幸せ者だねぇ
「ここが冒険者ギルドよ」
そうこうしているうちに冒険者ギルドに着いたらしい、街の中央付近に堅牢そうな白い建物が聳え立っている。
「随分と立派な建物だねぇ…」
これは避難所としての用途もありそうだねぇ。
おっといけないおじさんの悪い癖が出てしまった。
ついついこういうのを見るとその用途について推測を建てようとしてしまうんだよねぇ。
「本部はもっと大きいわよ、見ることしか出来なかったけどあれは最早ちょっとした城ね」
「寧ろ普通に城…」
「壮観だったよね〜」
「それはいずれ見に行ってみたいねぇ」
「レオナ…いつか…連れてって…」
「そうだねぇ」
城っていうぐらいだから相当大きそうだよねぇ。
「まあ、そんなことよりさっさと登録してしまいましょ」
「おじさんそういう事詳しくないから教えてくれると助かっちゃうなぁ」
「簡単よ、ギルドカードを受付の人から貰って横を撫でるだけ」
「それはお手軽だねぇ」
「まぁね、因みにギルドカードっていうのはこれね」
ほほぉ、運転免許証みたいな感じだねぇ…証明写真はないけれど。
しかしなんというか…
「大きさの割に空欄が多いねぇ?」
「念じれば任意で消して表示できるからね」
「そんなことまでできるんだねぇ」
「ええ、基本的に名前と年齢とランクだけ表示しておけば身分証代わりになるわ、因みにその行為ができるのは本人だけ」
「なるほどねぇ…指を切り落としたりしてっていうのは出来なさそうだねぇ」
「何恐ろしいこと言ってるの…絶対やらないでよね…」
「おじさんバイオレンスだね〜」
「実は殺ってる…?」
「いやぁ、もし出来ちゃったら結構危険じゃないかなっておじさん思ってねぇ」
「まぁ無理でしょうね、本人が念じなければいけないわけだから指だけあっても意味ないわ」
「そうだよねぇ」
早速受付の人からギルドカード貰って、カードの横を撫でる。
するとカードには色々な情報が現れる、名前、年齢は勿論、血液型や得意な魔法属性…あと恋人の人数。
んー?
「どうしたの?」
「いやぁ、おじさんの見間違いかなぁ?恋人の人数ってところが二人って出てるんだけど…」
「あー、カードにはそう認識されたのねぇ…」
「やっぱり、そういうことだよねぇ?」
「間違いないわね…シオンちゃんとミレアちゃんの事でしょうね」
恋人にした覚えは一切無いんだけどねえ…これは一体どう言う基準で付けられてるんだろうか?一定以上お互いを好意を抱いていることとかなのかねぇ?
「おじさんがロリコン呼ばわりされる日は近そうだねぇ…とほほ」
「まあまあおじさん元気だしなよ〜!若い女の子からモテてるって事はまだ現役ってことだよ〜!ね〜ロリコンおじさん?」
「ロリコンおじさん頑張って…」
「ロリコンおじさんって余計にやばい人に聞こえちゃってるよねぇ…」
能天気なシャリーちゃんに他人事なフィオちゃんの優しくも辛辣な言葉がおじさんのガラスハートに突き刺さって粉々だよ…
「もう二人共からかい過ぎです、レオナさんが立ち直れなくなってしまいますよ?」
「リゼちゃんは三人の中で唯一の良心的存在だねぇ…心が癒されるよ」
「街に入る時の…出来事を…思い出して…」
「リゼちゃんも辛辣担当だったんだねぇ…」
「え?あ、いえ、あの時はつい口が滑ってしまったというか冗談のつもりで…」
いやぁ、リゼちゃんは真面目だなぁ。おじさんはこれぐらいじゃ傷つきませんよ?
「あ、からかいましたね…」
「いやぁ、なんの事だか分からないねぇ」
「リゼちゃん可愛い〜」
「流石私達のお母さん…」
「誰がお母さんですか!」
「リゼママさんだったんだねぇ」
「レオナさん?!」
いやはや、見てておじさんほっこりしちゃうねぇ…
おっと、ギルドカードの表示変えておかなきゃねぇ。おじさんうっかり忘れちゃうところだったよ。
まぁおじさんのプロフィールなんて見た所で誰も得しないだろうけどねぇ。
「そういえばおじさんお金無いって言ってたけど泊まるとこあるの〜?」
「あー…おじさんすっかり忘れてたよねぇ、今から依頼を受けても夜になっちゃいそうだしねぇ…」
「私達の家来る…?」
「そのお誘いは非常に助かるけど、女の子ばっかりの家におじさんが行くのはどうなのかねぇ」
「問題ないわ、別に襲いに来たりしないでしょ?」
「おじさんはそんな野獣みたいな行動はしないねぇ」
「でしょ?ただ、ベッドはないからソファーで寝てもらうことになるけど…それでも良いなら」
「寧ろソファー借りられるだけでもありがたいぐらいだねぇ」
ソファーって実質ベッドだよねぇ?頭置きと敷布団更には足置き付きっていう高級ベッドにも勝るとも劣らない性能を持ってるとおじさんは思ってるんだよねぇ。
「そう?なら問題ないわね」
「んー、そうだおじさん料理得意だから泊まる代わりに何か美味しいもの作ってあげるねぇ」
「それは楽しみね」
「いや〜楽しみだね〜ローストビーフだって〜」
「出来なくはないねぇ…ただ時間がかかる上にそもそも食材あるのかな?」
「ないね〜」
「流石におじさん無からは料理は作れないからねぇ」
「男飯…?」
「食べ切れるなら作ってもいいけどねぇ」
「気合いで…」
「料理は気合いで食べるものじゃあないよねぇ…」
「残念…」
まあどんな食材があるのかは分からないけれど、夜食べるならそうだねぇ。
サラダは確定として、魚とかあれば塩焼きでふっくら焼き上げるのもいいねぇ…でもこの時代に冷蔵庫とかなさそう…いや何があっても不思議じゃない場所だったねぇ。
うんあったねぇ冷蔵庫。キッチンもガスコンロもあるねぇ…流石にI○じゃあなかったねぇ。
さてさて、お宅の冷蔵庫は何があるのかねぇ?
ふむふむ…お、これは…なるほどねぇ。
それにこれは…ほほぅ。おじさんにあれを作れと言っているんだね?
まずはこれを千切りにして、ボールに移すそしたらこれを割って中身を入れて、これも投入する。
ちゃんと描き混ざったのを確認した熱したフライパンの上に小皿サイズの量を投入して上にこれを並べる、後は焼き色が着くまで放置。
焼き色が着けばひっくり返して生焼けに気をつけながら軽く焼き目をつければ。
あとはお皿に盛り付けて、これとこれをまぶして。
完成!
おじさん特製の異世界風お好み焼きが出来ましたぁ。
「これが多すぎる…気がする…分かりにくい…」
「おじさんが分かればいいんだよねぇ。それにキャベツだと思って千切りにしたけど、こっちでの名前はレタスって言うかもしれないからねぇ…」
「鰹節も…もしかしたら…鮪節かもしれない…?」
「そういう事だねぇ」
「納得した…」
早速テーブルに運んでいると匂いに釣られて三人とも既にリビングに現れていた。
やっぱりこの匂いは抗えない何かを感じるよねぇ?
おじさんもお腹ぺこぺこだよねぇ。
「この料理の名前は何?凄く美味しそうな匂いがするわ」
「この料理はお好み焼きっていうんだよねぇ?色々具材を入れたりしてアレンジできちゃうのに作るのは至って簡単な最強飯なんだよねぇ」
海鮮風お好み焼きとか、餅を入れてみたりとか結構やってみると楽しいんだよねぇ。
「おじさんやるね〜、シャリーちゃんの胃袋はもう食べる前から掴まれちゃったよ〜」
「おじさんの得意料理の一つだからね〜」
あとはパスタ系もおじさんは得意なんだよねぇ。
「お腹空いた…」
「じゃあ早速いただきますかねぇ」
「「「「いただきます」」」」
んー、美味しいねぇ…見事な焼き具合、表面のカリッとした食感に中のふわふわな生地。それに鰹節と青海苔もバッチリあってるし、お好みでかけたマヨネーズとソースも味を引き出しているねぇ。
「「「「美味しい!」」」」
みんなにも好評みたいだねぇ、よかったよかった。
おじさんが料理が得意な理由の一つはこういう幸せそうな笑顔を見るのが好きって言うのもあったりするんだよねぇ。
さて、おじさんは少し外に出て一服しようかねぇ。
日がもうほとんど落ちて空が夕焼けに染まるこの時間、おじさんは結構好きなんだよねぇ。
リビングからベランダに出ようとするとミレアちゃんも着いてきた。
おじさんが縁側に腰をかけるとその後ろから抱きついてくる。
「お好み焼き美味しかったかねぇ?」
「美味しかった…今度は何を作るの…?」
「ふぅ…そうだねぇ…時間があればシャリーちゃんが言ってたローストビーフを作ってもいいかもねぇ…」
「それも…美味しい…?」
「おじさんの作る料理は全部美味しいと思うんだよねぇ」
「じゃあ…期待してる…」
「なら期待に応えられるように頑張らないとねぇ」
日が完全に落ちちゃったねぇ。
「…怪我…大丈夫…?」
「これぐらいは怪我じゃないんだよねぇ」
「まだ…頬が腫れてる…」
「ふぅ…内出血しちゃってるのかもねぇ」
不意に後ろからミレアちゃんは頬を触ってくる。何かするのかなぁ?
「『癒』…治した…」
「はは、ミレアちゃんありがとうねぇ」
「ん…」
よしよし、どうやら心配かけちゃったみたいだねぇ。表情は相変わらずだけど、ミレアちゃんは優しいねぇ。おじさんは幸せ者だねぇ。
一方、その状況をリビングからその状況を見ている3人組がいた。
「いや〜、おじさんとミレアちゃんは仲良しですね〜ただならぬ関係をシャリーちゃんは感じますよ〜」
「おしどり夫婦…」
「本当に仲良しよね」
「やっぱりおじさんはロリコンなんですかね〜?」
おじさんにとって大変不名誉なことを言われながら…
まあ最もその肝心のおじさんは夜空とタバコに夢中で全くもって聞こえていないのだった。
うう…考えすぎて眠れない日々が…