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「つまり君らは今回のことは偶発的な遭遇であって、あくまで被害者の立場だと言うのだね?」


 その部屋には窓がないためか薄暗い、天井から吊るされた灯りとなる魔道具が中にいる4人を手元がほのかに見る事ができる程度に照らしていた。

 岩のように厳しい顔を持ってこちらへ質問をしてくるのは協会の実質の管理を行なっているというもっぱらの噂をされている副協会支部長のガンデイだ。


「そして偶然にも黒の魔術に対処することができ、危険人物の無力化をした後に連れてきた」


 ガンデイは元探索者であり、実力も上から四番目である『剣』に位置する位置まで到達した上位者だ。

 

「なんともまぁ都合のいい偶然だな『聖女』に『不運』?」


「えぇ本当に。これも女神様のお導きです」


「全くもってその通り」


 皮肉をわかっていながら軽口で返されたからか、ガンデイの傷だらけで頑強な顔は大人でも恐怖を感じるほどに怒りを表していた。


 まぁ私たちには見慣れた光景であるので血管が切れないかな?大丈夫かな?なんて思うほどには余裕であったが。


 ガンデイはふぅ、と深いため息を吐くことで怒りを押し殺すことに成功したようで、落ち着いた声で話を進める。先ほどの取り繕った言い方ではなく普段のぶっきらぼうな言い方に変わったのは無駄だと感じたのか。


「不運であるお前はまだわかる。わかりたくはないがこういった突発的な出来事にはいない方が珍しいくらいだからな」


「嬉しくないが、そりゃどうも」


「しかし、」


 ちらりとこちらに胡乱な目を向けてくるガンデイ。


「私は珍しい。でしょ?」


 そう、普段の私であれば報告だけ済ませ調査といったものは全て協会任せ。

暴走を起こした原因の解決費用といったものを協会に請求し、さっさと関わらないようにいなくなるのだが。


「ヤツはとりあえず地下牢にぶち込んでる。服はこっちじゃ見ないやつだったが首に消費奴隷の契約の痕を確認した。すぐさま奴隷管理官へ確認を行ったが、」


「契約盤には見つからなかったのではないです?」


「……オイ、何か知っているなら早めに吐けよ」


 ちょっと焦らしすぎたかな、ガンデイの雰囲気が怒りや不信感といったものから敵愾心に変わっている気がする。あまりお偉いさんの反感を買うのも良いことではないし、そろそろ交渉と行くか。


「彼の着ている服に見覚えがあります。」


 部屋に妙な緊張が生まれる。それほどにあの服はこちらでは異質なのだ。


「それと、もし彼が話す言葉が通じなければ私の考えと完全に一致しますね。」


「言葉がというのはどういう意味だ?まさかモンスターとでも言うんじゃないだろうな」


「伝えるのが難しいのですが、私の予想が正しければ。彼は[真言]で話しますよ」


 ガンデイの目が大きく見開かれる。まるで子供の頃に空想で語られていた存在が実在したと言われたかのように。


「有り得ない」


 彼にしては珍しく落ち着かない小さな声であった。ここまで動揺した姿を見るのは初めてでちょっと新鮮だ。


「私も彼が話す言葉が[真言]でなければ私も良いな、と思ってます」


「それは、聖女としての言葉か。それとも貴族としての言葉か」


「どうとでも取って頂いても構いませんよ?あくまで服装からの推測ですので外れる可能性もゼロでは有りません。もちろん、」


「わざわざ言ったからには確証があると言うことか」


 詰襟に黒髪、胸には校章まで付いていたんだ見間違えることはない。


 話す言葉はよっぽど年代がおかしくない限りは[真言]を彼は口にするだろう。


 そう、この世界では[真言]と呼ばれる現代の日本語を。

生存報告を兼ねた更新です。

ゴタゴタが収まりだしたので、またぼちぼちと更新していきます

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