけて指をちぎり
血反吐を吐くまで腹を踏みつけて、生きたまま焼き殺してやりたいねえ。
普段は慈悲深く、善意をむねとし、真面目で勤勉、美しさを愛している人間だと自負している。
手から出るエネルギーが大きいので手を使う技術の習得が速く器用で何でも上手く熟すことができる。
神は絶えず自分を怒りと攻撃と破壊に誘うが、行動にさえ移さなければ実害はないのでバレてない。
今のところ、そう、今のところ。
今日まで、誰も殺してないなら貴方は素晴らしく理性的で、まだ死んでないなら貴方は驚くほど忍耐強い。