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『水面ノ月』  作者: 小鳥遊 月兎
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-第一章 諏佐野の呪い-


諏佐野の呪い。それは諏佐野家六代目当主が起こしたある事件がきっかけでこの家に根付いてしまったものである。

諏佐野家は、月の神民を使いとする契約を結び、代々栄えてきた。


月には、月の神民と、月の影の神民がいる。

元々は、月の神民とだけの契約を、浴深かった6代目が、戦闘民族である月の影の神民とも契約を結ぼうとした。

月に住むもの達からすれば、それは自分たち一族への侮辱ととれただろう。


月の神民とだけの契約、これが人へと力を貸す条件であった。

初代が結んだ契約を、滅茶苦茶にしてしまった6代目。

何故こんなことをしたのか。


それはただの嫉妬であった。


自分とは違い、様々な功績を残した初代を、6代目は嫌った。

自分も優秀なはずなのに、初代と同じか、それ以上の力があるはずなのにどうしてこうも違うのか。

初代は慕われるのになぜ自分は慕われないのか。

そう考えるうちに、6代目は初代が遺したものを全て変えてしまおうという考えに至った。

もっと強くなるために、月の影の神民との契約を。

他の家に負けぬよう、水を支配しようとし、聖坂を配下に。

領土の拡大、戦争、戦いには長けていなかった諏佐野が、様々な蛮行に走った。

そんなことをしていれば勿論のこと、多方面から怨みを買うのは必然であろう。


月の影の神民、水の神(聖坂)から呪いを受け、当時36歳だった6代目は、自分で起き上がることもままならず、人々が近づくことさえ出来ぬほど、呪いに侵されていった。

定期的に腹が妊婦のように膨れ、破裂寸前にまでなると大量の水が排出された。

目から枯れた木が生え、段々と、その木は生気を帯びていく。葉をつけ、花を咲かせ、実をつけ、6代目からその分、生気を奪っていった。

だが死ねない。聖坂が、月の影の神民が、それを許さない。

死など生ぬるい。延々と続く痛みと生が6代目に課された呪いなのだ。

段々と呪いは効力を薄めつつも6代目を苦しめ続け、やっと人が近づける位になった頃、6代目は聖坂の手違いで死ぬこととなる。

とても残酷で、またとても美しい死に際だったという。

ミイラのような体には似合わぬ膨れた腹に、実をつけ花を散らせていた木。その腹が破裂し、大量の水が流れ出した時、6代目の部屋からは、甘い桃のような香りと、花弁が水にあわせて流れてきたそうだ。死体はほぼ、木の根と変わらぬ見た目で、不思議と水とともに臓器などが流れ出すことは無かった。そもそも、臓器など、人が生きるために必要なものは消失していた。

6代目はその時、78歳であった。

約42年間、呪いに苦しめられ続け亡くなった。

いつからそれらがなく、また、本当に6代目が生きていたのか、それを知るものは神しかいない。


また、その処理をした10代目に、呪いが移ることとなる。


約42年の間に、6代目の息子だった7代目、また孫である8代目が亡くなり、9代目は水の神に許しをこい、自分への呪いは解いた。

だが月の影の神民からの呪いは解けず、10代目が呪いに苦しめられ死ぬ頃には、諏佐野の血を引くものはほぼみな、死に絶えていた。


俺の母である、11代目が毎日月に祈りを捧げていてくれた際に、腹の中にいた俺に、月の化身である輝夜様が宿られたそう。

俺が生まれて、4歳になった頃、俺の弟の仁が母の腹にできた。

俺が5歳になるかならないかくらいの時に仁は生まれ、それと同時に母は死んだ。

それから少しして父は呪いで死んだ。その時、諏佐野家には俺たちしか居なくなった。


その後、俺に宿っていた輝夜様が、俺と仁に加護を授けて下さり、俺が18、仁が17になる頃まで育ててくださった。

だがその加護は俺たちが20になる頃には消えてしまうものらしく、その時には俺たちで解呪できるように、輝夜様には死ぬ程鍛えられた。

その年の俺達は、月の影の神民、また水の神の呪いを解呪した。

それと同時に、輝夜様は俺たちの式神の(カグ)(ヨル)に分かれ、諏佐野呪いという惨劇は終わりを告げた。

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