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ただひたすらに強さを求め続けた男がいた。
名を人道 逸軌といった。
生前は史上最強の人類と謳われ、数多の伝説的な逸話を残した。
誰かが言う、
「ああ、イツキか覚えてるよ。高校の同級生だからな。おう、強かったぜ。ボクシングに柔道、空手とレスリング、あと相撲。全ての格闘技系の部活を掛け持ちしててなぁ、その全てで日本のトップに立っちまったんだからな。で、世界大会の誘いが来たころには高校辞めて海外に武者授業にでちままったんた」
「奴は儂が傭兵をしていた頃の同僚だ。儂がこうして孫のいる老後を遅れているのは奴のおかげさね。奴は敵の拠点に素手で乗り込むんだ。まるで幽霊か煙のように誰の目につくことも無く任務を遂行することもあればまるで嵐が通り過ぎたかのように皆殺しにすることもある。基準なんてないさ奴に取ってのあらゆる戦闘行為はや奴が考えるアートに帰結するのさ。ただし、一つだけポリシーはあった。奴は常に劣勢は方、負けそうな方に力を貸して勝ってる側をボコボコにした。理由は簡単だ、勝ってるってことは強いってことだからな。まぁ、最終的に奴が加担した陣営が最終的に勝利を収めちまうし奴は金で動く男でもないからな。結局、奴が降り立った戦場は奴が暴れる前に停戦協定がさっさと結ばれるようになって国境での小競り合いも民族紛争も殆ど地球上から消えちまった。儂かい?儂はただ奴がついた陣営につくことだけを考えて生き残ったに過ぎんよ。戦場で聞き残ることは奴の敵にならない事と殆ど同義なんだからな」
「ミスターイツキは水面下で勃発しようとしていた第三次世界大戦を止めた英雄だ。どうやって止めたかって?簡単なことさ。西側で関係者を皆殺しにしたその足でその日の内に東側の関係者を皆殺しにしたんだ。うん?ミスターイツキを憎んではいないのかって?まぁ、自分の父親を殺されたんだ思うところがないわけでは無い。たが、彼は国のトップとしては失格だった。彼の選択はこの合衆国を、いや世界を終わらせ兼ねなかったのだからな。だからこそ、私が国のトップとなった今ではミスターイツキに感謝すらしている。だからこそ我が国はミスターイツキ個人と同盟すら結んだのだ」
「あの、えと、私、魔法少女何ですけど少し前に、人類終焉を告げる獣と戦かったんです。え、あっ、はい、魔法少女です。でもその相手が、ものすごく強くて仲間の他の魔法少女の娘たちも皆、斃れちゃたんです。それで、もうダメかなー、あーあ、魔法少女になんてなるじゃなかったなーなんて思ってたら彼が現れたんです。一撃でしたね。ただのパンチにしか見えませんでしたが放った瞬間、周り、いいえ世界から音が消え去ったように感じました。気がついたときには終焉の獣は上半身を丸々吹き飛ばれて死んでいました。私、今年で三十路になるんですけどこうして魔法少女を続けることができているのは18年前に助けてくれた彼のおかげです」
彼は強さを求め勝ち取った。だが、彼は強くなりすぎたのだ。地上最強になった彼を待っていたのは永遠のような停滞の日々であった。何者と拳を交えようと命のやり取りを経ようとかつて彼を虜にした闘争の喜びを得ることはできなくなってしまったのだ。だが、長年戦いの中で生きてきた彼にはそれ以外に生きがいを見つける事はできなかったのだ。
そして、あっけなく病魔に犯され斃れた。何という無念。敗北を求めた男を最後に殺したのは死亡率が世界最大のありふれた病名だった。
しかし、彼は再び立ち上がった。この異世界の地へ。彼は会いに来たのだ、彼より強い奴に