どうしたものかねぇ…
二話目れすれす〜
真性のドジっ娘ことネメアちゃんの為に作られたギルド内ルールに戦慄しつつ、とりあえずまだ聞くべき事があるので思考に耽っているネメアちゃんの意識を戻すことにする。
「ネメアちゃん、それについては後にしてもらえるかな?おじさんお金ないから早めにルールを覚えておきたいんだよねぇ」
「あ、はい。では次に…」
再びペラペラと紙を捲り手を止める。
「えーと、依頼の受け方は私から見て右手にある三つの掲示板に貼ってあります。右から採取、討伐、雑用となってます」
「分けてあるのは嬉しいねぇ」
「じゃないと同じ所に複数集まって掲示板を見る所じゃなくなりますからね」
非常にありがたいんだよねぇ、おじさん力ないから押し合いながら依頼なんて見るなんて出来ないからねぇ。
「えーと、受けたい依頼があれば、私達受付嬢の元に掲示板に貼ってある紙を持ってきてくれれば受理されます」
「因みに、誰が受けたか分からなくなったり混ざったりしないのかな?」
「大丈夫です、書類はめちゃくちゃには良くしますが管理については私結構できるので!あと誰が受けたかについては依頼書にサインをしてもらった後冒険者さんごとに分けて地下室に保管してますので問題なしです!」
それはそれはネメアちゃんにも出来ることがあっておじさんは安心したんだよねぇ。
保管についても問題なしと…結構しっかりしてるんだねぇ。
「なるほどねぇ…」
「因みに契約内容ですが、これは依頼書にも書いてありますが万が一怪我や死亡されたとしてもギルド及び依頼者には一切関与しません」
「実力もないのに勝手にやったのにそれの責任を取れなんて馬鹿話もないからねぇ…」
「そうなんですけど…ホント多いんですよねぇ…やれ怪我をしたから責任を取れだのやれ動けなくなった俺の代わりに奉仕しろだの…嫌になっちゃいますよ」
「まあそういうクレーマーも含めて受付が頑張らないとだからねぇ…」
「クレーマー?」
何のことを言ってるのか分からなそうな顔で首を傾げるネメアちゃん、クレーマーって言葉はこっちにはなかったんだねぇ、デメリットは分かってるのに…よく分からないねぇ。
「…なんて言うのかな。迷惑を考えずにイチャモンをつける人…とでも言えばいいのかな…」
「おお、素晴らしい言葉です。今度から面倒くさい人にはこのクレーマー野郎って罵っときます」
「それはやめといた方がいいと思うなぁ…」
クレーマーを煽ると本当に面倒臭いことになりかねないからねぇ…
「まあ、とりあえず続きを頼むねぇ」
「はい、契約の破棄とデメリットについてですが…破棄には特に罰などはないです」
「ふむ…」
「ただし、何度も契約を破棄する人にはそれ相応の罰が与えられます」
「それどんなのかなぁ?」
「そうですね…軽くて数ヶ月の依頼を禁止…最悪でブラックリストに登録された後永久的なギルドの利用を禁止ですね」
「なるほどねぇ…」
まあ妥当なんじゃないかな?何度も依頼を破棄するってただのおバカさんでしかないし、その依頼によっては受けた後被害をこうむってしまう人達もいるはず…例えば討伐系に護衛の依頼があって、魔物が手に負えなくなって途中で逃げ出して依頼者が死亡するとか。
余程の理由、例えば明らかにそこに存在しないであろう強力な魔物が出現、実力的には問題なかったが尋常でない数に襲われた場合。
地球でいえば、絶滅したはずの恐竜が100を超える群れで襲来したみたいな状況。
そういうのであれば仕方がないが、どんなに運が悪く失敗であったとしても、そもそも破棄が複数回も起こり得るとも思えないのでやはり実力不足なのだろうねぇ。
「まあでもあれだね…若い子は冒険しがちだからねぇ…」
「おっしゃる通り、基本的にそういう行為を行うのは若く冒険者になりたての方がなりやすいです。まあ大半は1度失敗したら考えを改めるんですけどね…」
「まぁ理想と現実の違いだね」
「ですね」
おじさん達、ギルマスも含めて三人はうんうんとそれはもう深く頷きあった。
「しかしあれですね?」
「うん?」
「レオナさんはそういう事考えなかったんですか?あ、いえ深い意味はありませんよ?あまり興味がなさそうなので…」
「まぁねぇ…おじさんは自分が弱いってのをよく知ってるからねぇ…それにもう38だよ?今から最強とか目指しても遅すぎるかなぁ…」
「へぇ…自分のことがよくわかってるんですね。それに38だったんですねぇ意外です」
「そうかな?おじさんは割と相応な歳だと思うけど…」
「いえ、自分のことをおじさんと呼んでいたので40過ぎてるかと思いましたよ」
「あー、まあ確かにおじさんって40過ぎてからのことを示すからねぇ…まあ四捨五入すれば40だからあんまり違わないと思うけどね」
二年なんておじさんからしてみればもうすぐそこって感じだからねぇ…年寄り臭いかなぁ?
「まあおじさんは相応なお金さえ貰っておけば満足なんだよねぇ」
「おじさん臭いですね〜」
「まあおじさんだからねぇ」
「「ははははは」」
しかしこの娘今の所ドジらしいドジをしていないよねぇ?
そう思っていた時期がおじさんにもありました。
気が緩んだのか分厚い本を下に戻そうとして手を滑らせそのまま…
「ひにゃあ!?」
「あちゃぁ…」
アレ、どこに落ちたんだろうねぇ、あの痛がり方は多分足に落ちたねぇ。
「ったく、珍しくドジしねえと思ったら…大丈夫か?」
「だ、だいじょばないです…めちゃくちゃ痛いです…足の指先にダイレクトに落ちました…」
「それは…痛いねぇ…」
…骨とかいっちゃってるんじゃないのかなぁ?おじさんに起きたことじゃないのに足先がムズムズするよ…
「うぅ…やっぱり私はこうなんです…どうせやらかさないと気が済まない体質なんです…」
「うんうんよしよし…痛くない痛くない大丈夫だよぉ」
その余りの悲しい性を背負ったネメアちゃんが可哀想すぎてついつい撫でてしまう。
「私もう大人なのでそういう事をされると…その…困っちゃいます…」
「ありゃ、ごめんねぇついついミレアちゃんと同じように撫でてしまったよ」
「いえ…まぁ…ありがとうございます…」
あはは…顔を赤くしちゃったねぇ、まあ確かにその年なら恥ずかしいよねぇ。
いやぁ、おじさんからしたら見た目中学生も22歳もあんまり変わらないからねぇ。
「まあとりあえず依頼を見てくるねぇ」
「あ、はいお待ちしてます」
さて、何の依頼を受けようかねぇ…おじさんとしてはやっぱり採取か雑用なんだよねぇ…討伐は金額は他のより高いけどおじさんには無理そうかなぁ。
そんなことを考えている最中にミレアちゃんがボソリと一言だけつぶやく。
「誑し…」
「ん?」
「なんでもない…」
ふむ、なんでもないなら無理に聞く必要もないねぇ、不穏な言葉を聞いたような気もするけど…聞いてはいけないっておじさんの中の何かが言ってるから聞くことは出来ないんだよねぇ。
まあ、今はそれよりも今日の宿泊費を稼がなきゃ行けないんだよねぇ…
さてさて、どうしたものかねぇ…
一方、先程までおじさんがいたギルドカウンターでネメアはぼーっとしていた。
「おいネメア」
「え?どうしたんですかギルマス」
「気になるもんでもあんのか?」
「え、いえ別に?」
ギルマスがネメアの普段との違う行動に不思議そうに見てそう問うたがネメアはいつもの感じで答える。
「そうか?ずっと同じところ見てた気がするが…」
「え、そうでしたか…?」
「おいおい、自分で気づいてなかったのかよ」
「はい、もしそうなら完全に無意識ですね」
そういったネメアを見てどうもそうじゃないと感が告げているギルマスは…先程までネメアが視線を送っていた先を見た。
そして気づく…
「ああ、なるほどな…」
「どうしました?」
「いや、なんでも」
「えー私にも教えてくださいよ」
「いや、オメエが勝手に気づきやがれ」
「なんですか…それ」
やや不満そうな顔をしているがしかし、ギルマスは答えることは無い。
そもそもこれは自身が気づかなければいけない問題であり他人から得るものでは無いからだ。
「ま、頑張れや」
そう言い残しギルマスはその場から離れていく。
「なんなんですか…本当に」
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