表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/52

43 ボクと穂積のがちマッチ。開幕


グルルゥゥ!

ガウゥゥ!!

バゥバウ!!

キュンキュン・・・


ん?


なんか1匹変なのが混ざっているけど・・・


そんな事より3匹のイバラ狼が威嚇しながら、我先にと茶室の狭い入口から首を出した。舌をでろりと垂らし3つ首をブンブン振り回しながらヨダレを撒き散らし、恨めしそうにボク達を見上げるその姿は、まるでケルベロス見たい・・・


実際かなり恐怖を掻き立てられる場面だけど・・・


おバカだな。わざわざ首差し出すとはね!


穂積は3つ首がつっかえて動けないおバカケルベロスの口に早速ズコン!とスタン警棒をぶっ刺し、そのまま電圧をMaxまで上げた!


バチバチ放たれる50万ボルトの電圧がイバラ狼の毛を逆立たせ、ガクガクと痙攣させると、目と耳から血が流れ落ちて、口内と脳がこんがり焼けた頃に事切れた。

それでも今日の穂積は終わらない。イバラ狼をBBQにする傍らで、もう1匹にもしっかりと気を使っていた。


つまり額にドラグーンの標準を合わせると・・・


ズドンッ!


至近距離からの無属性弾イバラ狼の頭に小さな穴を開け貫通した。


無属性弾───

精霊弾と違い、その威力と弾数は魔力に依存するが、1度専用弾を装填すれば再装填の必要は無く魔力を込めて、トリガーを引くだけでエネルギー弾が発射される。


因みに専用弾にはクールタイムがあるが、ある程度の連射は可能である。


────


穂積は予め予期していたのか一瞬で捌き切ると、ボクと生き残ったイバラ狼はぽやーんとしてしまった。それでもボクの方が一瞬早く目覚め、最後までぽやーんとしていた1匹の頭部に拳を振り下ろした!


ゴチンッ!


鈍い音が響くと同時に、イバラ狼の頭蓋骨がパックリ割れ脳漿をぶちまけた!


「やった!」


手にべっとり血糊が着いてちょっとスプラッターだけど、あんまり気にりなくなってきたよ。それよりも予想以上に上手くいってボクはほっと安堵した。


「ふぅ。やはりここで正解でしたね!」


第1波を退けたことを確認すると穂積がやや興奮気味にそう言った。


確かにここ、迎え撃つには良いナ。


でもやっぱり長くは持たないと思うな。だって、さっき大きいのが屋根をぶち破って登場してたからね。そのうちここの屋根もぶち破られそうだよ。

だからボクは穂積にその心配を打ち明けた。


「穂積、悪いけどデカイのが来たら破られるよ。そうしたら逃げ場ないよ。どうするよ?」


「うーん。確かにそうですね・・・」


と思う穂積であったが、彼は既にいくつか妙案があったのだ。


「先輩ちょっといいですか?」


ごにょごにょ・・・


─────


それからしばらくの間、散発的にイバラ狼の襲撃があったが、入口から首を突っ込んでくるたびに、穂積がドラグーンをぶっぱなして撃退していった。


やがて首を出せば刈られるサイクルに業を煮やしたイバラ狼は、茶室の壁にも攻撃を仕掛けるようになった。


ついに敵さんも壁をぶち破る作戦に出たらしいね。


時折ズシン!と、大きな衝撃を感じ、天井からパラパラと砂が落ちミシミシと柱が軋む。

それにイバラ狼たち。如何せん数が多い。穂積の少ない魔力もしだいに底が着きそうな表情を見せていた。


そんな穂積。彼はこの決戦に於いての懸念材料は自分であると考えていた。言うなら、Lv1で最強武器を持ってラストダンジョンに挑むようなものだ。攻めは強いが、反撃に合えばあっという間に殺されてしまう。


それを解決する方法は一つ。


レベリング。


優位な位置に立ち、知恵と勇気をもって戦いレベルアップを図る。レベル1よりも2、2よりも3と上げるためには戦闘に身を置きつづけること。それが命を繋げることと悟っていた。


そして彼の理解は正しく、実際にレベルが上がれば上がるほど力が湧きより素早く動けるようになったていった。そして期待はしていなかったのであるが、なんと新たなスキルも獲得する事に成功していた。


ステータス魔法とは能力を数値化する事が本来の目的ではなく、経験値を溜めることでマナにによって身体能力や才能に補正を掛けることであった。


──────


名前 穂積 圭介

Lv1→17

職業 見習い ガンナー

力・・・・18→42

敏捷・・・14→41

守備・・・13→35

知力・・・17→40

体力・・・15→39

魔力・・・6→19



HP・・・120→180

MP・・・40→60


スキル

射撃

ー 精密射撃

ー 近距離射撃特化


気配探知

気配遮断

猫目


■■■■■■■


魔法

無属性魔法

ー 属性付与


精霊魔法



称号

イレギュラー


────


穂積の成長は王道を極めるかのように順風満帆である。これは例えば、ちょっと変でいい加減なステータスに振り回されてるヤツからしてみれば嫉妬の対象になるかもしれない程にである。


────


一方、悪戦苦闘しておるイバラ狼達は、狭い入口に首を突っ込めばたちまち殺されてしまう、死の無限ループによって同胞たちの死体が幾重にも重なるように積み上げられる頃には、流石に進入に躊躇するようになった。

キュンキュンと鳴き、壁を恨めしそうに眺めバカ面下げたイバラ狼達を見た狼王。情けなく思いながらも、これ以上の犠牲を出すことを望んでいなかった。

そこで狼王は自らも行動に出ることを決め、一度に数本のトゲ生成した。

狼王のトゲは特別製。ブゥンと低い音を立て、停滞するトゲはドリルのように回転していた。

このトリル状のトゲは見ての通り目標物に刺さると削り貫く仕様。しかも知性ある狼王は四点をドリルで削り互いを干渉させてヒビ割れを起こし、壁を破壊するという極めて高度な方法を採用していた。


狼王は狙いを定めるとチカラを解放し、ドリルの状トゲを発射した。


ドスドスと突き刺さり、壁を削ると、イバラ狼達も死の突撃から解放された安堵感と新たな任務に嬉嬉として加わり、次々とトゲを生成しては飛ばしを繰り返し、あっという間に壁の亀裂を増やしていった。


オォォォーーーンン!!!


壁が一気にズタズタに崩れかけ、作戦を指揮していた狼王は雄叫びを上げた。


そして狼王はこれが止めと言わんばかりに、周りに十数本もの金色のトゲをブォンと音を立て出現させ空中で停止させた。


ゆっくりと狙いを定めカッと目を見開けば、静止していた金色のトゲは一斉に壁に向かって放たれた!


────


ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!


イバラ狼の強襲が収まったと思ったら、トゲの雨が茶室の壁を撃ち砕く音が聞こえた。


「先輩、凄い音ですよ。壁、いよいよ壊れますね」


「そうだナ。じゃあそろそろボクもぶっ壊そうかナ?ひょいぱく」


え?何だか呑気そうだって?


いやいやいや、こう見えても緊張している方だよ。まぁ、茶室に入ってからはほとんど、穂積がドラグーンで片付けてるからボクはあんまり出番なかったけど、一応裏方作業はしてたからね!とボクは言い訳をしつつ、もう1つひょいぱくっとコンペイトウを食べた。


実はこれ、魔力回復になるんだよ(妄想)



ワゥォォーーン!

ワゥォォーーン!

ワゥォォォーーン!


おやおや、イバラ狼達が随分と興奮してるじゃないか。どうやら突貫工事に目処が着いたのかな?


ガラガラと音を立て崩れる壁。ホコリを撒き散らし視界かが悪いにも関わらずイバラ狼達は嬉嬉として茶室に飛び込んだ!


散々仲間を殺された恨みをぶつけるべく逃げ場のない、狭い部屋の中の獲物を強盗の如く押し入り貪り喰らう!!


しかし、そんな想像した者達は一体は何が起きたのかもわからず、新たに出来たトゲの壁によって串刺しになった。


────


「・・・何だかコンペイトウをこんな風に使うのはちょっとイヤだなぁ・・・」


耳の奥まで轟くイバラ狼達の阿鼻叫喚の悲鳴を聞いて、ボクは背筋がゾゾっと逆撫でされる感覚を覚えた。穂積の作戦とはいえ、我ながら酷い事をしたもんだよ。でも、戦うってこういう事なんだよね。綺麗事はないっていつも思うよ。


ボクがせっせと作った七色のコンペイトウの壁は金平糖城の石垣を作った時と同じように丈夫で、そして鋭いトゲを加えた恐るべき壁だったのだ。


「でも、他にいい方法がないですし、それに死んじゃったらそれまでですからね」


「まぁ、そうなんだけどね・・・」


「さて、この壁を破られたらピンチです。とっとと脱出しましょう」


「・・・ホイきた!」


ドッゴッーン!


パイルバンカーはいとも容易く茶室の壁をぶち破り、脱出路を作った。


けれどボク達は、イバラ狼達を少し甘く見ていたかもしれない。いや、油断はしていなかったんだけどね。まさかそこまで統率が取れているなんて思わなかったよ。


パラパラと壁の破片が崩れる穴をくぐり抜けたらなんと、既に数匹のイバラ狼が待ち伏せをしていたのだった!


「お、おい、不味いぞ穂積!」


「走り抜けますよ!!」


穂積はそう言って正面突破を試みた!ボクもあわて走りだし、ついでにすれ違いざまに1匹の頭をぱこーんと蹴り飛ばした。



茶室の裏は林になっていた。抜けた向こうは、新宿御苑では憩いの場と知られている広大な芝生エリアに出るはず。


イバラ狼の群れはボク達と併走しながら追跡をする。どうやら芝生エリアに誘導しているようだった。


「先輩!どうやら広場でやるしかないっぽいですねー!」


穂積は走りながら言った。


まぁ、やっぱりここで決着を着けるのかなぁ。

実は初めてイバラ狼達を見た時。ほら、カレー屋さんの後で新宿御苑の門からに見たでしょ?あの時、ここでやり合う予感をしてたんだよね。そういうのってたまにあるよね。何か運命を感じる時って。


「穂積!とにかく背中合わせで死角を無くせば、何とかなるよ!きっと!」


「了解っス!」


だけど会話の途中、何か物凄いプレシャーを背後から感じた!すぐに分かった。あの金色のイバラをまとった巨大なイバラ狼、狼王がものすごい速さで追撃を仕掛けてきたんだ!振り向けば、そいつはどのイバラ狼よりも速く、あっとゆう間にボクの後ろにピタリと着いた。


コイツがイバラ狼の王、狼王か。気配は感じていたけど、間近で見るのはこれが初めてだ。体調は3メートルくらいか、身体に巻きついてるイバラやそこから生えてるトゲはボクの腕くらいの太さがある。


ボクは走りながら観察していると、狼王はニヤリと笑った!


ヒュンッ!!


突然狼王がボク目の前から消えた!


頭上からゾワリと悪寒を感じた時には既に目の前に立ち塞がっていた。


一瞬にしてボクの頭上を飛び越えたのだ!


「あッ!!!」


ボクは慌てて急ブレーキを掛けたけど、間に合いそうになかったので、バランスを崩しながらも横に飛んだ!


あっぶないねー!

お口の中に飛び込むところだったよ!


焦っているボクに構わず、イバラ狼の群れはボクの横を通り過ぎ、前を走る穂積を追跡した。


なるほどね。どうやらボク達を分断する作戦だったんだね!


・・・・ヤバイね。怖いけど仕方が無い。


「穂積ぃ、そのまま走れ!ボクはデカイのをやる!」


あーあ、啖呵切っちゃった・・・


こうして、逃げながら戦ってきたボク達はついに追い詰められ、まともに対峙することになった。



どうしよう・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ