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49 突撃ガーディアン!


うっすらと闇が蠢く地下ドーム。そこで奏でられるパイプオルガンの音色は、まるでここに辿り着いた戦士達に贈る賛美歌でありそして葬送曲のようだ・・・


そして機械的なアナウンスはロボット兵器、ガーディアンの存在を知らしめす。


初めてドロシーと出会った時から聞かされていたあのガーディアンは、ついにその姿を表すのであった。


────


ガーディアンは「起動」を合図に全身に彫り込まれた模様から緑の光を発すると、各関節が切れ目となり徐々に変形を始めた。


一つ一つの動作はプログラムされたように精密に素早く、ガシャン、ガシャン、ガシャン・・・と音を立て形を変え、時折キュィィン!とボルトが高速で締められる音が混ざる。


変形速度は徐々に増してゆき、次々と腕や脚、頭部が形作られ、形成された各部位の隙間から高圧の蒸気が吹き出した。


熱い蒸気は次第に増し、距離を取るボクにも伝わりお顔がチリチリと焼けるのが分かる。

そんな荒れ狂う蒸気の中、うっすらと見え隠れするガーディアンのプレッシャーは未だかつて感じた事無いほどだった。


へへへっ・・・凄い迫力だネ。あの合体変身コウモリ魔獣が可愛いレベルだよ!全く!


生唾をのみ、チビるのを堪えて余裕振っていると、蒸気が晴れガーディアンは遂にその姿を現したのだった!



それは意外にも小ぶりの胴体、手脚もそれ程長くない。その代わりに頭部は大きい、いわゆる低頭身だ。右手はなく、変わりに反り返った大剣と一体化した腕があり、左手の手甲には五本の爪。あれは絶対飛んでくね!と確信させられるような構造をしている。背中には改造バイクによくある直管マフラーが二本。ブシューッ!!と蒸気を排出している。

お顔はだいぶ怖いよ。カブトムシのような角とギリシャ彫刻のような表情のない仮面を着け、目には緑色光を溜め込んでいる。


「SDタイプですね・・・」と穂積が呟いた。


ふーん。よく分からないけど、つまりデカいのにチビに見えてるって事だなよな。頑丈そうだけど、脚が短いから動きが鈍そうだよ。

どんな凄いのが出でくるかと思ったけど愛嬌がある奴で取り敢えずは良かった。まぁ、ラスボス的な奴だから絶対ヤバいけどね・・・


ブルンッ!ブルンッ!ブルンッッ!!


姿を表したガーディアンからバイクのアクセルを吹かすような音が聞こえる。


「先輩!来ますよ!!」


「うん!分かってるっ!」


空気がビリビリと振動し伝わる戦闘の合図。


だけれど・・・ボクは分かってなかった・・・


ブロロォォォォォーーン!!


なんとガーディアンは足の裏に格納されたタイヤを使って地面を滑るように素早く突進してきたのだ!


「ええっ?何で?」


ボクはあまりの素早い突進にビックリキョトンとしていると、ガーディアンは大剣を振り上げあっという間にボクを捉えた!


ブォンッ!


右手と一体化した大剣での横一閃は、さっきまでボクがいたところを通り過ぎていった!その威力は後方へ離脱したボクの前髪がブワッとなびくほどだ。


「タイヤ付きなんてズルいぞ!ロボットならのっしのっし歩くだろ!」


ボクがビシっと指を指し真っ当なクレームを入れていると、意外にも敵は身内にいた。


「先輩!ズルくはありません!最近のロボットはタイヤやホバー移動は当たり前ですよ!」


えー!そうなの?最近の男の子の文化は進んでいるんだね!じゃあ、仕方が無いか。


ん?何だか余裕ありそうだって?


うん。コレが実際余裕なんだよね。ガーディアンの仰々しい登場にビビったけど、タイヤ移動とは言え動きが遅いのなんの。

確かに自動車位の速さはあるよ。繰り出される横なぎ一閃は凄まじパワーだよ。でもね、直近でやり合った狼王に比べたらもうカメさんだよ。ひょこひょこカメさん。

なんたって狼王は目の前で消えるレベルだからね。


って言ってるそばからほら、上段!来るよー!


ドガズジャンッ!!


地面を割る派手な一撃をボクは横にステップして難なく躱した。


その直後!


バシュン!!


背後から銃声が聞こえる!


穂積の弾丸がガーディアンの胴体に命中した。


ガギンッ!


しかし、ガーディアンはダメージを受けない!


「先輩!やっぱり固いです。たぶん僕の攻撃はとおりません!」


目をつぶっても狙える位大きいガーディアンは、その外見通り防御力だけは、半端なかったのだ。


でもまぁ、ここまでは予想通りだよ!


穂積の不意の一撃を受けたガーディアンは一瞬硬直し、ボクへの注意を解き穂積へ向けた!


いまだ!隙あり!


ロボット脚に魔力を込め爆走したボクは、ガーディアンの懐に飛び込んだ!

大剣を振り落としたままのガーディアンに、再び構える隙を与えること無く、懐に潜り込んだボクは、自分の頭位の高さにある土手っ腹に、ロボット脚の噴射を利用した必殺の蹴りをお見舞した!!


ゴォォヴン!


重い衝撃がボクの体内でズシンと響くほどの手応えのある一撃だったが、やはりそこはガーディアン。装甲は堅牢で、わすがに凹む程度のダメージしか与えられなかった。


ブロォォロ!!


それでもガーディアンは懐に飛び込まれる事が不利だと認識したのか、エンジン全開でバックダッシュを開始。一気に距離を取り、左手の手甲をボクに向けた!!


あっ!あれ、ヤバいヤツかも!!


パシューーーン!


ガーディアンの手甲から発射されたとてつもない速さで迫り来るミサイルは、煙の尾を引き一直線にボクに向かってくた。

ミサイルの丸い弾頭が認識出来るくらい冷静に見極めると、足を踏ん張りシールドをローマ兵のように地面に押さえつけ防御体勢にはいった!!


ボカンッ!!


ミサイルがシールドに着弾!爆発した!


うっひゃー!!


ボクはその衝撃に耐えきれず、ころりと転がされたけど、ロボット脚にすぐに魔力を込めるとボクの意志に関係なく自動的に無理矢理立たせてくれる。


やれやれ白波の腕輪がパイルバンカーモードだったら間に合わないタイミングだったよ!手甲のミサイルは何となく予想はしてたけど、実際、選択を間違えたら死ぬってちょっとこわいよね。


しかもこの威力、狼王のイバラの比じゃないね。正真正銘ミサイルだよ。ミサイル初体験だよ!


おっかない・・・


────


一方こちらは難しい顔をしている穂積。威力偵察のつもりで放った無属性弾はいとも容易く弾かれ全くダメージを与えることは出来なかった。

恐らくは高出力の一撃なら多少は期待できるが、その後の事を考えれば分が悪すぎる。精霊弾も1発のみ。通販や秋葉原で仕入れた道具もロボット相手には通用しないだろうという事は嫌でもわかる。


「これは不味いですね・・・」


手立てが思いつかない穂積は、前衛が思いのほか持ち堪えている機を見て、自分のステータスを一度確認することにした。



名前 穂積 圭介

Lv17→21

職業 見習い ガンナー

力・・・・42→48

敏捷・・・41→44

守備・・・35→40

知力・・・40→47

体力・・・39→48

魔力・・・19→28



HP・・・180→250

MP・・・60→78


スキル

射撃

ー 精密射撃

ー 近距離射撃特化


気配探知

気配遮断

猫目


■■■■■■■


魔法

無属性魔法

ー 属性付与


精霊魔法(状態異常 使用不可)


称号

イレギュラー


───


ふむふむ。ステータスが上がったこと以外特に変わりはない。「見習い」もまだ取れない。無理矢理引っ張り出した精霊魔法も休眠中・・・


となると、無属性魔法か・・・


一体どんな魔法だろうか。 確かドロシーさん曰く高威力、高燃費だったよな。それと魔力が全然足りてないという事だったよな。


果てしてレベルが上がった今でもそうなのか?


しかし物は試しと、穂積は右手に魔力を集めて見たが、ぼんやりと光るだけで何も起きなかった。


うん!まだ無理っぽい。



後は派生の属性付与・・・いわゆるバフってヤツだよな・・・


バフか・・・


穂積は横目で矢筒をチラリと見た。


────


束の間の静寂の中、ガーディアンの手甲から大きめの薬莢がゴトンと落ち、ガチャコンとミサイルが再装填されていく。

それは第1ラウンドの終了のゴングであり、第2ラウンドのゴングでもあった。


ブロォォォーー!!


ガーディアンは手甲をボクに向け、加速しながら2発のミサイルを撃ち込んできた!


迫り来るミサイルと一瞬遅れて突っ込んでくるガーディアン!それでも構わない。ボクがやる事はもう一度懐に潜り込み、絶対にパイルバンカーを決めることだから!


「いくぞーーー!!!」


襲い掛かるガーディアンに対し、ボクも爆走した。

急接近するミサイルをギリギリで躱すと、風切り音をだけを残して彼方へ飛び去る。腕を振り上げ上段の構をとるガーディアンか目前にせまる!


シールドごと粉砕するつもりなのか?受けてやろうじゃないかっ!


「舐めんなよー!」


そして頭を守るようにシールド構え、ガーディアンの間合い入ると、恐ろしい大剣が振り落とされた!


ドシャーン!


大剣を地面に叩きつけ空振りに終わる一撃は、ボクがインパクトの瞬間、シールド傾けその重い一撃を受け流したからだ。凄まじい衝撃で吹っ飛ばされそうになるけれど、ロボット脚は蒸気を吹き出し、地面にメリ込むようにして踏み止まる。


するとロボット脚からボッ、ボッと高圧蒸気が漏れる。

ロボット脚の中に受けた衝撃が駆け巡っている!!


これは合図だ!


ブシュゥゥー!


ボクは無理矢理身体を捻り、膨れ上がるロボット脚のパワーを解放させ飛び上がる。それと同時にパイルバンカーに変形させ、ついにガーディアンの胴体を周り込み後頭部を捉えた!


その動きはもはや人間超えた何かで、野生動物か魔獣の動きに近いものだった。


「いっっけぇぇーー!」


ドッゴッーーン!!


パイルバンカーは発動した。凄まじい爆音がドームに反響した。


十分な手応えを感じ、数瞬の後ズシンと重く響く衝撃音。それは、ガーディアンの頭部が地面に転がり落ちる音だった。


ブシュー!ガコンッ!


再装填されるパイルバンカーの音が響く頃には既にボクは間合いから離脱していた。


ガーディアンの首からは変なケーブルやパイプが飛び出て、プラプラしているのを見て手応えを確信したボクは小さくガッツポーズをした!


やったぁー!


流石はパイルバンカーだね!向かうとこ敵なしだよー!へへへっ。


すると穂積がガッツポーズしているボクに水を差した。


「先輩、奴はまだ沈黙していません。メインカメラが壊れただけです!」


・・・・アイツ本当にロボットに詳しいよナ。


実は穂積が作ったんじゃない?


むむむ、何だか怪しくなってきたぞ!

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