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合宿はたったの数時間。それでも君は天使だった。

僕は自分の意識が朦朧とし始めていることに気がついた。


アイが何か言っている気がするが頭に入ってこない、眠い・・・


「タクトー!寝たら死ぬわよー!」


アイはそう言いながら体育座りしていた僕のジャケットの襟首をつかんでひっぱり頬を何発かはたいた。


「まったく、普通の人間というのは不便ですわね。魔力障壁も張れないから温度調整が出来ないとは。魔力障壁が晴れないなら先に言ってほしかったですわ。足でまといなのになんでついてきましたの?」


ノインの冷たい言葉。


「八神君、私魔力障壁の範囲を広げて張ることが出来るからよかったら私の近くにいて」


青井さんが天使に見える。


ううう、なんでこんな目に。


アイ、ノイン、青井さん、そして僕の4人は今、どこかの霊峰で猛吹雪の中で遭難しているらしい。


なんで僕はこんなところにいるんだっけ・・・?


僕はおぼろげになりつつある意識の中で考えた。


確か、冬休みに入る前にポポムが


「年末年始は魔力を高めるのにもってこいの時期ですぞ!龍穴に修行に行きますですぞ!」


これに最初に乗ったのがアイだった


「ガキの体じゃ身体能力にも限界があるし魔力を高める修行をするか」


次に乗ったのがノインだった。


「そうですわね、子供の体じゃいくら魔力で補強したとして頑張ったところで限界がありますものね」


青井さんも乗るのかなと思ったけど


「私、年末年始は家族と過ごしたい」


って、反対した。青井さんは出会いがしらこそ最悪だったが、接し始めたらおとなしいというより穏やかな人で、料理も出来るし配慮もできてとてもいい人だった。


青井さんは長く反対をしていたけどアイの


「普通の生活を続けたいならメビウスみたいな事が起きても守れる力をつけなくちゃ」


っというこの言葉を聞いたあと少し俯いたと思ったら、一間あけて


「行くわ」


っと、先ほどまでの頑なな反対が嘘のように肯定の返事をした。


青井さんも行くとなったあとはこの三人に共通している人物、そう、僕にも一緒に行かないかっというより行くことが決定している話が振られた。


僕はアイとマジックウェポンとして契約をしているため、修行するにも必要だからということらしいが、多分本音は違う。雑用係だろう・・・。


僕は嫌そうな顔をしたが本音は違う。雑用だろうが友達と合宿なんて夢にまで見た青春じゃないかっと内心踊っていたが、この時の自分を殴ってやりたい。


全員が行くことになり、そして合宿初日が訪れた。合宿初日、ようは3時間前のことだが


ポポムが生き帰りは転送の魔方陣を用意出来るからとアイの家に全員集合した。僕が到着した時には他の3人はすでに到着していて魔方陣も描かれていた。僕達がその輪の中に全員が入るとポポムが魔術を唱え始めた。そうすると魔方陣が光り始め次第に強くなる光に目を開けていられなくて目を閉じた。そして少ししたら突然肌を露出している部分が刺すような痛みにみまわれ目を開けたら


そこは一面白銀の世界♪


なんていう甘い現実ではなく、猛吹雪で薄暗く前後左右上下全てが同じに見える、ようはどこにいるのか分からない場所に立っていた。油断すると突風で飛ばされそうだ。


アイとノインは突然のことに言葉を失っているようだったが青井さんだけは落ち着いて今いる場所を魔法で確認していた。


「油断した。霊峰という言葉と使い魔の魔力程度ならと日本国内を想像していたけどまさかヒマヤラまで飛べるなんて。装備が少し心配」


青井さん、落ち着きすぎ。今なんて?ヒマラヤ?僕たちどうやって帰るの!?ちゃんと帰れるんだよね!?ってか、痛い!肌が痛い!僕はフードを深ぶかと被って少しでも肌が露出している部分を減らした。こんな寒さの中で何で他の三人は平気んだろう。


「おい、ポポムのやつどこいきやがった!?」


「っは!まさか一人・・・ではなく一匹だけ逃げたんじゃありませんわよね!?」


アイとノインが照らし合わせたかのように我に返り、どこにいるのか分からないポポムを罵倒する言葉をいいながら探し始めた。


本当に何をするんでも同じタイミングで仲がいいんだな。それより僕もまさかとは思うけど一匹だけで逃げたんじゃ?


「おい、あいつのことだから寒いのが嫌で、一人なら直ぐに飛べるとかいってどっかいこうとしてるぞ!」


「そうに違いありませんわ!」


僕はポポムと付き合いが浅いから分からないが千年前のポポムってそんなふうに言われるような行いしてきたんだ。


アイとノインがそこらへんの雪を踏み歩いていると突如


「ブニャァ!」っというポポムの叫び声がした。どうやら猛吹雪のせいで即効で雪に埋もれてしまっていたところをアイが踏んだようだ。アイの手で雪の中から引きずり出されたポポムは泣きながら


「酷いですぞ、アイ殿ノイン殿。我輩一人で逃げたりしないですぞ」


こんなことを言っているが、僕たちは見をとさなかった。ポポムが引きずりだされる瞬間何らかの魔方陣をキャンセルして消したことに。


「このクソ猫、今転送魔法で一人だけ逃げようとしてやがったぞ」


アイの表情の険しさがすでに中ボスキャラレベルに。


「そうですわね、私も気づきましてよ」


ノインも同じような顔に。


「同意」


青井さんは無表情に一言だけ呟いたあと指をポキポキ鳴らし始めた。


「ポポム・・・」


僕は魔術はまだ全然だけど、ポポムが消した魔方陣がさっき見た転送方陣と同じだったことだけは分かった。


僕はそれ以上何も言わず静かに荷物からテント用にと持ってきた棒を探して取り出した。


ポポムは唾を飛ばしながら必死に弁明して体をゆすってアイの手から逃げようとしていたが、ポポムの頭に鏡餅のような4っつのタンコブが出来たらおとなしくなった。


「このままじゃ修行どころじゃねーな」


アイがそういうと


「そうですわね。とりあえずこのまま外にいると魔力を消耗しすぎますわ。いったん結界をはります。皆さん私の近くに寄ってください」


ノインはそういうと詠唱を始めた。


「精霊よ、あまねく詩を束ね我らを護りたまえ、フィーレル・アザラード!」


ノインが詠唱を終えるとノインを中心に球状に雪が撥ね退けられ2畳ほどの雪が侵入してこない空間が広がった。雪が入ってこないだけで寒さはそのままだった。


「かなり詠唱を短縮しましたのでこの程度の空間しか覆えませんでしたけど、まあその場しのぎにはなりますわね」


ノインは涼しげにサラっと言ったが僕は今みたことを素直に感動していた。


ポポムから教わったから分かる。ノインが今使った補助魔法はこんな狭い範囲を覆うだけでも10分程度の提唱が必要な高位の空間干渉型の魔法だ。


それを数秒で。しかも短縮詠唱なんてポポムですら千年前に使えるものを数人しか知らないって言ってたのに。


元来魔法というものはそんな簡単に使えるものじゃないらしい。ほとんどの魔法はその施行に10分程度の詠唱と魔道具というものが必要になる。RPGみたいに魔道具を使わず一言二言で魔法を使えるには本当に才能と努力が必要なのだそうだ。


実際僕でも使えるだろうからと基礎魔法の一つ、周囲の状況を調べる魔法をポポムから習ったが、それですら5分かかった。


アイ達と出会ってから魔法という存在を知ることは出来たけど、実際に魔法らしい魔法を見れたことはない。


戦いという戦いも起きてないし、マジカルスイーパーと言われる魔法使い、ようはアイのことだが、マジカルスイーパーは詠唱を省くことに成功したがその結果、強力な攻撃魔法を使える変わりに使えるのは99%攻撃系の魔法だけらしく日常で見ることはまずない。


ポポムが使った転送魔法は僕が着いた時には完成していて、後は飛ぶだけだったからこれもどうやったかも見れなかった。


だから今見た魔法が僕がアイ達と出会ってから初めての魔術的魔法であり、そして高位魔法でもあり高等技術でもあった。


魔道王ノイン。


ポポムから聞いてはいたけど、やっぱり凄いな。千年前の魔道大戦の際に最も多くの魔法と最大規模の範囲魔法を使えたことで魔道王ノインという異名を付けられた魔法使い。魔道王の異名を知らない者はいないって言ってたけど、アイとケンカしてる姿しか知らなかったから冗談だと思ってた。


あれ・・・?


何だろう急に・・・どうしたんだろう・・・


僕は自分の意識が朦朧とし始めていることに気がついた。


アイが何かいっている気がするが頭に入ってこない、眠い・・・


「タクトー!寝たら死ぬわよー!」


アイはそう言いながら体育座りしていた僕のジャケットの襟首をつかんでひっぱり顔を何発かはたいた。


「まったく、普通の人間というのは不便ですわね。魔力障壁も張れないから温度調整が出来ないとは。魔力障壁が張れないなら先に言ってほしかったですわ。足でまといなのになんでついてきましたの?」


ノインの冷たい言葉。


「八神君、私魔力障壁の範囲を広げて張ることが出来るからよかったら私の近くにいて」


青井さんが天使に見える。青井さんは僕の横までわざわざ来てくれて魔力障壁を広げてくれたらしい。青いさんが横に来ると今までの寒さが嘘のように消えた。なるほど、これなら確かにあの吹雪の中でも自由に動けるわけだ。


ってか、寒すぎると眠くなるって本当だったんだね。


「ありがとう、青井さん。それに比べて誰かさんたちは」


僕は目を細めてアイとノインをじーっと眺めた。


「な、なによ。魔法使いにだって向き不向きがあんのよ。私は魔力障壁を広げてはることが出来ないのよ」


このアイの発言にノインが鼻で笑った。


「ックス。まあ昔から押すしか脳のない方ですものね。私は違いますのよ。広げることは出来ますけど、ここから帰るための転送魔法のために無駄な魔力消費していられないだけですわ」


「はぁ?あんたこないだ転送魔法使えないって言ってたじゃない」


「ほっんとうに脳みそ詰まってますの?それは先ほどまでの話ですわ。でも4時間ほど前に現物見ましたのである程度の仕組みは理解しましてよ。アイってば忘れましたの?私が一度見た魔術を即興でマネすることくらい造作もないことだってこと」


また涼しげにサラっと言ってるけど、一度見た魔術を即興で使えるって本当に凄いことなんだろうな。


「それならさっさと言いなさいよ。こんな場所から早く帰るわよ!」


「あらいいんですの?私が転送魔法を 使えたらそれがどんな意味を持つか理解できてないのかしら?」


ノインのこの発言の意味がアイもポポムも僕も分からなかった。


「どういう意味をもつってんだよ」


ノインは本当に落胆したため息をついた。


「はぁ・・・。いつまでたってもお馬鹿さんですわ。転送魔法はマジカルスイーパーだけが作り出すことに成功し、その術式がいっさい外に漏れなかったために他の魔道機関はいっさい使えなかったのをお忘れですの。転送魔法はマジカルスイーパーという機関の強みだった。つまりは私が転送魔法を使えるというこは千年前の4大魔道機関の勢力の均衡が崩れるということですのよ」


「げ!」「ふぁ!?」


アイとポポムがようやく事態の問題に気づいたようで。開いた口が塞がらないようだ。僕はなるほど~くらいにしか思わなかった。他人事だしね。


アイは数秒固まっていたけど突然アイの表情が胡散臭い笑顔になった。ニヤニヤとチンピラがカツアゲする前にしてそうな表情だ。もうそろそろ僕にもアイが何を考えているか分かるようになってきた。


多分、転送魔法で帰り次第ノインを口封じすればいいか、とりあえず今だけ笑顔で接して怪しまれないようにしないと。って考えてるんだろうな。ノインも同じ事を考えてたようで


「その笑顔、おおかた転送魔法で帰り次第ノインを口封じすればいいか、とりあえず今だけ笑顔で接して怪しまれないようにしないとって考えてますわね」


「ソンナコトナイヨ私達、ナカマデショ」


アイはその胡散臭い笑顔をますます胡散臭くしながらノインの肩に手を当てながらノインの顔を覗き込んだ。誰が聞いても棒読みだったんだけど。


「まったく貴女ってば本当に変わりませんのね。そんなことを考えなくても私、今さら千年前のしがらみなんて興味ないですわ。ジェネスもそうでしょうけど、私、今の生活意外と気に入ってるんですのよ。壊すようなことはしないですわ。万が一にも千年前のしがらみがやってきたとき、それを払いのけるために貴女が今言ったとおり私達は仲間ですのよ」


ノインのこの発言を聞いたアイとポポムはほっと安心した表情をした。


「よかった。じゃあ帰り次第ノインの口封じしなくてもいいってことね」


「貴女やっぱりそんなこと考えてましたのね・・・はぁ・・・まあ、とりあえず帰りましょう。なんだか疲れましたわ」


「よっしゃーそれじゃさっさと帰還して飯にしようー」


・・・、


・・・、


・・・、


「ちょっとノインいっこうに家に飛ばないんだけど」


「貴女どこまで馬鹿ですの。いくら私とて転送魔法ほどの高位の魔法を最初から短縮できませんわよ。あと1分ほどかかりますわ。集中力切れますから話しかけないで下さりますこと?」


アイは素直に返事をしてその場に座った。いつもならおとなしくてももう少しうるさいものだが、よっぽど早く帰りたいんだね。


僕はもう二度とこれないであろうヒマラヤを少しでも見ておきたいと吹雪でもいいから空を眺めていた時だった。


人・・・?


まさかね。こんな場所にいるわけないか。でもあれはなんだ?


突風で一瞬視界が完全にさえぎられたせいかその空に浮かんでいた人影は消えていた。


「構築が終わりましたわ。いきますわよ。天の覇者、地の覇者、風の走者よ。我を戒めから解き放ちかの地に誘わん!」


ノインが詠唱を始めると、来たときと同じような魔方陣が現れそれが光り始めた。光の強さに耐えられず目を閉じて少ししたら、気温が変化したのがわかった。空気も軽く感じる。ゆっくり目を開けるとそこには見慣れた僕の家があった。


ああ、よかった。無事に帰ってこれたんだ。なんだろう安心したからかどっと疲れが・・・。あれ?ポポムどうしたんだろう。どこいくんだろう。


ポポムが一目散にどこかに行ってしまった。


それを見たアイとノインが荷物をほうりだし追いかけて行った。


「このクソ猫おおお、どこがスキーに温泉よ騙しやがって」


「そうですわ!美味しい山の幸どころか生物さえどこにもいなかったですわ!」


この二人・・・。


なるほど。ポポムに都合のよさそうなこと言われてたってことか。どおりで面倒な事が嫌いなくせにすんなり修行に行くのに賛成したわけだ。ヒマラヤに最初出たときに呆然としてたのは予想してた甘い合宿とは程遠かったからか。


はぁ、このおいてかれた荷物、部屋にいれとくのは僕か。


僕がため息をついていると青井さんが


「八神君は大変だったかもしれないけど、私は八神君と少し仲良くなれた気がして楽しかったな」


っと、笑顔で言ってくれた。青井さん、やっぱり君は天使だ。

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