14# リローデッド
ダガンは目の前で情けなく崩れ落ちるように座り込む侵入者に非常にイラついていた。
この侵入者は弱そうな風格のくせに、必殺の攻撃を二度もガードしたあげく意外にも鋭い威圧を放った。
それなのに・・・それなのに!言葉を交わしただけで、勝手に戦意を無くし、あげく情けない面でヘラヘラ笑いながら泣きやがる!
久しぶりにホネのある奴かと思ったらこの体たらく。
全く軟弱!軟弱者めっ!
ダガンは少しでも好敵手として認めた自分がバカバカしくなった。
・・・だから、こいつは絶対許せねぇ。ぐちゃぐちゃに引き裂いて下水に流してやる!!
そう思ったダガンはくだらないゴミを見るように侵入者をジット凝視した・・・
・・・・しかし何故か、この鼻水垂らして阿呆面で虚ろな瞳の軟弱者の侵入者を見ていると、殺す気が失せる。
このままズタズタに切り裂くのは容易いが、戦士としての誇りがそれを許さないのだ。
全く何なんだ!こいつはっ!・・・くそっ!忌々しい奴め!
「オマエ!ナニヤッテル!カマエロ!タタカエッ!!!!」
ダガンは何故か言葉を発せずにはいられなかった。それは自分の意図したわけ出なく、無意識に自動的に放った言葉であり、自身も驚きを隠せなかった。
・・・我は何を言っているんだ!
と、思いながらも、何故かこの軟弱者を見ていると怒鳴らずにはいられなかったのだ。
そして、ダガンは苛立ちを吹っ切るように水弾を放った!
────
ボクはまるでスローモーションで飛んでくる水弾を見て、コレで終わりと思い・・・安心した。
これであの場所に帰れるんだね。ボクだけの場所。きっとミナモが白いテーブルセットの所で待ってるよね・・・
今度は無視しないで挨拶しなきゃね!!
ミナモ・・・待っててネ・・・
「ドッシャッン!!」
直撃したバケツ1杯分くらいの水弾は頭を吹き飛ばす事なく顔面ではじけ、衝撃と水を撒き散らしボクをびしょ濡れにした!
ダガンのほんの少しの心の衝動が水弾という衝撃を生み出し、それが打つべき物に衝突し、取り巻いていた死の匂いが吹き飛ばされ、新たな可能性が生まれた。
数多の敵を殺してきた必殺の水弾は初めて命を救う目的で放たれたのだった。
・・・あれ?生きてる?何でかな?
びしょ濡れでペタンと座り込んでいるボクは水圧の衝撃でクラクラと混乱している時、半魚人はまた怒鳴り始めた。それはまるでダムが決壊したかのように一方的に身勝手に発せられた言葉だった。
「オマエ!ワレノコウゲキ、ウケテ、マダ、イキテイル!オマエハ、せんしダ!タタカエ!!!」
ボクは半魚人が何を言っているのか全然わからなかった。いや、もちろん言葉をは分かるよ。
ただね、せんし?戦士は戦う?
戦士ってなんだ?
日本にいて戦士なんて言葉、普通は使わない。
だから、「戦士」が何かなんて考えたこと無かった。
怒り狂い今にもボクを引き裂こうとしていた半魚人が、なぜボクに戦うこと強制するのか理解できなかった。でも・・・何故か戦士という言葉は何故かボクの心に響いた。
「・・・ボクは戦士?」
だから思わず問いかけてしまった。
「ソウダ!せんしハ、シンネンヲモッテ、タタカウモノ!ダカラ、オマエ!タタカエ!!!」
ボクは戦士なのか・・・戦士とは信念を持って戦う人の事なんだ。ふーん。
あっ・・・
突然今までの記憶が脳裏に過ぎった。
ボクはミナモと約束した。一緒に行くって。
ボクは最強の力を手放した。自分の力でやるって決めて。
そんなボクをおばあちゃんは厳しくも助けてくれた!
そしてボクは白波の腕輪とコンペイトウ魔法を授かった。
ニワトリさんはボクの糧となった。
そうだ!!これはボクが選んだ道なんだ。ボクの信念の結果だ!
ごめん!ミナモ!ボク、死んで一緒になろうなんて思っちゃった!キミは今、もう一度出会うために生きているんだよね!
ミナモにこんな情けないボクを見せられないよ!自分の力で頑張っるて決めたのに。ミナモと一緒に冒険するって決めたのに!
本当にごめんなさいっ!!
何が正しくて何が間違ってるとか分からないけど、ボクは託されたんだ。おばあちゃんから白波の腕輪を。ニワトリさんから命を。そして、マナから願いを!やらなきゃ!全部やるだけやろう!
それからボクはゆっくりと立ち上がり再びシールドを構え、半魚人を見たその目には、恨みや憎しみは無く、託されたものを絆ぐ想いのみが秘めていた。
そうだ!闘わなくっちゃ!!
「来い!半魚人っ!!」