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31 ボクと穂積と魔獣どうぶつえん


───新宿

それは駅を中心に繁華街・歓楽街・オフィス街で形成された言わずと知れた大都会。新宿駅東口を中心とした繁華街の規模は日本最大級であり、それ以外にも歓楽街である歌舞伎町や超高層ビルが乱立する西新宿はあまりにも有名だ。


そしてもう一つ、新宿には広大な面積をもつ庭園がある。


新宿御苑。


元々はどこか偉い人の屋敷の跡地だったらしいのだが、現在は一般に解放され入場料を払えば誰でも入れる自然豊かな庭園となっている。


ボク達はこの大都会新宿を砂漠のようにさまよい続け、ついにここ新宿御苑正門前に辿り着いた。


「さて、穂積よ。ついにここまで来てしまったナ」


「ええ、まだ、頭がフラフラしますが、まず間違いないでしょう。ここだと思います」


とある日曜日、お昼の新宿御苑。花見に散歩、お昼寝と、疲れ切った都会の生活に一時の安らぎを求めて大勢の人が集まり思い思いと時間を過ごす。


何だけどね!今日は何故か門は固く閉ざされていた。まるでいかなる人の侵入を許さないかのように。


「つまりここにガーディアンがいるんだな・・・」


────


「先輩、今日予定空いてますか?」


ダンジョンから無事生還してしばらく経ったある日の事、ボクは穂積から連絡を受け取った。


この日、ボクも穂積をみならって何か装備を揃えようと思って、秋葉原で買い物をしていた時のことだった。ボクにはおばあちゃん装備があるからこれで十分だと思ってたけど、やっぱりこの前のダンジョン探索では穂積のアイテムが大活躍していてからね。だからボクも見習おうと思って・・・


ただね、穂積装備ってさ、めちゃくちゃ高いんだよねぇ。懐中電灯ひとつ取っても、以前ボクがホームセンターで買った物と比べ物にならないくらい高い。しかも、何をどう使ったら良いか分からない物ばっかりだし。


結局そんなのに何万円も出せないから、前から欲しかったカセットコンロタイプのたこ焼き器を買っちゃった。ちょうどセールやってたからね!

実は電気式のたこ焼き器はあるんだけど、小玉でしかも火力が弱いから、中がトロトロにならないんだよね。お好み焼きを丸くしたようになっちゃうんだ。


まぁそんなこんなで、今日はタコパ!

戦闘もお料理も火力が命!


・・・ん?何の話だっけ?


・・・えーとまぁ、話を戻すとそんな時だ!穂積が連絡を寄越したのは!


「え?なんだ急に?今日は無理だぞ!」


そんなわけで、今日のボクは完全にタコパモードだからお断りを告げた。

ボクは一人でダラダラとタコ焼きを焼きながらダラダラと映画見てダラダラと過ごしたいのさ。まだ、ダンジョン疲れが取れてないからね。


「そうですか・・・実は少し気になる事がありまして。ほら、あの目玉のことで・・・アレってどの辺にあるんですか?」


おや?そういえばボクにとっては、もはやおなじみの目玉も普通の人には見れないんだよね。ちなみに今はマンホールのフタみたいな歯車で閉まってるけど。


「ん?あっちだな」


ボクは当たり前にあっちを指さした。


「あっちってどっちですか?」


おっと、電話越しだった!


「・・・そうだな、たぶん新宿の辺りかな」


「新宿・・・ということは、目玉の真下は新宿周辺ってことですか?」


「うん、新宿の真上が目玉だと思う」


「そうですか・・・先輩、ダンジョンへ行く前の日、公園で言ってましたよね。こちらの世界に受信機があって、ガーディアンがいるとか・・・」


「それが?」


タコパと何の関係がある?と言うのをグッと堪えるボク。


「つまり、目玉の下に受信機があると思うんです。」


ほほぅ、穂積もそう思ったか、目玉の真下ね。実は、それはありえるんだ。

なぜなら目玉はギョロギョロ気持ち悪いけど、何も一日中ギョロついてるいるわけでは無い。大抵は一点を見つめてるからね。だからボクも何かあるならそこかなぁと目星は付けていたんだ。


ホントだよ!


それでも、正確な位置はちょっと分からないし何よりも危険なガーディアンがいるからね。怖いからずっと保留にしてたんだ。


だから、穂積がその話をした時すんなり受け入れることが出来た。


「深入りは危険だよ。たぶん敵が守ってるから」とボクは言った。


「分かってます。それでも場所位は把握してたいと思いませんか?」


・・・まぁそりゃそうかな。目玉がいつまた動き出すか分からないし。いざという時に、えっ?どこどこ?見たいにウロウロしてたらカッコ悪いしね。それに気になるっちゃなる。敵の手がかりも見つけられるかも知れないし・・・


─────


まぁ、そんなわけで翌日からボク達は新宿を探索し始めたのだ。


穂積はどうか知らないけど、ボクはあまり新宿のことを知らない。確かに都内に住んでますよ。でもね、新宿には年に数回くらいしか行かないからさ。しかも乗り換えで。


だから、敵さんもボクの土地感の働かない新宿に受信機を設置したことは敵ながらアッパレだな。


足立区なら一発で見破るけどな!


とはいえ、敵さん。残念だったナ。穂積の奴がどういうわけか、いかがわしい店にやたら詳しくてナ。繁華街、歓楽街にあっとゆう間にローラーかけよったわ!※1


その結果、ピンクな怪しい所は数える方がバカバカしいくらいあったが、SFファンタジー的な怪しい場所は残念ながら見つからなかった。


それから都庁周辺に目を付けてみたけど、この辺りははっきり言って無理。セキュリティの高いオフィスビルばかりでビルに侵入する事すら不可能に近い。ここに隠されたらお手上げだった。まぁ、敵さんもこんな所に堂々と不動産契約して賃貸するなんて律儀な事はしないよね。

一応、都庁の展望台に登って見たけど、結局、おのぼりさんの観光見たいになってしまった。


そんなこんなで何日も何日も無駄に穂積と過ごし、ついに諦め、もうせっかくだから新宿御苑でのんびりしようと決め、向かうことにした。


そしたらなんと大当たり!


でもね、ここに辿り着くのには色々と苦労したよ。


まず、新宿御苑に向かおうと駅の東南口からテクテク歩いていると、何故かどこに向かっているのかポカンと忘れてしまうのだ!


例えばほら、鍵とかスマホをどこかにポンっと置いて1分後に、あれぇ?何処に置いたっけ?ってなるあの現象!


普通なら不思議に思い、引き返すなり立ち止まって考え直すけど、・・・実はまぁ、ボクにはよくある事なんだ。だからいつも通り、忘れた事なんて、いちいち気にしないでテクテク歩いて行ったわけ。俗に言う、まっいっか!の精神ってやつだな。


でも、不思議なのは穂積ですら途中でどこに向かっているかを忘れてしまったことなんだな。なので、穂積はボクにどこへ向かってるか聞いてきたよ。


でも、その時はボクもすっかり忘れているから、適当に「こっちだよ!」って言うと、納得したのか諦めたのかよく分からないけど、とりあえず着いてきてくれた。


それで何となくまっすぐ歩いていたら正門の前にたどり着いた時、急に思い出したんだ!


そうだった!新宿御苑!


ぱっと頭が晴れると同時に、始めて何かを仕掛けられていたことを認識したわけだ。

ちなみに穂積も到着すると目が覚めたよ。


あの時は二人揃って急に思い出したからね。そのせいでここ、新宿御苑に何かがある事を確信したんだ。


穂積はボクのぼんやり体質が敵の結界を突破した!みたいな事を言っていたけど、残念だけど否定出来なかったよ・・・


────


新宿御苑に到着してボク達は、改めて正門を観察してみれば、おかしな事がいくつかあった。


まず、日曜にも関わらず休業してるでしょ。

それなのに警備員さんとか管理人さんもいない。ちなみに案内表示とかも一切ない。


見るものを威圧するかのようなふんいの鋼鉄の門が固く閉ざされているだけ。


それにこの辺りは人通りも駅前ほどでは無いけど結構ある。なのに、だれも気にも止めないんだよ。ねっ!コレっておかしいよね?


それと、これはボクの分野なんだけど、ここだけマナがやたらと濃い。それにいつも感じるマナと明らかに違う。多分何か特別な魔力が働いているんだと思うよ。


こうしてボク達が出した結論は、認識阻害スキル持ちがいる。それも強力なやつ!ボクの上位互換だ!


─────


「さて、先輩どうしますか?後は侵入するかどうかの二択しかありませんよ」


穂積は正門の隙間から中を覗きながらそう言った。


ボクも穂積の隣で、両手で門をガシッとつかみながら覗きこんだ。


正門の隙間から見える園内は桜並木が続いており、その先はサッカーグランドよりも広い芝生の広場となっていた。


でも、それだけではなかった・・・


「穂積よ・・残念ながら侵入は無理だナ」


なぜって?


だってヤバそうな魔獣さん達がのっしのっしと徘徊しているもん!!


穂積はグチョグチョグリーンスライムを注射されてないからボク達の世界の魔獣は見えないんだと思う。このイバラを纏ったイカついオオカミさん達が!ここからは見えるだけでも二三匹はいる。


もはや間違いない!


新宿御苑・・・ここには何かが隠されている。

問題はここに侵入して、生きて帰って来れるかどうかだな。

おばあちゃんは確かガーディアンがいるって言ってたし。


「穂積、ここはヤバい。絶賛魔獣が徘徊中だ!一旦おばあちゃんに相談しないと、死亡するレベルだよ・・・」


「マジっすか?僕には見えませんが」


「たぶん魔力が無いと見えないんだと思うよ。きっとお前が入ったら透明の狼に一気に食われるぞ」


「・・・撤退ですね」


「うん・・・長いは無用だ!」


しかしボクは怒ったよ!お空だけでなく、のんびりするお庭すらもボクから奪うとはね。


・・ぶっとばしてやる!ボクは拳を握り心に誓った。


「ぶっとばしてやる・・・」


「・・・え?先輩なんですか?」


・・・と思ったらウッカリ声に出てたよ!

穂積はボクから聞きなれない台詞が出たもんだから一瞬耳を疑ったようだ。


「おっとすまんネ、ついつい、力が入っちゃった。てへっ」


「・・・まぁ、とりあえず、ドロシーさんに相談に行って下さい」


穂積はやや思うところがあるのか、ジト目でボクを見ながらそう言った。


「オケオケ、明日朝二で行くよ」


朝イチはちょっと難しいからね!


こうして、もはや魔獣動物園と化した新宿御苑を離れ足立区に戻る事にした・・・


※1 「先輩の話し方には何か誤解を与えるような表現が含まれていますが、僕はネットを駆使して情報を集めました。あしからず、誤解無きようお願い致します」 穂積

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