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45 ボクと狼王の最後の決闘!


「おや?ここはどこかな?」


目が覚めるとそこはうっすらと霧がかかったお花畑だった。遠くはよく見えないけど、川があることは何となく分かってしまった。


ふむふむ・・・えーとぉ・・・


確か狼王と戦っていてぇ、ボクのパンチが狼王のにぶち当たったンだよな!そしたら、ボクはお花畑に飛ばされたってことかな?!


つまり!死闘をくぐり抜けたボクはしばらくここでお昼寝しても良いってことなのね?!


そうなのね!?


いまひとつ合点がいかないけど、とりあえずおやすみなさーい。


「おい寝るな!帰れなくなるぞ!」


わっ!ビックリした!どなたカナ?


驚いたボクはキョロキョロと辺りを見回し、ボクのお昼寝を遮った低い声の主を探していると、その主は霧の中からお花を容赦なく踏みつけ現れた。


霧の中の影は人間の体をしていない。でも直ぐに分かったよ!


あっ!ダガンだ!!


「おーいダガンじゃないか。久しぶりだな!」


ボクはのっしのっしと歩いてくるダガンに手をブンブンと振った。うん、元気そうで何よりだ!


「コンペイトウ使いよ久しくはないぞ。我はいつもお前のそばに居るからな」


霧の中のから現れたダガンはそう言った。


言われて見ればそうだったな。ボクはダガン装備を身につけているもんな。


・・・という事は?アレ?


死んじゃったダガンがここにいるという事は・・・?はて?


ボクがちんぷんかんぷんになっているとダガンはこう言った。


「しかしお前さん、何故こんな所にいるのだ?」


なぜ?ボクにもちょっと分からないよ・・・


首をかしげ顎に手を当てると、だんだんと記憶が戻ってきた。


確か、狼王と激突して・・・


・・・あっそうか。ボク、狼王に負けちゃったんだ。背中をザックりやられて・・・


それで死んじゃったんだ・・・





・・・え?死んだだと!?


「あーーー!!思い出したよ!死んじゃったんだ!!?どどどどどうしよう?」


顎に当てた手を口元に持っていき、アワアワするボク。それを見たダガンは少しばかり呆れたのか、ため息吐きながら言った。


「・・・それで、これからどうするのだ?」


「えーん!分からないよー。できれば天国に行きたいけど、やっぱ穂積が心配だし・・・ねぇダガン。ホントどうしよう・・・」


なんて言ったって初めて死んだからね!どうするなんて言われても分からないよー!


「あのなお前さんは一つ誤解をしている。我が一部はあの程度の爪に引き裂かれる程ヤワでないぞ!」


えっ?・・・どういうこと?背中ザックり抉られてないって事?


つまり・・・


「ボクはまだ生きてるの?かな?」


「・・・それを選ぶのはお前さんの役目だ」


なるほどぉ。でも、生きてるなら勿論やり返してやりたいんだけど、正直勝てる気がしないんだよね。


「だけどぉ、アイツの強さは尋常じゃ無かったよ・・・」


「ふん!奴より強い我を倒した者のセリフとは思えんな」


「だって、お前は優しいじゃん」


「な、何を言い出すのだ!相変わらずだな・・・まぁよい。戦う意思が少しでもあるなら一つ助言をやろう」


照れるのかな?ダガンは鼻先をポリポリ掻きながらそう言った。


「いっぱいあるよ!戦う意思!」


「・・・そうか。では、遺された我が一部を信じよ!」


「ん?それだけ?でもわかった!信じるよ!」


ダガン!ボクはもっと強くなるから、今は守ってください・・・


ボクは心の中でそうお祈りすると、ぐっと目に力を込め、ダガンを見た。


ボクの瞳に映るダガンもまた、戦士の目になっていた。


「よォし!いってこいっ!」


バシンとダガンの平手がボクの背中を強く押す。衝撃が全身に巡り活力が湧き出る!


よし!いくぜっ!


すると突然足元がぱっと消え去り下界が広がっていた!


「えっーーー!!こーゆー行き方!?」


こうしてボクは天国から落っこちた・・・


────


その頃。穂積は・・・


ズサァァァーー!!


それはまるで西部劇の悪役が、村人その1を馬に引きずり回すかの如く、ほすは精霊と化したドラグーンにめっちゃ引きずり回されていた。


穂積は知るよしもなかった事なのだが、契約者と精霊は精霊線と呼ばれるケーブルで繋がっている。穂積は胸の辺りからドラグーンの背中へと精霊線がある。問題なのはその長さ。通常は数百メートルから数キロにおよびが、力に劣り、契約手順も踏まず無理矢理召喚した穂積にはペナルティがついてしまった。


「精霊線2メートル」


分かるだろうか。ガンナー職が精霊召喚時では接近戦を余儀なくされた挙句、圧倒的な力に振り回される始末・・・


「ハーハッハッハ!!久しぶりの戦だァ!!死ねぇ!」


ボコー!


精霊化したドラグーンは穂積にはもはや制御不能であった。一瞬にして間合いを詰め、1匹のイバラ狼を殴りつけ、勢いのままクンッと曲がりもう1匹も始末する。このようにして、次々と数を減らすイバラ狼だが、召喚者穂積へのダメージも増していった。これは既に戦い等ではなく、穂積が死ぬかイバラ狼が全滅するかのチキンレース。

彼のえぐれた足の怪我からほとばしる鮮血は天地をキャンパスに弧を描く・・・


最も、この展開で穂積が死ぬなんて落ちは流石にない。


「おーーりゃぁ!!おりゃぁ!おりゃぁ!おりゃぁ!おりゃぁ!おりゃぁ!おりゃぁ!おりゃぁ!おりゃぁ!おりゃぁ!おりゃぁ!おりゃぁ!おりゃぁ!おりゃぁ!」


精霊ドラグーンは最後の1匹に怒涛の連打を打ち込むと、原形を留めることの出来なくなったイバラ狼はすっ飛んでいった。既に気を失ってしまった穂積もまた、ドラグーンの苛烈な速度を受け、イバラに追従する様にすっ飛んだがジャスト2メートルの地点でクンッと引っ張られそのまま地面に落ちた・・・


「どう?私の力。思い知ったかしら?」


穂積が一番思い知った・・・


桜散る背景に勝利のポーズを決めるドラグーンを観るものは誰もいなかった。


────


「うわっ!」


天国から落とされたボクが目を開きいの一番に視界に飛び込んできたのは、ドーム越しにぼんやり見える機械仕掛けの目玉だった。


お、おはようございます・・・あービックリした。


ボクはどのくらい倒れていたんだろうか?あんまり長い時間だったら今頃、食べられちゃってるから、多分ほんの一瞬だと思うけど・・・


身を起こしたら今度は狼王と目が合った。


「うわっ!」


慌ててロボット脚に魔力を込め距離を取る。しかし狼王は追撃をすることは無かった。


・・・ほんの一瞬で2度もびっくりするとはな。どうやらいつもどうりだ。


さてと・・・まずは、お互い仕切り直しといったところか。


ボクはダメージを食らった背中を意識してみれば、なるほどダガンの言う通りだ。背中の傷は痛いけど、どうやらダメージは衝撃だけで切り裂かれてはいなかった。それでも一撃で死にかけるとは、中々ヤバいじゃあないか。


それともう1つ、ダガンは言っていた。おれさまを信じろ!って。もうちょい具体的なアトバイスが欲しかったけど、何だか復活してから身体が少しだけ軽くなった感じがするよ!


きっとダガンからスキルを貰ったかも知れない・・・


ボクは腰をぐっと落とし、左手のパイルバンカーを引き構える。


「よぉし!来い!」


ボクは人差し指をくいっと動かし挑発する。 狼王もそれに乗ってなのか、トゲを発射した!


パシュンッ!!


む?見えるぞ!


「おりゃぁ!」


一直線に飛んで来たトゲをジャブで迎撃するとパラパラと四散した。


狼王は怯むことなく、今度は三発のトゲを発射した!


高速で近づく3本のトゲ。でも、今のボクには・・・


ピキーン!?ここだっ!


ボクはその場から動くことなく3本のトゲを右手でパパっと払い除けた!


よしいける!ケリをつけようじゃないか!


ボクと狼王の最後の戦いが始まった!


────


狼王とボクの最終決戦。風に乗って赤黒い霧が花びらを纏いながらボク達の間を通り過ぎる。束の間、ボク達の視界が遮られる・・・


来る!アイツは鼻が利く。きっとこの瞬間に来る。


そう本能が告げていた!


「おりゃゃーー!」


だからボクは視界の悪さをかえりみず、走った。腕をアイツに突き出し水弾を放つ。先手必勝だ!


この瞬間に賭けていたのは狼王も同じだった。迫り来る水弾をまるで予定調和だったかのように難なく躱し、獰猛な牙をぶち込むためヨダレの滴る口を開き襲い掛かった!


ボクの頭の中は寒気がするほど冴え渡り、迫り来る恐怖を冷静に観察していた。瞳孔が開き狂ったように見開く眼は狼王のデロンと延びた舌や毛の揺らぎまで、感じるように捕らえることができた。これが「視える」という事か。


「せいっ!」


ボクはそんな狼王の顔面に蹴りを放った。


が、しかしその程度の蹴りは狼王に通用することなく、首を捻っていとも容易く躱すと、がら空きになったボクの脇腹に狙いをつけた!


ドッゴッーン!!


その瞬間!聞き慣れた轟音が辺りに響いた。


それは勿論ボクの放ったいつものパイルバンカー!


ボクは蹴りの勢いのままに半回転して、狼王に背を向ける瞬間、パイルバンカーを真下へ打ち込んだ。


目の前まで起きた爆発によって硬直する狼王と、その推進力で空中へ飛ぶボク!


あー、やっとだよ・・・!


遂に捕らえた!狼王の真上!背中がお留守だよ!


「いっけー!!」


ばこーーん!!!


ソフトボールサイズの水弾が狼王の背中に着弾しバキりと音を立てへし折った!!


ボキリ!!


最近よく聞くなこの音・・・

骨が折れる時っさ本当にボキッて言うんだよね・・・


でも、まだ終わっちゃいないよ!


崩れる狼王の背後に着地したボクは、渾身の蹴りを狼王のおしりに打ち込んだ!


「おりゃぁ!」


どがっ!


縦にグルグルと回転しびちゃっと崩れ落ちる狼王。


ヤバい!うんち付いちゃったかも・・・まぁ、いいや。最悪洗えば大丈夫。


「どうだ見たかコノヤロー!!」


ボクはそう叫び、これまで溜め込んでいた重圧を一気に発散されると、これまでしたことが無いくらいの凄まじい目つきで狼王を睨みつけた。


ぐ、ぐるるるぅぅ・・・


力なく鳴きながらもよろよろと立ち上がる狼王。彼は認めたのだ。この地での真の獣の王、いや女王はこの少女であると・・・


そしてその眼からはもはや戦意が消え、しかし怯えること無く何か澄んだ野生特有の眼をして見つめた。


狼王ゆっくりと少女に近づき、身体に巻き付く黄金のイバラを外しドサッと置くと、振り返ること無く森へと向かった・・・


その瞬間、ボクは狼王との死闘を制したという実感が湧いた!


「やったぁぁーー!!・・・・・・疲れた

死にそう・・・」


ボクのHPも余裕ないんだった。うっかり騒いだら死にかねないよ。とりあえず回復しなきゃ・・・


ポーションをクポンッ!と空けてキュッキュッと飲むボク。


背中の痛みや、擦り傷が消えて活力がもどる。おっ、ついでに魔力ポーションも飲んどこう。


クポンッ!キュッキュッ!


味はブルーハワイだネ!おいしー!


プパーー!!


生き返ったよ!!死闘の後にはこれが一番だねー!


赤黒い霧の中、血染め桜の舞うこの地で腰に手を当てキュッキュッと飲むポーションは格別であった。


さてと、穂積の奴生きてるかなぁ



称号「獣界のアイドル」を得た事を知るよしもなかった・・・

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