プロローグ
試し書き
「さてと、今日の仕事はーっと」
ギルドの掲示板の前で手配書に目を通す。
「なになに、ゴブリンの討伐とその巣の破壊にオークの討伐、薬品の納品に、黄金金魚の捕獲か〜
なーんかパッとしないなぁ」
その剣士は腕組みをしながらため息をついた。
フードを目深にかぶり顔はよく見えないが、声を聞くにはまだずいぶん若いようだ。
「なんかもっとドラゴン退治とか魔王の討伐とかそういうのやりたいんだけどな〜」
「でも働かざる者食うべからずってね!よし!これにしよーっと」
剣士は手配書を手に取るとギルドの受付へと歩みを進めた。
受付には見知った顔の女性。こちらに気がつくと笑顔で話しかけてきた。
「あら!スミ…ふがふが」
なにか言いかけた彼女の口を慌てて塞ぎ、聞いていた人がいないか辺りを見回す。
「ちょっと!その名前じゃないでしょーが!」
「失礼しました。今はアイクさんでしたね。」
舌をペロッとだしてやっちゃったというような顔をする。普通の男なら恋に落ちてしまいそうなくらいに可愛い仕草だが女から見るとかなりあざとい。まぁそれは置いといて…
「ホントに頼むよーアイリアル〜」
小声で懇願するわたしにアイリアルと呼ばれた女性はいたずらっぽい笑みで答えた。
「まぁたぁ、わたしとスミ…おっと、アイクさんの中じゃないですか〜♪」
悪びれる様子もなくニコニコとしている。
「もー、調子いいんだから。それよりこれ!お願いね」
そんな彼女に半ば呆れながらも仕事の話へと戻り、掲示板から持ってきた手配書を彼女に渡す。
「はい!えーっと、ワイルドウルフ10体の討伐ですね!承りました〜♪気をつけて行ってらっしゃいませアイクさん」
「ありがと!じゃまたね」
ニコニコと笑う彼女に挨拶し冒険者ギルドを後にする。
「さてと今日もいっちょ頑張りますか!」
そう言って気合いを入れると軽い足取りで森へと続く街道へと足を向けるのだった。
「あ、そう言えばスミルナさんにあのこと言い忘れちゃった。まぁスミルナさん意外と強いし大丈夫か。ウフフ」