09 愛美、いっきまーす。
「不便なんだけど~!!」
「そう、ですね。」
井戸の整備から三日目の朝。お風呂にはシャワーがなく、しかも木製のお風呂。不便なうえに腐りそう。そんなことに今更気が付き絶望するわたしたちである。
「とりあえず、お風呂にはタイルを張って魔法でシャワーが出るようにするってどうですか?」
晴香の問いかけにため息をつきながらわたしはこう言う。
「お金さえあればね~……。」
そう、わたしたちはとある事情からお金を使いまくり(家具買ったり)、まさに金欠。
「お店を開くのはどうです?」
「いやぁ、商品がないよね。」
「ならもう一回森に入りましょうか。」
「そうだねー。」
とのことで
愛美、いっきまーす!
~森の中にて~
素材屋いわく、この森の奥地にはまだ見つかっていない魔物だってうじゃうじゃいるだろうってさ。だから森の奥地まで行ってレアな素材を持ち帰って売ろうっていう魂胆。
というわけでもう森に入って20分。
「うわっ、また出てきましたよ。このオーク。」
「よし、ここはわたしのサッカー魂を見せるところ!」
わたしはオークの目の前に一瞬で行き、天に向かってキーック!
そして決め台詞。
「汚い花火だぜ!!」
「いや、サッカー魂も何もサッカー、やってませんでしたよね。前世で。あなた。それに汚い花火って!いくら森の中とはいえ、友達に変なもの見せないでくださいよ。」
「あ、ごめーん(棒)」
「あーそうですか。」
とまぁこんな風に森を散策中。
「ていうか、わたしが晴香を背負って思いっきり飛べば普通の冒険者が行ったことないとこまでいけじゃん?」
「あ、そうですね。」
そんな厳密な会議な結果。
背負いジャンプという結論に至った。
わたしが晴香をおんぶして、指輪外してジャーンプ!
ドッカーン
わたしが地面をけった瞬間地面が削れて、大きな音が。 指輪って偉大ね。
まぁそれはそうと、そのまま飛ぶこと一分。
「はい、めちゃくちゃ奥地とーちゃーく。」
「はいどうも。」
わたしたちは取り合えず周りを見回す。
「何もいませんね。」
「うーん、そうだね。」
ホントに何もいない。静か過ぎて気持ち悪いくらい。
「魔物さーん、いーませーんかー?」
わたしが大声で言ったその言葉に、なんと応答が。
「うるさいのう。魔物ならここにいるじゃろ、ここに。」