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目指せ3日に1度の投稿。

 まず目に入ってきたのは初めてこの神域に探索者として行動を行うときに指導員として補助を受けたことがある見知った顔だった。


 臆病者とからかわれることもあるグローワであったがその彼を本当に馬鹿にするするものはこの神域の一番近い街『アーケイヴ』には居ない。馬鹿にするのは他所から来たばかりの者かどうせすぐ居なくなるような存在だ。


「グローワさん!横に飛んで!」


 彼の後ろから来ているモンスターを視認した瞬間、対処法はすぐに分かった。むしろ警戒をしていたコボルトよりも対応はしやすい。


「[正なる衝撃]!」


 狙うは正面のスケルトンソルジャー、ではなくスケルトンアーチャー。スケルトンメイジはどうとでもできる、近づかれた時の厄介さで言えば本来はソルジャーを狙いたいところではあるが今回はグローワが居ることも加味した結果だ。


 短杖から打ち出された拳ほどの大きさの白い塊は、寸前で避けたグローワを横に抜け発生した余波でスケルトンソルジャーの体勢を崩し、狙い通りスケルトンアーチャーへと直撃した。


 [正なる衝撃]の当たった場所は胸骨の部分でそのまま貫通し、スケルトンアーチャーはカラカラと乾いた音をたて崩れた。


「グローワさん、前をお願いします!」


「お前は、後で、説教だぞ!」


 走っている状態で横に飛ぶように回避を行なったため体勢を大きく崩すことになったが。グローワは背にある盾をすぐさま構え、今まさに体勢を立て直そうとするスケルトンソルジャーに体当たりを仕掛けた。


 これで前衛による壁ができた。さっきの[正なる衝撃]は運よく一撃で行動不能に持って行けた。なら今度は運が絡まない攻撃を繰り出し確実に倒す。


 ガタガタ[黒い矢]


 「[正なる障壁]」


 スケルトンメイジが持つ杖より黒い矢のような物が生み出され、自分に向けられ放たれる。しかしその鋭利な殺意が体に突き刺さるより先に、目の前に展開されたうっすらと白く光る壁によって遮られ黒い矢は霧散した。


 やっぱり、予想通りの魔術を使ってきた。攻撃魔術に対抗するための防御魔術は後から発動を行なっても展開速度が攻撃魔術より速いため間に合うことが多い。ただその理由とは別でスケルトンメイジの対処はスケルトンアーチャーより後回しにしても問題なかったのだが。


「[正なる大剣戟]」


 魔術を唱えた瞬間、虚空に大剣が生み出される。そのまま不可視の騎士に持ち上げられたの如く振り上げられ、するりと頭頂から足を通り地面まで振り下ろされた刃はスケルトンメイジを縦二つに両断した。


 3つの魔術をほぼ息継ぎなしにした対価は多大な疲労感として体にのしかかる。それも最後の[正なる大剣戟]は普段多用する衝撃に比べると3倍ほどの負担がかかる代物である。


 倦怠感が残る体に鞭を入れ残るスケルトンソルジャーに意識を向けた瞬間、カラカラと崩れる音が聞こえた。あちらの戦闘もちょうど終わったようだ。


「メイジ系統は処理を後回しにしてしまうと複数を対象にする魔術を使われると、有利な戦況が一気に不利な状況にされる可能性があるって言わなかったか?」


 大きさが三分の一ほどになってしまったボロボロの盾をまだ何かに使うつもりなのだろうか、背中に戻しながらこちらに話しかけてきた。


「えぇ、覚えてますよ。でも相手の装備品や力量をしっかりと把握することで生まれたてか熟練かを見分け、優先順位をしっかりと見極めろ。とも言われました」


 モンスターも人と同じように学習を行うことが確認できている。発生したばかりのモンスターは生まれたてとも呼ばれ、まだ経験も浅いためか身体能力的に劣る人でも簡単な罠などを使うことで対処することができる。


 しかし熟練とも言えるほど経験値を積んだモンスターは人の武具を真似し、罠を利用し人を殺す。一部のモンスターは特徴的な部分を探索者の間でも情報を共有し、倒せたものには懸賞金も出る個体も存在した。


「ふー、最初に文句を言ってすまなかった。今回は本当に助かった、街に戻ったら助力金を入金しておく。一応念のために聞くが金額に指定はあるか?」


「では一応答えておきますと、最低限の金額をいただければ問題ありません」


「だろうな、ならそれとは別にだが協会へ報告が必要だ。悪いが付き合ってもらうぞ」


「今回のスケルトンはグローワさんの失敗で中層から連れてきたんではなくて、」


「そんなヘマをするかよ、浅瀬も浅瀬で見つけたから逃げ出そうとしたんだがな。どうやらメイジの方がちょうど周辺に探知魔術を飛ばしたみたいでな。見つかって追いかけっこをしてたらお前さんに会った、というわけさ」


 話しつつもグローワは倒して残骸となった骨から何かないか探し始め、それと同時にスケルトンが持っていた杖や剣を手に取り検分をしていた。


 モンスターは生物ではない、ほとんどのモンスターは倒すと血も肉も一片も残さす時間と共に消えるが所持していた物品や稀に残す体の残骸は探索者にとっての大事な収入となった。


「それでさ、戻る前に一つ頼みたいことがあるんだが」


「なんでしょう?」


 先ほどとは違いグローワは何やら言いにくそうに話しかけてくる。どうやら戦利品に探し物はなかったようだ。手に取っているのはメイジが使っていた杖と何本かの白い骨だった。


「逃げる時に投げ出したナタを回収したい。ここから街に戻るまで協力しないか?」


読了感謝いたします。

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