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21 洞窟大冒険はじまるよー!準備編


───ローレンハット大洞窟

全長600キロ以上と推測されるこの大洞窟は、上層と水中洞窟である中層、煉獄と呼ばれる下層に分けられている。


上層は主に鍾乳石の洞窟で、資源採掘や魔獣退治によるレベル上げに適しており、最奥には古代遺跡のダンジョンもあるらしい。


中層は水中呼吸の手段を得られなければ訪れる事は不可能とされており、深部には水中都市も確認されている。


下層の煉獄はその名の通り地獄の炎に包まれたマグマ地帯であり、生身の人間には到達不可能とも云われる。


中層と下層はその到達難易度故に、訪れるものは少なく未だに謎が多い。それ故、訪れる者の大半は上層の探索者であった。


魔導技術の発展は、この洞窟の貴重な鉱物資源や魔獣素材無くしてはありえないと言われるほどで、特に上層の採掘クエスト等は半人前冒険者の主な稼ぎ場となっており、冒険者をやるならとりあえずローレンハットへ行け!と言われるほどであった。

ちなみにダガンはそんなローレンハット大洞窟の上層と中層の間を根城とするネームド魔獣として恐れられていた。


と、ここまでおばあちゃんの話を聞く限り、どうやらボクが見つけた洞窟は、とんでもないダンジョンだったようだね。うっかり突入しなくて良かったよ。ほんとに。


「でも大丈夫かな?ボク、絶対道に迷っちゃうよ。それにまた、ネームド魔獣が出たら今度こそおしまいだよ」


この不安は全くもってその通りなのだが、もちろんドロシーには解決策があった。ニヤリと笑うドロシーはいつもの古ぼけたブリキの箱をガサガサと漁りだし、いくつかの魔道具を取り出した。


しばらくして、机の上に置かれたのはゴーグル、ブーツ、レッグポーチ。それといくつかのポーションだった。


むむむっ!これはもしや!探検セットでは!?

ボクは机から身を乗り出し興奮気味に尋ねずにはいられなかった!


「お、おばあちゃん・・・これは何かな!?」


「うむ、ワシの特製探検セットじゃ!」


ビンゴ!!


B・ I ・N・ G ・O♪ボクの頭の中でビンゴの歌が流れ、嬉しさのあまりにへら笑いを浮かべた。


「お前さん大丈夫かえ?」


おばあちゃんはボクをちょっと心配そうに見ていたが、ボクの反応におばあちゃんもまんざらではない様子で嬉しそうだった。


「うん!大丈夫!」


「どれ、1つずつ説明しておこうかのう。まずはこの魔導ゴーグルじゃ」

そう言って、ドロシーはゴーグルを手に取った。

ゴムバンドに丸型レンズ付きの真鍮色のフレーム。そこには小さな緑色の結晶が埋め込まれた、ヴィンテージモデルのゴーグルだった。


「このゴーグルはのぅ、いくつかのスキルが付与されておる」


あっ!スキル!


そう言えばあったね、そんなの。ボクは確か認識阻害(小)とリンキングだっけ?リンキングはともかく、認識阻害は単なる悪口かと思ってたよ。確か取るに足らない低俗なおバカさんと思われる呪いだったような・・・

うーん、何だかスキルって未だに実感がわかないんだよね。


おばあちゃんの次のセリフは、ボクのそんなネガティブ思考を払拭するようなものだった。


「このゴーグルはのぅ、「探知」と「猫目」スキルがついておる。探知は魔獣探知と鉱物探知があってな、魔獣探知は魔獣を見つけると赤く表示する。鉱物探知は事前に登録した鉱物を見つけると青く表示するのじゃ。今回は剛鉱石と結晶繊維が青く表示される。それと、猫目スキルはいうなれば暗視効果のことじゃな」


「なるほどね。スキルって、色々便利なのもあるんだね」


ボクはゴーグルを受け取り、装備してみた。うん!中々かっくいいな!

キョロキョロと見間渡してみれば、ダガンの爪がぼんやり赤く光っていた。


フムフム、魔獣はこんな感じで見えるのか。

コレで多分擬態化してたり隠れてる魔獣も見つけられそうだね!


「次は魔導ブーツじゃな。これは、凄いぞ」

ドロシーはそう言ってニヤリと笑った。


魔導ブーツは黒を基調としており、ふくらはぎ辺りまで丈があるエンジニアブーツに似ていた。足首の辺りと甲からくるぶしにかけて二本ベルトがあり、スネの部分に真っ赤な結晶が埋め込まれていた。


「とりあえず履いてみなされ。それから結晶に魔力を込めなさい」


「はい!」

ボクは運動靴派だからあまりブーツは履いた事ないけど、意外にも軽くてインナーソールもとても柔らかく履き心地は良かった。

それからボクは腕輪と同じように、足にある結晶に意識を集中して魔力を込めた!


「えい!」


一瞬フワッと浮遊感のようなものを感じたと思ったら結晶が輝き、足元に魔法陣が出現した。それから、ブーツはカチャカチャと音を立てると金属が生成され、足の先から膝の辺りまで這うように広がっていった。そして、現れたそれはまるでロボットの脚のようだった。靴底はやや三日月形か木馬の足の様に反り返り、爪先はハンマーの様にたいら、かかと靴底には噴射口の様な穴が二つ空いていた。


「おばあーちゃん!!ボクは今日、ロボットになったよ!!」


あまりのかっこよさにボクは気絶しそうになったけど何とか持ちこたえた!


見た目は足元が反り返っているせいか、バランスが悪そうだけど、内部にはいくつものギアが噛み合っており、グラグラ動くことはなく、ぐっと踏み込むことが出来きた。


「すごいじゃろ!これはな、高く跳んだり宙を蹴ることで空中戦を可能とした魔導ブーツじゃ。飛翔魔法に対抗することが目的ではあるがまだ飛行には程遠くてな、試作段階じゃ。因みに爪先のハンマーで強力な蹴りをお見舞することが出来るぞい!」


十分だよ!むしろ宙を蹴る方がロマンあるよね。

ボクは空中を駆け抜け強力な蹴りを放つ想像するだけで口からブクブクと泡を吹くくらい興奮した。


ドロシーはその様子を満足そうに見てから、話を続けた。


「ただし、練習が必要じゃぞ。一気に跳躍して、そのまま落下したら骨折じゃすまんぞ」


あっそうだよね!それに、急に止まれずウンチとか踏んだら死ぬもんね!


「わかった!練習するよ!」


ボクは一生懸命練習することを誓った。


「ふむ、次はレッグポーチじゃな。右足に付けてみなさい。」


「はーい!」


革製のレッグポーチには二枚の歯車とその真ん中に、無色の結晶が埋め込まれていた。ジッパーを開けてみれば、ポーチにしてはあまりにも収納容量は小さく、スマホをひとつ入れるだけで精一杯だ。


「おばあちゃん。これ動きやすいけど、あまり入らないね」


「そうじゃな、ポーションを入れるにはちょうど良いんじゃがの。実はなこれ、マジックバックなのじゃよ」


まじっくばっく?!!


キターー!!!キタキタキター!!!


「知ってるよ!!四次元空間にしまうんでしょ!?」


こんなの常識だよね!


「ほー、お前さんの世界にはそんな便利なものがあるのか!?凄いのぅ。でもこれは、ちと違うのじゃ。設定した座標に物を転送する装置じゃ」


「なるほど!よく分からないや!」


おばあちゃんはちょっと誤解しちゃったけど、まぁいいや。どうやらあのマジックバックとは勝手が違うようだ。


「つまりじゃな、転送したいものをポーチの結晶に当て魔力を込めれば、ワシの倉庫に転送される仕組みじゃ。因みに取り出すことは出来ん」


つまり、一方通行のマジックバックというわけね。残念ながら、バックからテトラポットとか取り出して質量攻撃とかは出来ないんだ。でも便利だね!


ボクは試しにコンペイトウを生成し、手を結晶に当てながら魔力を込めた。


すると、手からコンペイトウの感触がスっと消えた。どうやら結晶に直接触れなくても転送されるらしい。


「なるほど!理解したよ」

これで、剛鉱石と結晶繊維を集めればいいんだね!


「うむ。素材は出来るだけ多く回収してもらいたいが、危険を感じたら速やかに撤退じゃ」


「はーい!」


─────


こうして手に入れたボクの装備は、魔導ゴーグル、白波の腕輪、レッグポーチ型のマジックバックに魔導ブーツとなった。それとポーションが三本ね。例によって試験管に入っているから、レッグポーチに入ったよ。


後はそうだねぇ、自宅にあるリュックサックのお水とお菓子、サバイバルキットを入れとくか。食料はもちろんコンペイトウ!食べ放題だよー!


ドロシーはどうやら嬉しそうに装備を確認しているのを見て気を良くしたのか、やや大きめのハンチング帽を用意した。


「これもやろう、ゴーグルに合うはずじゃ」


「ありがとうおばあちゃん!これは何が出来るの?」

ボクは興奮しふんふんと鼻息を荒くしながら聞いた。


「これは、ただの帽子じゃ・・・」


流石のドロシーも若干引き気味になり、少々アタマがおかしい人を見るよな目付きになってしまった。


────


魔導技術が本格的に発達し半世紀が過ぎた今日でも、全身魔導装備というのはまだまだ馴染みが薄く、使いこなせる人物もそれほど多くはなかった。

にも関わらず、その性能に好奇心を持ちあっさり使いこなす姿を見て、ドロシーは感心した。

「ふむ、魔導具との相性はとても良さそうじゃのう。恐らくお前さんの世界は科学技術が発達している事が起因じゃろう。」


「へーそうなのかなぁ・・・」


そう言われてもいまいちピンとこないボクであった。だってさ、比べる相手がいないからね。今のところ、ナギサとミナモとおばあちゃんでしょ。みんな底知れないメンツばかりだし。


「その変わりスキルや魔法は不得手のようじゃな。普通はレベルアップや訓練でそれなりにスキルは身につくはずじゃし、魔力も今ひとつだからのぅ。どうもお前さんはマナのない世界から来たことが影響しとるようじゃ」


「でも魔導具はちゃんと使えるんだよね。だから大丈夫だよ!・・・あっ!そう言えばおばあちゃん。おばあちゃんは何でボク達の世界に詳しいの?」


実は今までずっと気になっていたんだよね。おばあちゃん時々、ボク達の世界のことを当たり前のように話すからさ。


「そりゃ、ワシらの世界がお前さん達の世界を侵略しとるからな。ワシらはあらゆる情報を収集し研究しておる」


「えっ!?おばあちゃんも、侵略者なのっ?」


「ちと誤解があるようじゃな。正確にはワシらの世界のある一派が侵略を支持しておる。ワシ個人は反対じゃ。それ故にお前さんに手を貸しておる」


なるほどねぇ。どこの世界も一筋縄には行かないんだね。


「うーん、やっぱり気になるな、その扉の向こう側・・・」


そう言って後ろの固く閉ざされた扉をボクは悩ましげに見た。


「・・・そうじゃのう。じゃが、今はまだ早かろう。まずはお前さんの世界の危機を止めることが先決じゃ。ワシも手助けしてやりたいのは山々なんじゃが、そちらの世界はマナが薄くて力が発揮出来んのじゃて。それにしがらみもあるからのぅ」


そだね、一歩ずつ進むしかないよね。

まずは魔導具を使いこなして、素材クエをクリアーしよう!

それで、ダガン装備を手に入れようか!


「じゃあ、おばあちゃん!ボク、行ってくるね!」


「うむ、気を付けてな。何かあったらすぐに逃げるのじゃよ!」


「はーい!」


ボクはそう言って、時空の裂け目をくぐった。


────


一人になったドロシーは次元の裂け目をジット見つめ、こう呟いた。


「やれやれ、またしても嘘を付いてしまったわい・・・」


実はダガンの装備を整えるくらいの材料は充分に用意されていたのであった・・・。


───剛鉱石

あらゆる魔導具の基本素材となる鉱石で、需要は高いが比較的安価に取り引きされている。最も純度の高いものは貴重とされている。


───結晶繊維

主に水面に浮かぶ蜘蛛の巣のような結晶の糸であり、加工し束ねると強靭な繊維となり、マナをよく通す性質からメカの駆動部や神経としてよく使われる。

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