コスプレ少女と夜のランデブゥ
「あはは!死んでよ!笑ってよ!!楽しんでよー!!!」
目の前のコスプレ少女はそう叫びながら銃を連射している。
目測、身長150センチ、Aカップ。綺麗な甘栗色の髪をポニーテイルにし、ちんまりした体格に似合うハロウィンのコスプレ?魔法少女?どこからどうみても中二病真っ只中のちょっと変わった中学生だと思ったら
変わってるどころかマジもんだった・・・。
いったい何が起きているのかとりあえず状況を整理しよう。
まず、少女が手にしているあの銃の正式名称は分からないが、映画やドラマで散々というほど見てきた。機関銃というやつだろう。
次に、僕たちを襲ってきた黒いローブに包まれた連中はどこに隠れてた?公園にいた俺たちの周りに突然現れたように記憶しているが?勘違いか?見えてなかっただけか?
・・・、整理しようにも今置かれている状況は分からないことだらけだ。ただ分かることが三つある。
一つ目は、目の前の少女の手にあるものは普通じゃ手に入らないものだということそして突然黒ローブと同じように少女の手に現れたということ。
二つ目は、今いる廃屋のビルに俺たちを追い込んだ黒ローブ達も少女同様まともじゃないこと。
三つ目は死んでよとか、あたかもこちら優勢な感じで叫んでいるが明らかにこちらが殺されそうな状況だということ。
僕は普通に塾が終わった帰り道を歩いていただけなのに。
なんでこうなったんだっけ・・・。
1時間前、僕は塾が終わって一人寂しい帰り道についた。塾の仲間なんて学校同様出来ず寄り道する場所もなかったから。
一人寂しい帰り道に雪まで降り始めて産まれて初めて、空を見上げてサンタクロースに本気で願った。
「友達が欲しい」っと。
それから数秒後、空からこの少女が降ってきて告げた。
「あんたのビッグマグナムと契約をしたい」っと。
僕は本気で考えた。マグナムっていうのはあれだよな、どう考えてもあれだよな。どうして僕のがビッグだって知ってるんだ?恥ずかしいから兄貴に散々連れて行かれる銭湯と温泉めぐりでもタオルでいつも隠してたのになんでばれた?ってか中二病ならではの告白方法なのか?っと。
そもそも、この時は間違いなく普通の茶色いコートとチェック柄のスカートだった。あんなコスプレじゃなかったぞ。いつ早着替えしたんだ?
えっと、それから確か・・・、ひたすら早く契約をしか言わなくて話にならないから近くの公園に行って。
着いて自己紹介はじめようかとしたらまた変な少女が今度は地面から現れた。すらりと腰まで伸びた黒髪に前頭葉あたりから生える日本の触角。と全身黒系のコスプレ。ゴキブリのモノマネかと思ってたら空から現れた少女と言い合いしてて名前を言ってたな。空からの少女がアイで、地面からの少女がノインだったっけ。
ケンカはよくないって言おうとしたら突然地面から黒ローブが20人くらい出てきて、今度はアイが何か叫んだと思ったら
そうだその時には今のコスプレ姿になってたんだよ。その後はどこから出したのか分からない機関銃を撃ちまくるし、なんだよこれどうなってんだよ
僕は結局状況整理が出来なかった。
「っち、こんなのじゃいくらぶち込んだって幻影を消すことすら出来ないじゃない、やっぱりあんたのビッグマグナムが必要よ!」
アイが僕に向けて手を伸ばす。僕は恥ずかしさのあまり反論してしまった。
「ビッグ、ビッグ言わないでくれ!自分でも気にしてるんだ!」
「なんで!?ビッグっていいことじゃない!そんなこと気にしてないでさっさと私と契約を・・・っく」
アイは黒ローブ達が打ってくる弾が少しかすったようだ。
「大丈夫?」
「大丈夫じゃないわよ、っくそ、使いたくなかったけど」
アイはそういいながら腰についた小さなポーチから何かを取り出し・・・、あれは手榴弾!?
アイが手榴弾のピンを口で快活な音をだしながらはずしてそれを黒ローブ達のほうに投げた。数秒後に激しい爆音と衝撃波がこちらにまできた。
「そんなのがあるなら最初から使えばよかったじゃないか」
「馬鹿言わないで、あれ一個しかない貴重な爆弾タイプのマジックアイテムだったんだから」
アイの叫びを聞いた敵の少女・ノインが物陰から姿を現した。
「そうよ、それが怖くてずっと隠れてたけど。マジックボマーが無くなった今、貴女みたいなチンクシャなんてもう怖くないのよーーーーおーっほっほっほっほっほー」
ノインの言葉にアイは半切れの口調で返した。
「チィンクゥシャァ!?チビはてめーだろう!」
「なんですって!?貴女より身長高いわよ!」
「っはぁ?、その触覚身長に含めてんのかよ」
「な、このエレガントでビューティな髪型を馬鹿にしたわね!許さない」
醜くも小さい少女達の争いである。初めてみた。ってかあれ触覚じゃなかったんだ。
「ゆるさねーのはこっちのほうだ触覚女!」
「キー!あんたが子供のころおねしょしたの黙ってあげてたのになんていう恩をあだで返すってこのことね!」
「いつの話だよ触覚!私がおねしょした最後はてめーと同じ日が最後だろーが!」
「っふ、私は自分がおねしょしたことなんて覚えてないわ」
「なんで他人のだけ覚えてんだよ!」
「他人のあらはおぼえておくものよ!」
「自信満々に言うなー!」
「とにかく、あんたのおねしょ黙っておいて上げたのに!」
「あーもうあんたと話しててもらちが明かねーわ」
目の前のアイは突然僕のほうを向いた。
「仕方ない、あんた友達が欲しいとかつぶやいてたわよね。私がなってやるから契約をしろ!」
友達なんてなってやるなんて言われてなれるものじゃないことくらい14年間生きてきて分かってる。
でも・・・、
僕は突然な申し出に戸惑いながらも初めて友達が出来るのかという期待に小さく頷いた。
頷いた瞬間、僕の目の前に僕の身長と同じくらいの光の魔方陣が現れた。
「契約成立っと!」
その魔方陣に少女が手を添えて離すと魔方陣から僕の銃が現れた。何故それが僕の銃だと分かったのかなんて分からない。ただその時はっきりとそれが僕であり銃であると分かった。
黒い銃。銃口の太さは大人の腕ほどあり、銃口の先は上の部分が刺せるのではというくらいとがっている。僕の性格を表しているんだって直ぐに分かった。一人が嫌なくせにプライドやコンプレックスばかりでかくって他人を近寄らせず、誰かがそれでも近づいても傷つけてしまう。
アイは銃を手に取り口を開いた
「いいねぇ。やっぱり感じたとおりのビッグマグナム」
ビッグマグナムってこれのことだったのか、てっきり僕の恥部の話かと思ってた。
アイはノイン達のほうを向いて言った。
「ねえ?ノイン。殺していい?今殺していい?」
少女は恍惚な表情を浮かべながら僕の胸から現れた成人男性の腕ほどある太さの銃を己の股に擦り付けて笑っている。
それを見てノインは明らかに動揺している。そりゃ僕でも同様するよ。中学生くらいの少女が股間に銃ををすりつけて恍惚な表情を浮かべているんだから。
「あ、貴女そんなもの人に向けるものじゃないわよ!」
「ああ!?さっきまでおねしょいってたのは誰だよ!死ねやああああ!!」
アイは叫びながらノイン達に銃口を向けた。
僕はこの時落胆していた。僕から現れた銃なんてそんな大した威力なんてあるわけがない。っと。
でもその考は直ぐに変わった。アイが引き金を引いた瞬間激しい衝撃と閃光が走り僕達の目の前にいたノインと黒ローブ達をはるか遠くに吹き飛ばしてしまった。
「おぼえてらっしゃーい!次あったときは ******」
ノインは吹き飛ばされながらも最後の捨て台詞を言っていたが最後のほうは聞き取れなかった。
遠く星の彼方に消えたノインの姿を確認したアイは安堵のため息をついて銃をおろした。
「っふう。やっぱりいいマグナムしてるじゃない。私はアイ。マジカルスイーパー・アイよ。えっと・・・」
「僕は八神タクト」
「タクトね、これからよろしく」
そう言いながらさし出されたアイの手に僕は手を伸ばし握手をした。
これが、僕とアイとの最初の出会いだった。