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46 ボクと穂積。戦の後


魔境にあるまじき、ほのかに漂う花の甘い香りが穂積の鼻腔をくすぐった。


意識は次第に目を醒まし、閉ざされた瞳はわずかな光を感じとる。感覚が目覚め、体温を感じ、それと共に身体の傷がじんわりと熱を帯び始める。


痛っ・・・


夢ごこちと覚醒の狭間が天国と地獄のようだ・・・はたして、今は落ちているのか昇っているのか・・・


「・・・あっ!」


そうだ思い出したぞ!今は戦闘中じゃないか!


かっと目を開け一気に覚醒すると、空の機械仕掛けの目玉がギョロりと僕を睨み付けていた。


うわっ!ビックリした!


慌てて身を起こすと、僕の大慌てぶりと裏腹に精霊と化したドラグーンが足を伸ばしのんびりと腰を掛けていた。


「あら、目覚めた?」


ピンクメタルのボディに蜂のような眼。表情はなく、口元を動かすことなく話すのは、テレパシーなのか?いや、それよりは戦隊ヒーローのように、仮面を被っているようにも見える。


僕の鼻腔をくすぐる甘い花の香りはどうやらドラグーンが纏っているようだ。


・・・ちなみに大きめの胸と滑らかな腰つきは幼児体型先輩とは違う。


「あ・・・ああ、僕は大丈夫・・・なのか?」


記憶が途中で途切れている。何か酷い目にあった事以外は何も思い出せない。だから精霊ドラグーンが、紅い闇の中で鼻歌のひとつでも歌いかねないほどリラックスしていて、毒気を抜かれた僕は、何だか余計に混乱してしまった。


「言っとくけど、足が変な方に曲がってるし、血も止まんないから、ポーション飲んだ方がいいわよ」


・・・え?


そう言われ身体の節々を確かめてみれば、足は変な方に曲がっており、ふくらはぎはサックりと裂け、身体中が打撲と擦り傷だらけだった。


うぁ・・・なんて酷いんだ!


・・・全く、ギャク補正が無かった本当に危なかったレベルだぞ!


痛々しい傷を再認識した僕は、とにかくポーションをごくごくと飲んだ。

すると傷が塞がり、同時に波が引くように痛みが消えて活力が湧いてきた。それでも怠さが残っていたので、ついでに青ポーションも飲んで魔力も回復させた。


「まぁ、ありがとう。命だけは取り留めることが出来たよ」


一息ついた僕は、ドラグーンに一応礼を言った。心内は複雑なんだけどね。


「お礼を言うなんて、殊勝な心掛けね。まぁ、いいわ。受け取っておく。・・・でもあなた、もう少し強くならないと、今度は死ぬわよ」


「ああ、分かってる。・・・あっ!先輩はっ!!大丈夫なのか!?」


真顔で「死ぬ」と言われてドキッとしたけど、今はセンチメンタルになっている場合じゃない!先輩はデカいのとタイマン張ってるはずだ!


しかしドラグーンは慌てる僕をよそにこう言った。


「あの子なら心配ないわ。あの子は強いからね。あなたがスヤスヤ寝てる間に片付けてたわよ」


「そ、そうか。無事で何よりだ」


きっとドラグーンの言っていることは、きっと心の強さの事だろう。・・・分かっていたけどグサッと来るよな。


とはいえ、ピンチは切り抜ける事ができた。

今はコレで満足しなきゃ行けない。


「さてと、あなたも起きたようだし、あたしは行くネ」


「ああ・・・助かったよ。ありがとう」


だけど、ダメージの殆どはドラグーンからなんだよな・・・と穂積は心の中で呟いた。


「礼には及ばないわ。だけど、今回の呼び掛けは特別なのよ。次はあなたがもっと強くなってからね。それにこの辺りにはもう敵はいないから大丈夫よね?」


確かに、僕はもっと強くならないといけないな。


「うん、分かったよ。」


穂積の表情に満足すると、ドラグーンは花吹雪を残して消えてしまった。


「やれやれ、勝ったのか負けたのかよく分からないな。まぁ、生き残っただけでもマシか・・・」


ふぅっとため息をついた僕は空を見上げポツリと呟いた。


───


防風林って言うのかな?


林の向こうに穂積が1人取り残されたようにポツンとしているのをボクは見つけた。


「おーい穂積ぃ!!ぶしかぁ?!」


ボクは狼王のドロップ品手に持ち駆け寄った。


「あっ、先輩。どうにか死なずには済みましたよ。先輩こそ大丈夫ですか?」


「ボクも一瞬お花畑が見えたけどパワーアップして、帰ってこれたよ!」


「パワーアップ?」


「うん!パワーアップ!」


オウム返しにカキンッ!とを跳ね返され一瞬躊躇してしまう穂積。


「・・・えっと・・・実は僕も気になる事があるんで、1回ステータスを確認しましょう。もうこの辺りには魔獣がいないので大丈夫です」


「ホイきた!」


実はちょっと気になってたんだよね!


ボクは早速ステータスを起動してみた。


ふむふむ・・・


─────


名前 まんぷく

Lv20→26


職業 コンペイトウ使い

力・・・・35→39(+4)

敏捷・・・38→48(+10)

守備・・・39→42(+3)

知力・・・9→10 (+1)

体力・・・40→48(+8)

魔力・・・39→45(+6)


HP・・・250→320

MP・・・80→ 120


スキル

認識阻害 (小)

リンキング

魔獣格闘技

水中生活 (要水棲魔獣の衣装備)


魔法

コンペイトウ魔法

水魔法 (要水棲魔獣の衣装備)


称号

■ ■ ■ ■ ■ ♪

マナに祝福されしもの

勇敢なる戦士

うそつきパンツ


────

何やら「まんぷく」とか「パンツ」と言ったわけの分からない称号は取り敢えず無視して、改めてステータスを確認するボク。


レベルアップ6つか・・・いい結果だと思うけど、やっぱり狼王を殺していればもっと上がっていたかもね。でも、あそこで止めを刺しに行くのは悪いことだと思うよ。だからボクはやらないよ。


だからコレでいいのだ!


それよりも「魔獣格闘技」ゲットしたよ!絶対、ダガンの格闘センスを受け継いだんだと思う。なんていったって「魔獣」だもんネ!


かっこいい!!


魔獣格闘技──「格闘技スキル」とは通常ならば何年も掛けて身につける格闘の技術や感覚を「スキル」によって補うこと。ただし「魔獣格闘技」格闘技術向上というより、野生の勘や直感向上に特化され追い込まれるほど冴え渡り、逆境に強くなる。



続けて穂積。


名前 穂積 圭介

Lv17→22

職業 見習い ガンナー

力・・・・42→48 (+6)

敏捷・・・41→44(+3)

守備・・・35→40(+5)

知力・・・40→49(+9)

体力・・・39→47(+8)

魔力・・・19→25(+6)



HP・・・180→220

MP・・・60→100


スキル

射撃

ー 精密射撃

ー近距離特化


気配探知

暗視



■■■■■■■


魔法

無属性魔法

ー 属性付与


精霊魔法


称号

イレギュラー


───

穂積の感想。


あれだけやって+5か・・・

多いと見るか少ないと見るか微妙なところだ。でも突入から半日でレベル22まで上げれたのは、チート武器ドラグーンのおかげだな。


相変わらず無属性魔法は全然使い方分からない。だけど、付与魔法なら・・・ゲーム的なエンチャントのイメージが役立つかもしれない。試す価値はあるな。


精霊魔法については、しばらくは期待できない。いつかレベルが上がった時はきっと化ける要素がある。


そして精霊弾は残り1発・・・

今後は「精密射撃」スキルと矢を主力に戦うしか無い。


とはいえ、ドラグーン曰く戦闘は終わったようだ。


何だかんだでギリギリ及第点といったところだな。


────


こうしてボク達は茶をシバキつつ、互いのステータスを共有をした。


しかしまぁ穂積の奴、一気にレベルアップして凄いよな。それにステータスが全体的に高いし。


やっぱ男の子だからなのかなぁ・・・何かあいつの方が主人公ぽいよ・・・何か複雑・・・


でもまぁ、それだけ頼れる仲間って事なんだよね。それに魔力と敏捷はボクの方が高いからね。


そうそう、忘れるところだった。貰い物だけどコレもどうしようかね?何に使うか検討もつかないよ。


「穂積よ。この金のイバラさドロップ品なんだけど、なんだろネ?」


ボクは金のイバラを穂積に見せた。


「ちょっといいですか・・・」


穂積はボクから受け取ると、何やらグニグニと感触を確かめた。


「なるほど・・・トゲはゴムに近いですが金属かも知れません。蔦は恐らく植物か何か繊維でしょうね」


「繊維・・・?繊維結晶的な?」


「似た類かと・・・何にしても今ここ使えそうにはなさそうです。もしかしたらキーアイテムで、とこかで使うかもしれません。念の為、僕のバックにしまって、本当に要らないなら転送しませんか」


「そだね。うっかり転送しちゃってボス部屋手前で引き返すなんて出来ないからね。」


「確かに。他に何かありませんか?」


他に何か・・・はて?

腕を組んで考えて見たけど特に無いね。


「うーんとぉ・・・後は例の制御装置だけかな。何処にあるのかなぁ?」


「それなんですが、新宿御苑で目立った施設はこの先のバラの園と、森の奥の資材置き場位ですね」


「そだね・・・何だかんだで一通り調べたもんね。ねぇ!バラ園ならすぐそこだよ!行ってみようよ!」


「うーん。資材置き場の方がアツくないですか?」


「まっそうだけどさ。バラ園行こうよ!バラさんが気になるよ。元気かな!?・・・ん?何だよ穂積。ジロジロ見るなよ・・」


「いや、バラと聞いて、はしゃぐもんですから、やっぱり先輩も女の子なんだなぁ~って思って・・・」


「なんだと?別にいいじゃないか。女の子の憧れみたいな所があるからナ。バラ園は♪」


「はいはい。でも、開花の季節にはちょっと早いと思いますけど・・・」


「大丈夫!桜もちょっと早いけど満開じゃないか!きっとバラも満開だよ!」


どんな理屈だ!と穂積は思ったが、先輩はだいたいいつもこんな感じだから、それに従う事にした。


─────


そのバラ園は歩いて数分の所にあったのだが、なぜか随分と騒がしかった。


ぐわっぐわっぐわっぐわっ・・・

ぐわっぐわっぐわっぐわっ・・・・

ぐわっぐわっぐわっぐわっ・・・・


「・・・カエルの合唱かな?」


「・・・いや、もっと凄いことが起こってます」

既に双眼鏡を覗き込み索敵を始めていた穂積が目撃したモノは、この世ならざるモノだった。


「あー・・・これは・・・先輩。見た方が早いです。どうぞ」


そう言って穂積はひょいっとボクに双眼鏡を貸してくれた。


どれどれ・・・


「あっ!こっ、これは!?」



パックン○ラワーだ・・・


「まぁ・・・こんな事だろうとは思ってましたが、これはコレで見応えがありますね」


穂積の奴涼し気な顔しやがって・・・


「うう・・・せっかくのバラさんが・・・」


「流石に火を吐くことは流石になさそうですね。でも、制御装置とやらはここには無さそうですよ」


こんな所にあってたまるかっ!


「グスン・・・何だか心痛い。長居は無用だな・・・」


「そうですね。本命を目指しましょうか」


まったく目玉め!アレもこれも奪いやがって・・・


あとドーサも忘れてないからなっ!!

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