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23 ボクと穂積 ~こんにちわダンジョン~


とにかく何が一番辛いかと言うと、お布団から出ることなんだよナ。特に寒い日は。

でも今日は穂積とはいえ約束をしてしまっているからには、ひょっこりカメさんをしてる場合ぢゃない。


さっさとシャワー浴びて着替えよう。

今日はダンジョン探検初日記念日だからね!ちなみに前回のはノーカン。別に探検した訳じゃないからね。


やっぱりダンジョンと聞いたらワクワクするよ。きっと穂積もそきっとそうかなぁ?


いつもより気持ちが先走り高揚感が溢れるけれど装備はしっかり整えなくちゃね!そう思い、選んだ服は白シャツにカーキのブルゾン、左手に白波の腕輪。

デニムのショートパンツと黒のニーソックス。右脚にレッグバック。それから魔道ブーツ。

帽子とゴーグル。


後はリュックに水筒とポテチ、念の為ぼんやりバーガーも入れとくか。甘いものはコンペイトウがあれば大丈夫!

でも・・・チョコも食べたくなるかもね・・・これは浮気じゃないよ!コンペイトウも好きだけど、やっぱり王道のチョコは外せないもんね。・・・すまんね。コンペイトウよ。


という事で コンビニで買っとくか。



・・・この時、このチョコバーがボクの命を救うとはのは知るよしもなかった!



・・・なんて事があるからね!二個買っとこ♪


「いってきまーす!」


ボクはいつもの様に誰もいない部屋にご挨拶をした。


────


コンビニに寄って、トコトコと橋の下に向かうと、原付のそばで穂積が既に待っていた。


「おはよう穂積!」


「おはようございます、先輩・・・」


ボクが橋に到着したのは10時半近くだった。すでに穂積は到着していたらしく、少しイラッとしていた。後で聞いたんだけど、10時前には既に到着していたらしい。すまんね。穂積よ。


ちみにどうでもいいけど、穂積の服装はポケットの沢山付いたサバイバルジャケット、膝当ての付いたカーゴパンツ。どちらも黒で統一されており、丈夫そうな素材だ。靴はミリタリーブーツを履き足首にもナイフを装着してある。

ベルトにスタン警棒を止め、腰と並行に収められたのは大振りのサバイバルナイフ。左手にカタパルトを装着し弾丸には矢じりを使うそうだ。

頭にはケブラーの防弾ヘルメットに暗視ゴーグル。

背中のリュックサックには携帯食料と50メートルのザイル、ガムテープ。その他医薬品などが詰まっている。


「穂積お前、凄い格好だナ・・・よく通報されなかったナ・・・」


「装備はさっき身に付けたばかりです。通販じゃ間に合わなかったんで、秋葉で揃えました」


・・・相変わらず秋葉って凄いね。メイドさんとおっきい子供の街かと思ってたけど、人ひとりを一日で不審者を仕立て上げるポテンシャルもあったんだね・・・どうりで警察も多いわけだ。


ボクは胡散臭く穂積を見てると、穂積も反撃してきた。

「先輩こそ、旧時代的なスチームパンクですよ」


何だ?嫉妬か?カッコイイだろっ!


そんなこんなで、ボク達はお互いの装備にやいのやいの言いつつ橋の下に向かったのだった。


───


川の辺は住宅地のためか朝の通勤通学か、夕方の帰宅時以外はあまり人通りがなく、ドブ川のトンネルにすんなり行き着く事が出来た。


川底を歩いている時、ボクとダガンが死闘を演じた場所を通過し、あの夜の事を思い出した。


理性が吹き飛び野生動物となったボクと、理性を取り戻した野生動物だったダガン。ボク達の交差は短く、そして、二度と出会うことはないけれど、この先のボクの生き方に強い影響を残した。


あの時の気持ちが甦り、何だか少しだけ真剣な気持ちになった・・・


────


トンネルに潜ると、相変わらず薄暗く臭い。緑色の藻見たいなのが地面に生えていたり、はたまた天井から垂れ下がっていたり。ピチョンピチョンと水がしたたる音が不気味さを演出させているけれど既に慣れてしまったのか、もしくは緊張しているせいか、前回来た時のような不快感や恐怖心はほとんど感じなかった。


しだいに視界が暗くなってきたのでボクは早速ゴーグルを掛けた。するとスキル効果なのか、視界はとてもクリアになり、懐中電灯は必要ないくらいだ。オマケに魔獣探知も付与されてるから不意打ちも避けられそうだね。


よし!前回よりかなり落ち着いて行動できているな。ボクはそう思い、無事侵入てきた事を確認した。


隣を歩く穂積も暗視ゴーグルを装備した。眼がビヨーンと飛び出てるように見えるし、強盗が身に付けるようなフェイスマスクもしてる。何だか可笑しいけど、全然笑う気になれないな。それだけ真剣なんだから。


そんな穂積にボクは言った。


「穂積、ボクが前に出るね。このゴーグル、スキルが付いてるからよく見えるんだ。後ろよろしく」


「リョーカイ」


穂積は周りを警戒しながらそう呟いた。


ボクは前を歩き、早速、くの字通路に差し掛かる。ボクのコンペイトウ魔法の残骸が少し残っていたけど、穂積が事後処理してくれたせいか、ほとんど風化していた。


この辺りはまだ平気だな。地獄の鬼ごっこで散々走り回ったから。ボクは前回の出来事を思い出しながら慎重に歩いていると、分かれ道にやって来た。左に行くとダガンの住処だ。今回は右の道、ダンジョンへ続く道を進む事が目的だね。


「穂積、チュートリアルはここまでだよ・・」


「OKです」


そう言いながらボクはロボット脚を起動し、白波の腕輪をシールドへと変形させた。


穂積もまた左手のカタパルトを起こし、攻撃手段を確認している。



しばらくの間、ボク達はどんどん先に進んだ。硬い岩盤の上を歩いてるにも関わらず、ロボット脚はそれほど音を響かせないのがとても助かった。ノイズキャンセリング機能も付いているようだね。まぁ、今どきイヤホンにも付いてるから当然かな。


やがてダンジョンの奥の広場に辿り着ついた。前に少しだけ来たことあるけど、やっぱり広い。思わず大きな声を出したくなるような広大な広場だ。天井は高く、気温もグっと下がって冷え込みんでいる。それに入ったら迷いそうになる横穴もたくさんある。鍾乳石が垂れ下がり、巨大な石柱があちらこちらから生えている。地下水溜まった水たまりもあり、蒼く神秘的な輝きを放っている。


ボク達は早速周りをキョロキョロと見渡し索敵を開始した。


────


先に何かを見つけたのは穂積だった。


「先輩、上。何かいます」


上?ボクは穂積に言われて上を見ると、赤い点々がポツポツと飛んでいるのを確認した。


赤い反応・・・魔獣だ!


ボクは注意深く頭上を観察すると、天井にも赤い反応が張り付くように確認できた。

多分コウモリの魔獣かと思う。大きさはここからだとちょっと確認出来ないけど、襲われたら厄介だな。


「どうやらこちらの様子を伺っているようですね」と穂積。


「そうだね。警戒だけはしておこうよ。それよりもボクはこの水たまりが気になるんだ。さっきから青く光ってる・・・多分素材だよ」


───結晶繊維

水面に蜘蛛の糸のように広がって成長する繊維で、束ねると強靭な繊維とになり、主に駆動部やメカの関節を繋げるために使われるらしい。


ボクは神秘的に光る水面にゆっくりと両手を入れすくい上げた。するとキン冷えた水の中から破れた蜘蛛の巣のような繊維が採取できた。


「穂積、見て。いきなりゲットしたよ!」


「うーん、全然詳しく無いけど、質はイマイチな、感じがしますねー」


穂積は身も蓋もなく残念な感想を言ったけど、実はボクもそう思う。


「まぁ、幸先悪くないって事でどんどん行こうか!」


そう言って、ボクはさっそく、素材第一号を右脚のマジックバックに当て、転送した。


「そうですね。所でどっち行きます?見た感じまともに通れそうな道は3つあります」


うーん。横穴はいくつもあるけど、トンネルと言えるような穴は、正面と向かって右側。それと、右のトンネルの隣にある登れそうな崖を10メートルくらい登った先のトンネル。


上は却下だな。落ちるかもしれないし、遠距離攻撃の手段は穂積のカタパルトしかないから、コウモリ魔獣に襲われたらひとたまりもない。


となると、ここは王道の正面だな。


「穂積、右のトンネルに行こうか」


正面をボクが選んだって事は当然右が正解だよね。かたるまでもないか・・・


「リョーカイです。情報が何もありませんからね。とりあえず右に進みましょう」


穂積はそう言って、バックの中からラッカースプレーを取り出し、きた道に大きく「出口」とスプレーした。


それからボク達はコウモリ魔獣(仮)を刺激しないように、静かに広場を横切り、右のトンネル前へと辿り着いた。


そのトンネルに穂積は「1」とスプレーした。どうやら目印のようだ。


「穂積、お前頭いいナ」


ボクは素直に感心した。


「先輩こそ、迷ったらどうするんですか・・・」


あっ!そう言えばあんまり考えてなかった。危ない危ない。


「・・・まぁ、いいや。進みますか!」


ボクはお茶を濁しつつ、さっさと進んだ。

穂積の変な物を見るような視線を感じたけど、気にしないことにした。気にしたら負けだからね!


────


右のトンネルの道幅はとても広く、大型のトラックでも余裕で走れるくらいの広さがあり、至る所に鍾乳石や水の溜まった石のお皿が並んでいた。その水溜りの中には時々結晶繊維が見つかるけどやはり形の良いものは無かった。


しばらく進んでいると穂積ポツリと呟いた。


「やはりここは秋芳洞に似てますね・・・」


「あきよしどう?」


「山口県にあるとても有名な鍾乳洞のことです」


「へー、お前物知りだナ」


「・・・それくらい知っていてくださいよ」


何だかさっきから穂積に関心ばかりしては、おバカさんのレッテルをぺたぺた貼られ続けるループを陥ってる気がするナ。これは不味いナ。


「あ、秋芳洞だろ!知ってるよ!穂積を試したんだから・・・あれ・・?」


ボクが華麗にとぼけようとした時、通路の左カーブの影から赤い影が見えた!


「・・・ほ、穂積・・・魔獣いる」


「どこです?」

穂積は少し険しい目つきになった。


「通路の正面。カーブの先、左。大きな岩二個」


穂積に情報だけ短く伝える、ボクはゆっくり近ずいた。

そこには真っ赤に反応した2メートルくらいの丸形の岩があった!


一方、穂積の目には単なる岩にしか見えなかったが、よく見ると確かに不自然だと思った。この辺りは鍾乳石が多く、石はどれも尖っているが、この二つに関しては鋭利というよりは、やや丸みがあった。


「どうやら擬態化してる様ですね」


ボクはギタイカ?と質問するのをぐっと堪え黙った。意味はよく分からないけどカメレオン見たいな奴って意味だとりかいした!


「たぶん通り過ぎようとしたら不意打ちを食らわすタイプの魔獣ですね」


「えー!なんで分かるの?道端でお昼寝してるだけかもよ?」


「道端でお昼寝する奴がどこの世界にいるんですか?」


「何だとー!ボクをディスってるのか?」


「・・・そんな事はありませんが、兎に角ここは修羅の世界です。それに先輩の様なのんびりした魔獣だったら、何処かに隠れてお昼寝するでしょ!これは待ち伏せと考えるのが妥当です!」


と、穂積は少し鼻息を荒くしながら言った。


「まーまー落ち着け穂積よ。何となく理解したぞ」


確かに魔獣だらけのダンジョンの道端でお昼寝する奴なんていないよね。あれは待ち伏せだろうね。そうと分かれば・・・


「じゃあ、ボクが先手必勝を食らわすよ」


「出来ます?」


「任せて!」


そう言ってボクは、ふんふんふーん♪と鼻歌を歌い、上目遣いでキョロキョロしながら、岩に近づいた。


何にも気づいていないおバカさんの振りをしつつも、後ろで組んだ両手は、着々とパイルバンカーに形状を変えつつあった・・・


策士でしょ!?


やがて、岩の魔獣がパイルバンカーの射程に入るとボクは立ち止まり・・・


「これはこれは、立派な岩だねぇ!スゴいねぇ・・・」


ボクはペタペタと触りながら関心したフリをした。そして・・・・


「えい!」


ドッゴッーーン!!!


必殺・・・さりげなくこんにちわ!パイルバンカー!


凄まじ振動と轟音がダンジョン内に響き渡り、天井からパラパラと破片が落ちた・・・


・・・決まった!

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