なんとも言えないねぇ…
いやぁ、おじさん弱いの忘れてたよねぇ…ついついカッとしちゃって止めに行ったのはいいけど、思いっきりぶん殴られて壁にぶつかっちゃったよ…いてて。
「ちっ…雑魚がしゃしゃり出てくんじゃねぇよ…興が冷めちまった…ぺっ」
うへぇ、唾も吐きかけられちゃったよ…汚いなぁ。
まぁでも最悪の事態は避けられたようで何よりかなぁ?
「あ、あのありがとうございます!」
「いやぁ、気にしなくていいよおじさんが勝手にやった事だからねぇ」
「そ、それでも…」
「あはは、まぁどういたしましてだねぇ…いてて」
「あ、怪我を…医療箱持ってきます!」
「いや、これぐらいは…って行っちゃったねぇ」
赤くなってるぐらいでそこまで大した傷ではないんだけれどねぇ…
「おう、お前さん助かったぜ?」
「いやぁ申し訳ないねぇ、テーブルと椅子が幾つか壊れてしまったよ」
「んなもん後で買い替えりゃいいんだよ」
「確かに、まぁおじさん無一文だから払えないんだけどねぇ」
「それこそ気にすんな、こっちは娘守ってもらってんだ金なんか取るかよ」
それを聞いて安心したんだよねぇ。というかあの子娘さんだったんだねぇ…
「似てないねぇ」
「うるせぇよ…」
よっこらせっと…もう珈琲は冷めちゃってるよねぇ。
そんなことを考えてるとマスターさんが小声で声をかけてくる。
「で、さっきのはわざとだろ?」
「おじさんには避けられなかっただけだよ」
「あの時避けてたら更に被害が増えると思ったからだろう?」
「あっはっは、買い被りすぎだねぇ」
「そうかい…まあ、そういうことにしておくかサービスでサンドイッチ作ってやる」
「それは嬉しいねぇ」
服に着いた木片やらをぱぱっと払って元の席に戻り珈琲を口にする。んー、やっぱり熱い方が美味しいよねぇ。
「なに、何事も無かったかのように珈琲飲んでるのよ…大丈夫なの?」
「大した怪我もしてないからねぇ、別におじさんはなんともないよ」
「いや〜それにしてもおじさんのさっきの動きめちゃくちゃ早かったですね〜身体強化魔法でも使ったんですか〜?」
「おじさん魔法はからっきしだからそんなことは出来ないんだよねぇ、火事場の馬鹿力って奴さ」
「違うと思う…」
「あっはっは、あれ?」
まあ、そんな会話をしながらマスター特製サンドイッチを味わう。
うん、野菜とはむの組み合わせは最高だねぇ。マヨネーズもこの世界にあるんだねぇ、ちょうどいい塩梅でベリーグッド。
ちょうど食べ終わったタイミングで明らかに重そうなトランクを持ってくるマスターの娘ちゃん。一体この程度の事に何をする気なんだろうねぇ…手術するのかな?ゴソゴソと漁ってるけどまさかメスなんて入ってないよね?
「ありました!」
メスが?メスが見つかっちゃったのかな?おじさんの顔に切り込みに来るのかな?そうなると余計顔が包帯でぐるぐる巻きにされちゃいそうだけど?
「はいどうぞ!」
「おや、これは…」
湿布…あるんだねぇ。いや、異世界だからないって思ってたのが間違いなのかな?おじさんはファンタジー脳になっちゃっていたんだねぇ。
ともかくありがたく湿布を貰う。
「ありがとうねぇ、えっと…」
そういえばマスターの娘ちゃんというのはさっき知ったけど名前は聞いてなかったねぇ。
「シオンです!えっと、お兄…さん?のお名前は?」
「あっはっは、おじさんでいいよ。おじさんは玲於奈って言うんだよねぇ、ありがとうねぇシオンちゃん」
「いえ、まだ足りません。私、レオナさんのお願いならなんでも聞きます!」
ん?今何でもって言ったかなぁ?
「あっはっは、おじさんにそんなこと言っちゃっていいのかなぁ?襲われちゃうかもよ?」
「是非襲ってください!」
頬を赤らめてはにかみながら言い切ったねぇ…流石のおじさんでもその返答は予想してなかったなぁ…
「あは、あはは…そう言われちゃうとおじさん困っちゃうなぁ…」
「こーらシオン、レオナさんを困らせないの」
「あぅ…では今度デートに行きましょう!」
「んー、まぁそれなら…」
マスターをちらっと…OK?そこは止めるべきじゃないかなぁ?
おじさんと若い女の子がデートって結構危ないと思うんだけれど?もし地球だったら援助交際疑われちゃうレベルな行為だと思うんだよねぇ?
あと何その遠い目…奥さんと何かあったのかなぁ?
「大丈夫みたいだねぇ、予定は次ここに来た時に…」
「はい、身体を清めておきます!」
「すぐ、そっちの方向に行っちゃだめだとおじさんは思うんだよねぇ…」
「嫌…ですか?」
うーん、今おじさんは非常に知恵袋を使いたい気分だねぇ…
おじさんと女の子のフラグを相手を傷つけることなく回避するにはどうすればいいですか?って是非とも質問したいところだよ…
多分帰ってくる返答はリア充爆発しろ!だとは思うんだけどねぇ。
「おじさんは嫌じゃないけど、こういうのはほらお互いをよく知ってからの方がいいと思うんだよねぇ」
「なるほど、確かに!」
「うんうん、だからもう少し抑えめで行こうか?」
「分かりました、楽しみにしてます!」
うん、これ以外に傷つけずに言うセリフをおじさんは知らなかったよ…本当に参ったねぇ。
「じゃあおじさん達はこれから用事があるからまたねシオンちゃん」
「はい、お待ちしております」
うん、本当に…本当に綺麗な笑顔だよねぇ。
あはは、おじさんどうしよう…
そんなことを考えながら店を出て、先程の出来事を考えるため一服する。
ミレアちゃんを再び背負いながら…そこが固定ポジションにでもなったのかな?
「側室候補…確保…?」
「ミレアちゃん、色々突っ込みたい所があるんだけど…」
「こんな所で…突っ込むなんて…」
「いやそっちじゃあないんだよねぇ」
「わざと…勿論知ってた…」
「心臓に良くないんだよねぇ…それはさておいてシオンちゃんがいつ側室候補になったのかな?そもそも本妻はどちら様なのかなぁ?」
「候補に…なったのは…ついさっき…本妻は…勿論私…」
どっちも可笑しいんだよねぇ?おじさんはロリコンじゃあないんだけど…まだ十代の子と十代にしか見えない子を娶る気はないんだよねぇ。
それに妻って複数いても大丈夫なのかな?
異世界ものの定番とはいえおじさんは複数囲える程甲斐性があるとは思っていないんだよねぇ。
「大丈夫…問題ない…これぐらいの歳で…結婚は…普通…年の差婚も…よくある…あと…ここは…一夫多妻も…その逆も…多夫多妻も…OK…」
「本当に色々常識が違うねぇ…」
いやぁ、おじさん自分で言うのもなんだけど押しには弱いからねぇ…養えるだけのお金ないのに。
「おじさん良かったですね〜可愛い女の子にあんなに好意寄せられるなんて守ったかいがありましたね〜」
「こら、シャリー。レオナさんが打算ありで助けたみたいに聞こえますよ」
「ごめんなさ〜い。でもでもアレですよね、あのシチュエーションは明らかに姫を助ける王子様ですよね〜!」
「ぶっ飛ばされてたけど…?」
「そこは乙女フィルターで上手く書き換えてるんですよ〜」
「まあシオンは昔からこうと決めたら一直線だからレオナさんの為に色々頑張るでしょうね」
うーん…いやぁ参っちゃうねぇ…おじさんはただ助けただけなんだけどねぇ。
チョロインさんだったのかな?
「因みにおじさん以外を好きになる可能性は?」
「ノー…」
「ないわね」
「ないですね〜」
「ないと思う…」
オールパーフェクトでないのかぁ。
ふふふ…おじさんはもう考えない。
「未来のおじさん選択は君に任せた…おじさんは今を生きるんだよねぇ」
「「「「逃げた…」」」」
これは逃げじゃなくて戦術的撤退なんだよねぇ。あんまり意味の無い行為だとはわかっているけどねぇ。
ふぅ…一服終了。
「何をするにしてもまずは冒険者ギルドに行こうか、おじさんはお金も無ければ家もないのに結婚も何もないからねぇ」
「そうね、結婚式の費用とか花嫁のドレス費とか結納金とかあとは何かしら?」
「結婚する前のデート費用とかプレゼント用の費用もですね〜」
「結婚指輪とか…」
「君達はノリノリだねぇ…」
女の子は恋愛話とか本当に好きだよねぇ。やっぱり恋とかに憧れがあるからなのかねぇ。
いやはや、おじさんにはその手の話はついていけないよねぇ。
最もその話がおじさんとシオンちゃんについての話だから無関係とは言えないところがなんとも言えないねぇ…
へっへっへ…ストックができたので本日は15時と19時にもう2つ更新します