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48 突入!!ロゼ・メトリア!


新宿御苑。旧御涼亭のへりから池に向かって一気に飛び降りたボク達は、ばしゃんっ!と池に落ちたつもりだった。けれど、ブクブクと沈むことはなく、水面ギリギリの所でひゅんっと見えない結界に吸い込まれ・・・


一瞬にして場面が変わったのだった!


ひんやりとした空気は乾いている。薄暗い遺跡かとおもったけど、目が慣れてくると壁は正方形に切り出された石のブロックを積み重ねて建てられ、一つ一つに幾何学模様の装飾が彫り込まれている。その模様に沿って緑色の光が走るのが見えた。


そして・・・最も特徴的な事は・・・


この薄暗く遺跡のような場所には地面がなかった!


つまり、絶賛落下中ってことっ!!


「ほ・・・ほんにゃぁぁーーー!!!」


「せ!せんぱい!!早く飛んでくださいよぉぉぉーー!!」


穂積が女の子の大事な所を思いっきり掴みながら、ボクに叫んだ!


「ひぁっ!バカ穂積!変なとこ触るな!殺すぞ!!」


セクハラ穂積の痴漢行為には、後で成敗するとして、と、とにかく今はロボット脚に魔力を送らねば、落下死だよ!


えい!!・・・・って、あれ?


ロボット脚がうんともすんとも言わないよ!


確かに慌てているけれど、ロボット脚の操作はほとんど無意識に出来るようになったボクに失敗は考えられない。壊れちゃったのかな・・・?


「えーーー!!穂積!ロボット脚、壊れちゃっよーー!!」


「なにーーー!!!」


こうしてボクは穂積にセクハラされながら奈落へと向かうのであった・・・


────



・・・・それから約3分後


ボク達はまだ落下中でした・・・


すっかり慣れてしまったボク達は今ではお互いの腕を掴んでいるけれど、ひとまず距離は取る事にした。


「・・・で、おい、穂積よ。ボク達はいつまで落ちれば気が済むんだ?」


「さぁ・・・僕に言われても・・・なんだかんだで3分くらい落ちてますよね」


「へーそれは凄いな。だから何なんだ?結局死ぬのか?」


「えーと、人間の自由落下はだいたい時速200キロですから。えーと、分速にすると・・・うーん落下しながら暗算はちょっとムズいんですけど、だいたい5キロ以上は落ちてると思いますよ」


「・・・つまり、このまま落ちたら絶対死ぬナ」


「仮に下が池でも死にますね」


慣れって怖いね。全然ピンと来ないや。


底は真っ暗だけど、壁にある緑の光が深遠に向かって走っているから、しばらくは突然到達ビタンッ!てことはないと思うよ。


そんな感じでふと、壁を見ると何だかおかしな事に気が付いた!


「ねぇ、人間は時速200キロで落ちるんだよね・・・」


「あくまでも、平均ですけどネ」


「ほいたらさ、落ちる時ってそれ以上は加速しないんだよね」


「何かに引っ張られるような、力が働かなければですけど・・・」


「うーん、じゃあ、ボク達は引っ張られているのかナ?」


「・・・・へ?」


穂積も何かに気が付いたのか、自由落下で一定に流れるはずである壁の景色をよく観察した。


すると・・・


壁の模様が僅かにずつ、早くスクロールされて行く・・・・むしろ、壁の模様がもう見えないくらいに早い・・・


「先輩!加速してるじゃないですか!しかもドンドン速くなってる!まっまさか、ブラックホールかっ!?」


「な?・・・しかも緑の光もだんだん強くなってるんだよねえ」


次第に変化する自由落下に比例しで穂積は驚き、ボクは反比例にぽやーんと投げやりになってゆく。


────


奈落へ落ちる道中、異様な加速を感じた穂積だったが、それだけでは到底説明がつかない違和感も感じていた。


「何かかがおかしい・・・仮にブラックホールなら、僕達は今頃スパゲティみたいに伸びてるでしょうし・・・実際、加速しているのか?」


壁の模様はもはや認識出来ないくらい速く入れ替わり、異常な速度で落ち続けていることは理解出来る・・・


身体に受ける風圧は・・・・あれ?・・・おかしい、変化ない・・・


風圧がほとんどないぞ!!仮にも時速200キロ以上だ!轟音と風圧で悠長に会話なんでできないぞ。それこそ、ギャグ補正でもない限りな!


あっそうか!


ギャグ回か!!


なんて事は間違っても思わない穂積。



「先輩!僕達は落ちてません!回転する何かの中にいるんです!」


「なっ!なんだとー!・・・それ、どういう意味?」


とりあえず、ボクは驚いて見たけれど、いまひとつピンッとこないよ。


「・・・分かりませんが、やんごとなきチカラで浮かされ、壁がグルグル回る檻の中にいる感じです!」


「ハムスターのアレ見たいな?でもぉ穂積。だんだん地面が迫って来るよ・・・」


「ち、違います!!檻が縮まってるンです!!不味いぞ!つ、潰される!!」


穂積は一瞬圧死するのかと覚悟したが、それよりも先に自分の身体から存在感が消えていくのを感じだ。


「なんなんだこの現象は!!・・・・き、消える・・・」


最後に見た風景は、先輩がのんびり、ぽやーんと消えていく姿だった────


ぴちゅんっ!


────


暗闇の中でひんやりとした石の感触を感じだほっぺはちょっと気持ちいいけど「煌めく星が見える夕焼けの海」と違ってさざ波は聴こえない。

それでもボクは、夢とうつつの狭間で夢を見る。


ミナモと出会ったあのボクだけの世界・・・いやいや、今ではボクとミナモの世界・・・


ボクのような満天の星と夕焼に輝く海の水面。まるで、ボクとミナモじゃないか!うふふ。


どうしてるかなぁ?元気かなぁ?


ニヤニヤしながらぼんやりと夢心地でいると、始めは心地よかったほっぺが冷え、身体全体に冷気が伝わって来た。

「煌めく星が見える夕焼けの海」では、波を感じるほっぺはいつまでも心地良いけど、このつめたさはやっぱりここはのんびりお昼寝をする所でないと確信させる。


起きなきゃ!お腹冷えちゃうよー!


ボクはブルっと身震いすると、はっと目が覚めた!


「・・・おや?ここは何処かな?」


慌てて起き上がると・・・う、気持ち悪い。胃がムカムカ、頭がクラクラでちょっと吐きそう

・・・


何だかいつも、吐き気ばっかりもよおしてる気がするな・・・そんなキャラじゃないのに・・・何だか悪意を感じるな。


まぁいいや。そんな事より穂積だ!


「おい!起きろ穂積」


ボクは隣で倒れている穂積をバシバシと叩いた。


「う、うぅぅ・・・気持ち悪い・・・」


どうやら穂積もボクと同じ症状だ。きっとあのグルグルで酔ったんだと思うよ。


「あっ、先輩。ここは何処ですか?」


「それはボクが聞きたいよ。でも・・・」


・・・どうやら当たりの様だ。


ボク達が目覚めた場所はドーム状の施設の中。天井は丸く床や壁はみんな幾何学模様が彫り込まれた石製。時折緑の光が、彫り込まれた模様をなぞる。広さはそうだなぁ、東京ドーム一個分くらいだな。行ったことないけどね・・・


ん?何だろう・・・?何かアルヨー。


ドームの最奥にうっすらと見えるそれは、あまりにも巨大でただの壁の装飾だと思った。けれども、目が慣れてきたのか、よく凝らして見てみればソレはおばあちゃん家にあるパイプオルガン型魔導制御装置のような形をしていた。ただしサイズは桁違いに大きく、暗さも相まって上の方は霞んで見えないほどだ。


やはりこれも魔導具なのか。このパイプオルガンには幾万本のパイプ管以外に計器やバルブも装着され、蒸気音も微かに聞こえる。中でも注目すべき装飾は、中央に埋め込まれた緑色のひし形の宝玉。きっとこれもエーテル結晶だ!でも、ボクが持ってるのとはサイズが全然違う。パイプオルガンに埋め込まれたエーテル結晶はゆうに5mはある。全くとんでもないバケモノサイズだよ!


「どうもこうもありませんね、間違いなくコレが例の制御装置でしょうね」


「うん!随分長かったけど、あとはぶっ壊すだけだね!」


「・・・ですがまずは様子を見ましょう。いきなり壊して大暴走するかもですし・・・」


「罠があるかもでしょ?」


「です」


流石のボクでももう分かるよ。それにしてもこの制御装置、壊すのが勿体ないくらい凄く壮大で芸術的だよな。


まぁ、ぶっ壊すけど・・・


「後ろは僕が警戒します。先輩は前で」


「ほいきた!」


すっかりお馴染みの前衛がボクでバックアップが穂積の体制をとり、ゆっくりと超巨大パイプオルガンに近づいて行った・・・



薄暗いドームの中をゆっくりと進むボク。後に続く穂積の気配をかくにんしながら歩を進めていると、やがてパイプオルガンの全貌が見えてきた。ここはまるで、ヨーロッパ風の大聖堂みたいだ。


・・・おや?


どうやらコレには鍵盤があるね。誰かが弾くのかな?


ふと興味を持ちもう少しだけ近づいたその時!


あっ!鍵盤が動いてる!自動演奏っ!?


♪テーーレーレ ー・・・テレ レッレッレレレテーレーテーレ テーレレレレ・・・


メロディが微かに聴こえる・・・


何だこれ?何処かで聴いたことあるぞ!


「バッハの小フーガ ト短調です」


後ろから穂積がそう言った。


「詳しいナ。おまえ・・・」


ボクは軽口を叩いているつもりだけど、背中にイヤな汗が流れた。

何だか嫌な予感がする。いかにもラスボスっほBGMだけでなく、殺気を帯びた空気があたりを包む。


「・・・中学校で習いましたよ。そ、そんな事より何かきます!」


そう答えた穂積の声にも僅かに震えが混ざる・・・


「・・・うん」


ただならぬ雰囲気は、重いプレッシャーとなりズシンと重くのしかかる。

ああ・・・あと少しで悲願の制御装置に到達するというのに・・・これは間違いない!


敵だ!


「穂積!ガーディアンがいるっ!!」


ボクはプレッシャーを押し返し、自らを奮い立たせるつもりで叫んだ!


メロディはボクに呼応するかのように極大化し、ドーム全体に響き渡り大オーケストラとなった!


ビリビリと伝わる強大なプレッシャーと対峙していると後ろにいる穂積が叫んだ!


「うゎ!先輩!上ぇぇーー!!」


穂積の声を聞いた時には、ボクは既にバックステップでその場から離脱していた。


ドッカァァン!!!


プレッシャーの正体はとんでもない質量の物体だった!


「な!何だこれは!?」


ソレは二階建ての家くらいある、鉄塊とも言える代物だった。形はきっちり正方形。例によって、幾何学模様のデザインがビッシリと彫られ緑の光が駆け抜ける。


これがガーディアンかっ!


────


ピビッ・・・


侵入確認・・・・・所属・・・・・・・不明・・・・unknown....


ロゼ・メトリア・・・・緊急コマンドヲ実行シテクダサイ・・・・


緊急コマンド・・・

警告・・・・No・・

捕獲・・・・No・・

殲滅・・・・Yes・・


対象・・・ロゼ・メトリア内侵入者・・・


unknown・・・


起動準備・・・


3・・・2・・・1・・・










・・・起動


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