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26 ボクと穂積のダンジョン探索 ~ おウチに着くまでが遠足だからね ~


パイルバンカーの衝撃は剛鉱石全体に満遍なく行き渡り、粉々に打ち砕いた!流石は信頼と実績のドロシー印のパイルバンカーと言ったところだ!何て言えないよねぇ・・・・あーあ、やっちゃった・・・


振り返り、恐る恐る穂積を見上げると何か言いたそうな目でボクを見下ろしていた・・・


「・・・先輩。そろそろ自覚した方が良いと思いますよ。パイルバンカーは先輩が思っているる以上にヤバい兵器です・・・パワーの調整して下さい!」


「・・・はい。すみません。」


・・・・まぁ、言い訳はしないよ。パイルバンカーで真芯で捉えた時の達成感が凄く気持ちよくて、ついクセになってたからね。

それに穂積の言う通り、そろそろ慣れてきたからパワーの調整も練習しなきゃだね。


「うん、これからは慎重にやるよ。実戦じゃあそんな余裕ないから、剛鉱石は良い機会だよね」


悪いことは直ぐに反省するのが、ボクの良いところなんだな!


「・・・取り敢えず、また見つけましょう。今度は芯をズラして当てる様に心掛けてください。一撃で破壊しなくてもいいですから」


「はーい!」


呑気な返事に穂積は本当に理解しているのか不安に思ったが、今は信じるしか無かった。


────


それからしばらく・・・


ポキン・・・ポキン・・・ポキン・・・ポキン・・・ポキン・・・ポキン・・・ポキ・・・ポキン・・・ポキン・・・ポキン・・・・・・


ダンジョン内に響くポキポキ音・・・


地底湖の青白い光を背景に二人はそれぞれに別れて鍾乳石を手当り次第に折りに折り、折りまくり捜索に当たった。


1時間ほど経つと地底湖周辺には、もはや尖端のとがった鍾乳石の方が見つけるのが難しいくらいになり、ようやく二人は手を止めた。あるいは正気に戻ったと言っても良いかもしれない・・・

二人は当初、鍾乳石を折ることに抵抗があり、その行動は緩慢であった。しかし、しばらくするとポキリと折る時の感触と背徳感がクセになってしまい、次第に目つきが怪しくなり鼻息が荒くなり無言で熱中していたのだった!


そして二人は正気戻った時、何だか恥ずかしい所を見られた様な、いたたまれない気分になりしばらくは目も合わせず、何か作業をしているフリをしながらモジモジし、平常心を取り戻すことに努めていた・・・


それでも結果はしっかり残し、6本の剛鉱石を発見することが出来たのだ!


「えーと・・・随分折りまくったけどこれで6本か。何か共通点があれば、折らなくで済むんだけどなぁ・・」


「そ、そだね・・・流石のボクもちょっと悪い事してる感があるよー。今度、おばあちゃんに聞いてみるね!」


「それがいいかと。さて先輩・・・パイルバンカーの出番です。今度は慎重にお願いしますよ」


「うん・・・!」


実はとても難しけど魔力操作で杭の射出にブレーキをかけて威力を抑えることは出来そうなんだよね。そんな感覚があるんだ。


一番簡単なのはインパクトの間合いをズラす事なんだけど、やっぱりダメかと思うな。変な癖がついちゃったらイザという時に危ないからね。


という訳でボクは剛鉱石を相手に出来るだけ低く構え狙いを定め、穂積は後ろに下がって耳を塞いだ。


ボクは目を閉じ深呼吸をした。そしてパイルバンカーと自分を繋げる白波の腕輪を強く意識しす・・・やがてその意識は腕輪を通り抜けパイルバンカーの繊細で複雑な機構を通り抜けマナの結晶に到達した。


マナとは大気に宿る願い、想いの力。それを集めて液状化した物がエーテル。さらにそれを固め、一定の条件をプログラムされた魔法陣が描かれているスクロールを埋め込まれたものが結晶動力となる。

その結晶にアクセスする為に必要なのが魔力。


つまり、魔力でマナにアクセスする事は、マナもまたボクにアクセスしているという事になる。だからボクの想いも通じるはず・・・!

ボクは目を見開き、剛鉱石の根本の一点を強く睨み狙いを定めた!


「いっくよぉ~!・・・えい!」


ゴギンッ!


高速で鋭く放たれた杭は剛鉱石の根元に命中し、やや甲高い音と共に剛鉱石は根元からはへし折れた。


「ふぅ・・」


パイルバンカーから蒸気が排出され、カシャコンと次弾が装填された。


何だかいつもより魔力を消費した気がする。でも分かったよ。


前から少し気になってたけど、これでボクは確信した。今までは魔導は技術であり単に魔力を込めて兵器を起動させるだけと思っていたけど、魔導技術には人の気持ちを込める余地がある!


そう思った矢先・・・あっ、レベル上がった・・・


うーん、相変わらずレベルアップがいきなりすぎだよな。ファンファーレとか、アナウンスがないから中々ピンと来ないし間も悪い。しかもステータス画面は悪意の塊だし・・・ まぁいいや。愚痴を言ってもしょうがないからまた後で確認しようっと。


「穂積、ボクは何となく分かったぞ。魔導兵器にはな、想いが乗せられるんだ」


「・・・?あまりにも唐突でよく分かりませんが、使用者の意思がある程度反映される余地があるって認識ですかね?」


「・・・?お前の言い方は少し難しいけど、多分そういう事だ。ボクの想いが伝わるんだ」


すると穂積はボクの足をジロジロ見ながらこう言った。


「ふーん・・・じゃあ、ロボット脚も同様なんですかね?」


・・・まぁ、ロボット脚なんだけどナ。でも穂積、いい事言うな!


「やって見る!」


早速ボクは目を閉じ、ロボット脚を強く意識して見た・・・


ボクの意識は自分の脚を通り、ロボット脚全体に伝わると自分の脚の様に感じることができた。そのまま足の裏に意識を集中させ、ホバリングをするイメージをした。

プシュンプシュンと蒸気が吹き出し、身体が小刻みに跳ねる。徐々に力を込めて行くとやがて

身体が浮き出した・・・ただし、フワフワとホバリングしていると言うよりは、空気の塊を踏んで立っているイメージの方が近い。ボクはそのイメージのまま前に歩き出すと、空中を歩行する事に成功した!


「おっ、穂積よ。ボクは今空を歩いているぞ!スカイウォーカーだ!」


「先輩、目は開けた方がいいと思いますよ」


「え?なんて?」


ゴチン!


天井からぶら下がっている鍾乳石に額をぶつけたボクは確かに目は開けた方がいいかもと思った。それにしても相変わらず締まらない話!


「まぁ、上出来だと思いますよ」


「う、うん。でも魔力の消費量結構あるんだよね。レベルアップと練習は必要だな」


「今度は蹴りで剛鉱石をへし折って見ませんか?」


「うん!それボクも今考えてたとこなんだ確か後5本くらいあったよね」


ボクは既に見つけてあった剛鉱石の前に立ち、両脇をグッと締め腰の辺りで拳を握りしめ、空手の様な構えを取り、剛鉱石を睨んだ。


深呼吸をして剛鉱石の根本を切断するような蹴りイメージを固めた。


それから、えい!っと掛け声と共に足刀をお見舞した。


放たれた足刀に爆音は無く鈍い音を出すのみで剛鉱石はピシッと亀裂が入り折れた。


「先輩、凄いじゃないですか!力に無駄がない一流の格闘家の様な蹴りでしたよ!」


珍しく穂積が興奮して言ったのを聞いて、ボクは少し嬉しかった。それもそのはず、今までの蹴りはとにかく、ロボット脚の出力に任せての

力技だったけど、今の蹴りは何だか技術に近いものだった。でも、ボクがやった事は、普段のぼんやり妄想の延長みたいなもので、格闘マンガの蹴りのイメージを保ちながら蹴りを放っただけである。それをロボット脚が実際のボクの蹴りをイメージに近づく様に補ってくれたんだよね。

なるほど、これはぼんやり妄想家と結構相性がいいかもしれないね!


ボクは喜びのあまりちょっとだけ調子に乗って、その場で宙返りした!


もちろんスタっと着地出来たよ!


「じゃあさ、穂積!この調子でどんどん行こうか!」


「ういっす。でも先輩、こういう時こそ慎重になって下さいね」


「はいはいっと!」


こうしてボクは残りの剛鉱石も蹴りやパイルバンカーの練習を兼ねて次々と片付けて言った。


おっ、またレベルアップした気がする!


────


「かれこれ4時間くらい潜ってますね。帰りも2時間くらい掛かるとすると、そろそろ潮時じゃないでしょうか?」


ボク達は剛鉱石を全部転送し、地底湖まで戻ってくると、一休みした。ボクはぼんやりバーガーを齧っていると、不意に穂積がこう言ったのだった。


実はまだまだ動けるんだ。でも、死に戻りなんて無いから余力のあるうちに戻らないと危険だから穂積の意見に賛成だよ。


ボクはぼんやりバーガーをお水で流し込み、コンペイトウをパクッと口に放り込みスタっと立ち上がった。


「うん!じゃあそろそろ帰りますか!」


「来た道を戻るだけですが、どこに魔獣がいてもおかしくないので、十分注意して帰りましょう」


こうしてボク達は地底湖を後にして帰還するとこになった。帰り道にある鍾乳石にもきっと剛鉱石混じっていると思うんだけど、ポキポキ折って探す事にちょっと気が引けるんだよね。流石の穂積もそう思ってるようで、探す素振りも見せない。今度、おばあちゃんに聞いてみるのもいいかもしれないね。もっと環境に優しい方法があると思うよ。


★ちなみに異世界流は爆風で辺り一帯を吹き飛ばし、生き残ったものを剛鉱石と判断する選別方法を取っていた・・・


────


それからしばらく歩くと、通路の出口が見えてきた。確かこの先に広いホールがあるんだよね。地底湖も綺麗だったけど、このホールもライトアップしたらお金取れるくらい綺麗だよな!と、そんな事を考えながら出口に差し掛かると穂積はポツリと呟いた。


「何か騒がしいですね・・・」


そうなのだ!何だかホールが騒がしいのだ。


「コンサートかな?」


「そうでしょうね。ただし、主催は魔獣ですが・・・」


「だよね~」


ボクはそう言いながら、通路の出口に近ずき、そぉっとホールを覗き込んだ。


「うわぁ・・・」


ボクは思わず呻き声を上げてしまった。


ゴーグル越しに見える光景は、数えるにはバカバカしいくらいの真っ赤な斑点が蠢き飛び交う。コウモリ魔獣の群れだった!


「こりゃもう、コウモリの竜巻ですねぇ」


ボクの頭の上から穂積もひょっこり顔を出すなりそう言った。


「それにしてもコイツら何で大暴れしてるんかね?何かあったかな?」


「うーん。それについては言い難いけど僕らのせいかと思います。爆音出しまくってる人は誰でしたっけ?」


「・・・ホントダヨネー。ワタシシラナイアルヨ!」


ボクは口を尖らせ、胡散臭い台詞を言ってみたけど何の解決にもならなかった・・・


「はいはい。取り敢えず、コウモリ旋風が本日のボスキャラってとこですかね。これをどうにかしないと帰還は不可能です」


うーん。困ったね・・!


走って切り抜ける?穂積を抱えてシールドで防御しながらダッシュするか?

でもそれだと追跡されて地球への侵入を許してしまうかもしれない。

それにズッコケたらたぶん死ぬ。


この賭けに出るのはまだだ!最後の手段。


「ホールには出れないでしょうねぇ。となるとここで迎え撃つしかありませんね」


穂積もボクと同意見のようなので、ボクは無言をもって同意した。

とは言え、ボクには範囲攻撃の手段がないんだよねえ。だからボクは穂積に聞いてみた。


「穂積、何か攻撃手段ある?全体攻撃的なやつ。ちなみにボクはないゾ」


ボクが聞くと穂積は早速バックの中を漁り何か利用できるものがあるか確認をした。


「うーん、ガスバーナーとスプレーで作る火炎放射器はあるんですけど、この数は流石に相手に出来ません。それと燃料用のホワイトガソリンがありますが、瓶が無いので火炎瓶は作れませんね。まぁ、この距離を埋める投射手段もありませんが・・・」


なるほどー。穂積の話を聞いでボクは現在の状況をまとめてみた。

天井までの高さは約30メートル。敵はコウモリ魔獣の群れ。中心はもはや塊と言っても過言ではないくらいだ。

それにコウモリは超音波という優れたレーダーを持っており、蹴りやパイルバンカーがヒットする可能性はほとんど無い。仮にヒットしたとしても結局は数の差で負ける。

ガスバーナーも同様だ。牽制は出来ても数の差を埋めることは出来ない。


つまりこうゆう事だ!ボクの切り札を使う時が来たようだな!


それは勿論コンペイトウ魔法!


あっ!コンペイトウ如きで何が出来るって思ったな?それは次回のお楽しみ!


ひょいパクっ!

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