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44 ボクと穂積、それぞれの戦い


ボクと穂積を分断するように割って入ってきたイバラ狼のボス、狼王。どうやらコイツはボクとタイマン張りたいようだ。


上等だ!オラァ!!やってやるぜっ!





・・・・何てね。



穂積とも話し合っていたんだけど、この戦闘ではボク達はなるべくサシの勝負や分断を避けてあくまでもチームとして戦う。

何故ならボク達には敵を無双出来るようなチートはないし、1発でもくらえば致命傷にもなりうる。だから、とにかく被弾を避け有利な位置から確実に仕留める。これを指針としてこれまで戦ってきた。


でもそれもここまで。


敵の数が多ければ、いずれボク達は追い込まれることはある程度予想はしてたけどぉ。


ヤッパリなぁ。来て欲しくなかったよ!この展開はね!


────


一陣の風が吹き、ぱっと赤黒い霧が晴れ血染め桜が宙を舞う。新宿御苑で対峙するのは一人と1匹。互いの仲間たちも、それぞれの戦場へ赴き邪魔するものは誰もいない。


ボクは腹を決め戦う決心すると腰を落としていつでもパイルバンカーを撃てる体制に入った。

多分狼王はスピードは速そうだけどパイルバンカーの一撃に耐えられないと思う。


今ここで勝って、全てに蹴りをつけてやる!


ブォン!


ボクの殺気に反応したのか、動いたのは狼王だった。十数本のトゲを自分の周りに生成し停滞させ攻撃態勢に移った。


あれっ!ファンネルかな?


ボクは咄嗟に思った。一度に襲い掛かってきたらトゲの動きは全く予想できないよ。怖いからシールドで防御したいところだけど、次にパイルバンカーを起動する余裕は無くなっちゃうから、ここは我慢のしどころだね。


ならば・・・・


「それいけー!」


ボクは、バックステップで距離を取りながら、次々と水弾を放った!


トトトトトトトトト・・・


マシンガンのように放たれた小粒の水弾はトゲに着弾し撃ち落とす。けれども狼王その位予想していたのか構わず自慢の速さでトゲを展開したまま突撃する狼王。


グンッ!と目の前に迫る迫力に、たまらずボクは飛び上がり上空からさらに水弾を放つ!


トトトトトトト・・・・・


すると、展開されていたトゲがまるでボクを自動的にロックオンするかのような反応して、一斉にこちらを向いた。


あっヤバいかも!?

トゲと目が合っちゃった!



トゲから放たれる殺気を感じた時にはトゲが目の前に迫っていた!


ピシュ ピシュ ピシュ ピシュ !!


ボクは必死で空中を駆け抜け回避する!けれどもボクの動きは予測されていたのか、回避地点には既にトゲが放たれており、太ももに1発食らってしまった。


「あいたっ!」


ボクはバランスを崩しそのまま地面に落下してしまった。


ドカッ!


ハッ!ハァハァ・・・


落下の衝撃で一瞬呼吸が止まる。だけど、それほど痛みはない。ボクは大きく息を吐き立ち上がろうとした。でも、ガクンと膝か抜けその場で転んでしまった。


あれれ?足に力が入らない!?まずいよ!


必死に起き上がろうとするボクの隙を狼王は見逃すこと無く、追い打ちを仕掛けるように詰め寄ってきた。


ヤバいよ!ヤバいよ!


ホント、アイツちっとも休ませてくれないね!


普通ならこういう時、「見たか!我が攻撃云々」見たいに自慢話するターンじゃない?それで「時間稼ぎはさせんぞ!」みたいな事言う割には、たっぷりお時間頂くのがセオリーだと思うよ!でもこいつにはそう言うお約束がない!


ガルゥゥ!!


目の前まで接近する狼王。血走った眼、毛並みの1本1本、までよく見える!


見たくないけど!


そして狼王はまるでクマの爪のような大きく鋭い一撃を振りかぶりお見舞いして来た!俗に言うパコーン!って言うやつだな!


これは避けられない!


ならば!


「おりゃゃー!!」


避けられないなら向かい撃つまで!

ボクは目を見開き負けじと自慢の拳で応戦した。するとどうだ!


ガッキィィーーン!!




何と勝ってしまったぞ!


狼王の鋭い三本の爪のうち二本をへし折ると、そこから血が吹き出した!


今だ!


このままボクは怯んだ狼王の顔面にパイルバンカーを発射した!


ドッゴーン!!


派手な炸裂音と共に狼王は吹っ飛んだ!


しかし、直前で受け身を取った狼王は致命的一撃を避けた。


狼王の眉間から頭部にかけて肉がごっそりこそげ落ち、ダラダラと流れる血の合間から白い頭蓋骨が見える。


なんと狼王は硬い頭蓋骨でパイルバンカーの杭を滑らせ致命傷避けるという離れ業をやってのけたのだ!


プシュー!ガシャコン!


両者は一度に打ち合いをやめ、体制を整える。再装填されるパイルバンカー。手負いとなった狼王も、額と前足にトゲを生成して止血させる。


ボクは今度こそ立ち上がろうと足を踏ん張ってみると、ズキンと痛みが走った!


「痛っ!」


やっぱり、足が痛いぞ!


見ればトゲを食らったところが真っ黒なアザになっていた。


ダガン装備による魔法障壁でダメージが軽減できたとはいえ、全てを無効にすることは出来なかったみたい。もし仮に装備がなかったら今頃足がちぎれ飛んでいただろうね。


とはいえ痛みはあるものの、戦闘による興奮状態なのか、感覚がマヒしてて何とか動けそうだよ。


こういう時って後から大怪我に気付くパターンだけど、今は構っていられない。


それにしても困ったよ。攻められれば躱すだけで精一杯。かといって、正面から挑めば避けられて、上空から攻めれば迎撃される始末。


やはりここは・・・




コンペイトウ魔法!!


じゃないナ・・・


うーんどうしよう!?


ブォン!!


ボクが悶々としているうちに、狼王は再びトゲを生成し周りに停滞させた。2本のトゲとは少ないが、お次は回転ドリル式で威力も高そうだ。


パシュッ!パシュッン!


ほらまたきたよっ!


狼王は時間差でトゲを発射して同時に走り出す!昔再放送で見た有名なロボットアニメの三段攻撃のようだ!


仕方が無いからボクは水弾で立ち向かう。


1つ!

拳サイズの強力な水弾で1発目を数メートル手前のところで相殺。


2つ!

次弾の生成なんてもちろんムリ!だからボクは文字通り目の前に飛んでくるトゲをギリギリで躱した!しかし、回転するトゲに帽子とゴーグルが巻き込まれて、ちぎれ飛んでしまった。オマケにこめかみも掠ってしまい、血がプシュッと吹き出した。


痛みを感じるヒマもなく、狼王はスグそこまでやって来た!


3つめ!


「おりゃゃぁー!!」


カウンタッー!


さっき爪を迎撃した時に分かったんだけど、攻撃ってモーションに入ったら簡単には止められないんだよね。だから素早い狼王を崩すにはここしかないって思った!


そしてボクの刃付きの右ストレートは、飛び掛りノドを食いちぎらんとする狼王の顔面を捉えた!!


スカッ・・・


あれれ?


どこいっちゃたのかな?


キョロキョロ、キョロちゃん?



狼王はその体躯にも関わらず、さらにギアを入れ一気に後ろへ回り込んだ。


狼王は狭い空間で精霊弾の追尾を避け切る程の素早さをもち、加えて一度正面から挑み、手痛い経験をしている以上、同じ手を二度も繰り出すと思う方に過ちがある。


そして・・・・




斬ッ!


・・・後ろへ回り込んだ狼王は渾身の爪をボクの背中に叩き込んだ!


────


一方穂積は・・・イバラ狼の群れに囲まれていた。その数8匹。総戦力の最終決戦。そこは芝生エリアのため周りには桜が数本ある他、岩石などのオブジェがいくつかあるだけで、身を隠す所はない。


まいったなぁ・・・死ぬかも・・・


穂積はほんのちょっぴり死を覚悟した。ドラグーンに装填されている精霊弾は一発。それと無属性弾のみ。物凄いラッキーが続いても精霊弾で倒せるのは精々5匹。素早く動く相手を無属性弾で仕留めるのは今の穂積には至難の業であり、仮に出来ても1匹しか始末出来ない。さらに幸運が続いて、この期に及んでまだ、ぼんやりイバラ狼がいるとすれば、そいつをスタン警棒で1匹無力化できる。


それでも最後の1匹に喰われる・・・


先輩は今デカイのと格闘中。助けも期待できない。・・・むしろ心配だ。


困ったね・・・


穂積がこうして困っていても、残念ながら時間の流れはは止まらないのだ。イバラ狼達は穂積を囲み距離をつめ、必殺の間合いに入ろうとしていた。それでも穂積の右手にあるドラグーン、数多のイバラ狼を惨殺したあの銃だけには警戒を怠ることは無かった。


それがため、唐突に立ち止まるイバラ狼。すくっと立ち止まる光景に穂積は訝しげんでいると、イバラ狼は一斉に身を震わせるという不気味な行動に出た。



先輩だったら汚い事想像するだろうな・・・なんて穂積が思っていると、彼の耳は奇妙な音をとらえた。


ゴゥンゴゥンゴゥン・・・


ん?何だこの音は?何かが来る!?


不可思議な音は次第に穂積の元へ近づき、同時にプレシャーが押し寄せてきた。


コイツらが仕掛けているのか!?一体何を!?


穂積から見れば、イバラ狼達は微動だにせず立ちすくんでいるだけ。しかしその目は何かを見守るように、或いは獲物が罠に掛かるのを観察する様な眼であった。


ゴゥンゴゥンという音は遂に足元にまで及ぶ・・・


どうも変だ!!何かヤバいのが来る!!


穂積がそう思った直後、地面から振動を感じた!


不味い!攻撃されてるっ!!


穂積は咄嗟に地面から足を離したが時すでに遅し!メリメリと地面が盛り上がるとドリル式トゲが足の裏をつつく感触がした!


「痛っ!」


勢いよく地面から放たれたトゲは穂積の足の裏からふくらはぎまでサックりと切り裂き、ロケットのように空高く舞い上がって行った。

穂積は負傷した足の激痛でたまらずバランスを崩しそのまま尻もちを着いた。その目には勢いよく飛んでいくトゲが目に映った。


ガルゥゥ!!


刹那、イバラ狼達は獲物がズッコケる隙を見逃すはずも無く、これで止めと言わんばかりに一斉に飛び掛った!


「うぁぁぁ!!」


穂積は悲鳴上げると、狙いを定めることなくヤケクソの精霊弾をぶっぱなした!!


バシュン!!


発射された光弾は一番近くにいたイバラ狼を標的と定め、ニョキニョキと生えた腕でボコー!と殴りつけた!!


キャンっ!と情けない悲鳴を残し彼方まで吹っ飛ばされる仲間を見て、イバラ狼達は一旦は怯むものの、この機を逃さまいとする戦意はそれを上回り、決死の襲撃を止めなかった!!


対して精霊弾は穂積を護るかのように、グルグルと中心に回り、光の壁を作りながら近づくイバラ狼を次々と殴りつけた!

しかし、イバラ狼もタダ殺られているだけでは無い。ある者は躱し、ある者は自ら盾となり、憎き怨敵の嵐のような攻撃を耐え続けた。


しばらくの間続いた攻防も、次第に勢いを弱める精霊弾が徐々に劣勢となり、やがて塵となり儚く消えた。それは穂積の命が今消えるのを連想させるかのように・・・


いよいよ万策尽きた穂積はよろよろと立ち上がり、力の入らなくなった右手をだらりと下げ、目の前の1匹を睨みつけた。


「まいったな、こりゃやべぇわ。このクソッタレの犬共め!」


満身創痍の穂積は珍しく汚い言葉を使い悪態をついた。イバラ狼達は獲物と化した敵に嬉嬉として吠えまくり、涎を垂らし獰猛で満面の笑みを浮かべそれに応えた。


そしてついに、イバラ狼達は弱った獲物に止めを刺そうと決断した時、獲物はなにかを呟いた。


この状況を見ているであろう、どこかの誰かに話すように呟いた。


「・・・おい、聴いてるだろ?このままだと宿主が死んじまうけどいいのか?おい!お前の夢もここで潰えて犬に食われちまうぞ!」


そう言って穂積はありったけの魔力を数珠に込めた!といっても魔力はほぼ枯渇しかけていたため、それはむしろ願いに近かった。


すると・・・


「あんたコレだけの魔力で私を召喚するつもり!?」


どこからともなくややヒステリックな声が聞こえる・・・


「悪いね。今日はこれで精一杯なんだよ」


穂積はソレに当たり前のように答える・・・


「ふん!まぁいいわ!今日はチュートリアルって事にしといてあげる!後は私に任せなさい!」


声は不機嫌ながらも召喚に応じてやる事に決めた。


そして数珠は直視する事もはばかれる程の輝きを発し、中から精霊が現れた。


血染め桜のような淡いピンクのメタリックボディと長い髪。ハチのような光沢を持った眼を持つ女型の精霊は言った。


「我が名はドラグーン。全ての希望を刈り取るものなり!立ち塞ぐ者は露と消えるがよい!」


取り囲むイバラ狼を見下すように眺めみると最後にこうつけ加えた・・・


「死ね!」


師走のこの時期、仕事が激務のため更新遅れました。


すみません。


穂積、双子のパパさん、おめでとう!



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